地方の貧困率はEU平均で21.4%|国別に26.1ポイント開く失敗の測り方

海外の失敗を探すと、事例集ではなく指標が出てくる

日本で地方創生の失敗を調べると、閉鎖した施設や使われなかった補助金の話に行き当たる。欧州連合の統計を同じ目的でたどると、出てくるものが変わる。失敗した個別の事業を列挙した資料ではなく、都市と地方のあいだで指標がどれだけ開いているかを定点で測った数字が並ぶ。評価の単位が「事業」ではなく「地域間の差」になっている。

欧州統計局(Eurostat)は、各国の地域を都市化の度合いで「都市」「町と郊外」「農村」の3つに分け、所得や貧困の指標を区分ごとに出している。人口の集まり方で地域を分類するこの方法は、日本の過疎地域の指定のように要件を満たした団体を選ぶやり方とは別の発想である。差が縮まらないこと自体を結果として扱うため、どの事業が失敗したかという問いは後ろに回る。

この測り方で読むと、日本で語られる失敗の記録の仕方との違いも見える。施設の稼働率や交付金の達成度で測るやり方は、個別の判断の責任を追いやすい反面、地域間の差が動いたかどうかは見えにくい。交付金のKPIが示す境目と並べると、同じ「失敗」という言葉で別のものを指していることが分かる。

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EU全体の平均では、都市と地方の差はほとんどない

まず意外に見える結果から入る。2025年の調査で、貧困または社会的排除のリスクがある人の割合は、農村で21.4%、都市で21.0%、町と郊外で20.4%だった。EU全体は20.9%である。農村が最も高いが、都市との差は0.4ポイントしかない。地方のほうが暮らしにくいという前提で見ると、肩透かしに近い数字が出てくる。

深刻な物質的・社会的剥奪の割合も似た並びになる。同じ2025年の調査では、EU全体が6.3%で前年から0.1ポイント下がり、区分別では都市が6.5%、農村が6.4%、町と郊外が5.9%だった。この指標では都市のほうがわずかに高い。数値は欧州統計局の解説ページに掲載されている。

指標(2025年の調査) 農村 町と郊外 都市 EU全体
貧困・社会的排除のリスク 21.4% 20.4% 21.0% 20.9%
深刻な物質的・社会的剥奪 6.4% 5.9% 6.5% 6.3%
等価可処分所得の中位値 2万994ユーロ 2万3,524ユーロ 2万3,722ユーロ 2万2,939ユーロ

ここで止めると「EUでは地方と都市の格差は解消された」という読み方になってしまう。実際には、平均を取ったことで打ち消し合っているだけである。国ごとに開くと数字の見え方が変わる。

国別に見ると、同じ指標が26.1ポイント開く

貧困または社会的排除のリスクを国別に分けると、差が大きい国が現れる。2025年の調査で、ルーマニアは農村39.8%に対して都市13.7%で、26.1ポイントの開きがあった。ブルガリアは農村40.8%と都市20.9%で19.9ポイント、リトアニアは農村34.8%と都市16.8%で18.0ポイントである。農村側が都市側の3倍近いという国が、EUの中に並んで存在している。

深刻な剥奪の指標でも同じ国が上に来る。農村部の割合はルーマニアで23.3%、ブルガリアで21.5%だった。ハンガリーは12.2%で、農村だけが2桁になった唯一の国とされている。EU全体の6.4%と比べると、同じ区分の中に3倍から4倍の幅が収まっていることになる。

この構図は、平均値で政策の成否を語ることの危うさを示している。EU全体の0.4ポイントという差をもって「地方は追いついた」と書けば、26.1ポイント開いた国の状況はどこにも現れない。日本の都道府県別の指標を全国平均と比べるときにも、同じ取り違えが起きる。

所得は購買力に直してもなお88.5%

所得の側を見ると、差はもう少しはっきり出る。2025年の調査で、等価可処分所得の中位値はEU全体が年2万2,939ユーロ、都市が2万3,722ユーロ、町と郊外が2万3,524ユーロ、農村が2万994ユーロだった。都市と農村の差は2,728ユーロで、率にすると農村は都市の88.5%にあたる。購買力の単位にそろえた場合も、農村は都市の平均の88.5%と報告されている。

物価の安さで説明しきれない点が重要になる。生活費の差を織り込んだあとに1割以上の開きが残っているなら、それは住む場所の選択によって生じている差になる。国別に見ると、ルーマニアでは農村の所得が購買力単位で1万279に対して都市が1万5,760で、65.2%まで下がっていた。

日本で地方就職の待遇を比べるときにも、名目の給与だけを並べると同じ誤差が入る。家賃や交通費を差し引いた後に何が残るかという形で並べ直すと判断が変わる。海外の数字を根拠として使う場合の限界は日本の地方創生と比べて読む手法と限界でも触れられている。

人口の側では、22か国すべてで都市が勝っている

所得や貧困より分かりやすく差が出るのが人口である。2025年1月1日時点で、EUの人口のうち19.2%が「農村中心の地域」に住んでいた。この区分が占める面積は2025年でEU全体の40.0%にあたる。面積の4割に人口の2割という配置になっている。

年齢の構成はさらに偏る。65歳以上を20歳から64歳の人口で割った比率は、同じ時点で農村中心の地域が42.5%、中間の地域が39.1%、都市中心の地域が34.3%だった。EU全体は36.6%である。農村と都市の差は8.2ポイントで、貧困率の0.4ポイントとは比較にならない開きがある。数値は欧州統計局の人口動態の解説ページから確認できる。

移動の向きも揃っている。2015年から2024年の平均で、農村中心の373地域のうち108地域が純流出だった。2015年から2023年にかけては、データのある22か国すべてで、都市中心の地域の人口の伸びが農村中心の地域を上回っている。例外がない並びになっているところが、この指標の重さである。

日本の施設整備が抱えた問題を思い出すと、順番の違いが見えてくる。人がいなくなる前提を織り込まずに建てた施設がどうなるかは地方創生の施設整備が抱える構造に出ている。学生が地域に関わる入口を探すときも、人口の向きと年齢の構成を先に見ておくと見通しが立てやすい。関わり方の整理はFLASPOのような場で確かめられる。

よくある質問

この記事の数字の出どころはどこですか

欧州統計局が公開している都市化の度合い別の統計解説のうち、所得と生活条件に関するページと、農村地域の人口動態に関するページである。所得や貧困の指標は欧州連合の所得・生活条件調査から、人口と面積の値は各国の人口統計から取られている。いずれも事業ごとの評価ではなく、区分別の集計値である。

「農村」の定義は日本の過疎地域と同じですか

違う。所得と貧困の指標で使われる3区分は、人口の集まり方によって地域を機械的に分けたものである。人口動態のページで使われる「農村中心の地域」は、より広い単位の地域を農村人口の割合で分類したもので、こちらも指定の手続きを経るわけではない。日本の過疎地域のように、要件を満たした団体が指定を受けて財政措置の対象になる仕組みとは別である。

EUの平均で差が小さいのは、政策がうまくいった結果ですか

この統計からはそう読めない。平均が接近している理由には、都市の中にも貧困の集中があることや、国ごとの差が打ち消し合っていることが含まれる。国別に分けると26.1ポイントまで開く例があるので、全体の平均は差が消えたことを意味しない。平均と分布は別に見る必要がある。

日本の失敗事例と比べるには、どの指標を使えばよいですか

事業の数や金額ではなく、都市と地方の差が動いたかどうかを示す指標を選ぶとよい。所得の中位値、高齢化の比率、純移動の向きの3つは日本でも同じ形で取れる。個別の事業の成否を比べようとすると、制度も財源も違うため噛み合わなくなる。

農村の所得が都市の88.5%なら、差は小さいと言えますか

単年の比率としては小さく見えるが、これは購買力に直したあとの数字である。生活費の安さを織り込んだうえで1割以上残るということは、同じ働き方をしても手元に残るものが違うという意味になる。国別ではルーマニアの65.2%のように3分の1以上開く例もあり、EU全体の比率だけで判断するのは早い。


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