制度に乗っている人数と、実際に関わっている人数が桁で違う
自治体の募集ページを開くと、副業で地域に関わる枠は思いのほか少ない。総務省の地域活性化起業人制度では、令和7年度の受け入れが企業派遣型904名、副業型299名、シニア型12名の合計1,215名で、過去最高を記録した。制度としては伸びているが、全国の市町村の数に照らせば、一つの自治体に1人いるかどうかという密度にすぎない。
一方で、国土交通省が2023年度の「地域との関わりについてのアンケート」をもとに行った推計は、まったく違う桁を示す。日常生活圏の外に定期的・継続的に関わる地域がある訪問系の関係人口のうち、地元企業での労働など現地で就労する層が約6パーセント(約105万人)、訪問先で本業や副業をテレワークで行う層が約8パーセント(約145万人)だった。二つを合わせると約250万人になる。テレワークには本業を持ち込むだけの人も含まれるため、全員が副業というわけではないが、それでも制度の1,215名とは比較にならない規模である。
| 区分 | 人数 | 出典 |
|---|---|---|
| 地域活性化起業人(企業派遣型) | 904名 | 総務省・令和7年度 |
| 地域活性化起業人(副業型) | 299名 | 総務省・令和7年度 |
| 地域活性化起業人(シニア型) | 12名 | 総務省・令和7年度 |
| 就労型(現地就労)の関係人口 | 約105万人 | 国土交通省・2023年度推計 |
| 就労型(テレワーク)の関係人口 | 約145万人 | 国土交通省・2023年度推計 |
制度はどこに線を引いているのか
299名という数字の小ささは、要件の厳しさと表裏にある。副業型は令和6年度から制度の対象になった方式で、企業に所属する個人と自治体が協定を締結し、勤務日数は月4日以上かつ月20時間以上、受入自治体における滞在日数は月1日以上という条件が付く。自治体が負担する経費は国が支援し、その上限は報償費等が1人あたり100万円、旅費が1人あたり100万円で、合計200万円までとされている。
企業派遣型はさらに重い。企業と自治体が協定を結び、受入自治体の区域内での勤務日数が月の半分以上という条件があり、国の支援は1人あたり年間610万円等が上限になる。派遣期間は6か月から3年で、社員の給与等に係る経費は原則として自治体が負担する。令和7年度からはシニア型も加わり、都市部の企業を退職した人材が同じ枠組みで関われるようになった。要件と支援内容は副業型にほぼ準じる形になっている。
どの型も、自治体の予算と協定という手続きを通る。月に4日は動けるか、滞在日を確保できるかという条件は、本業が忙しい人をふるい落とす。制度が拾っているのは、関わりたい人のうち段取りを整えられた一部だということになる。
受け入れる側の手間が、枠の数を決めている
募集が出ない理由は、関心の不足だけではない。自治体が副業人材を受け入れるには、協定や契約の文面を整え、予算を確保し、庁内の受入部署を決める必要がある。総務省はこの手間を減らすために、活用に向けた手引きと、企業派遣型の協定書ひな形、副業型とシニア型の契約書ひな形を公開している。推進要綱は令和8年4月に更新され、型ごとのチェックリストも用意された。
探す側と受け入れる側が出会う場も作られている。地域活性化起業人マッチングプラットフォームは、受け入れを希望する自治体と、制度活用を希望する企業や個人の双方からアプローチできる仕組みで、利用には入会申請が必要だ。ただし制度を使うためにプラットフォームを通さなければならないわけではなく、マッチングの手助けという位置づけにとどまる。つまり、募集が表に出ないまま個別の縁で決まる案件も残る。
受け入れ可能な団体の一覧も公表されている。令和8年4月1日時点の名簿が示されており、自分が関わりたい地域が制度を使う構えなのかを事前に確かめられる。名簿に載っていない自治体に関心があるなら、制度の枠ではなく別の経路を探すほうが早い。
制度の外にある250万人は、どんな関わり方をしているか
国土交通省の推計は、関係人口全体を約2,263万人、18歳以上の約22パーセントと見ている。このうち訪問系が約18パーセント(約1,884万人)、訪問を伴わない非訪問系が約4パーセント(約379万人)である。訪問系をさらに関わりの深さで分けると、地域の産業創出や地域づくりのプロジェクトに関わる直接寄与型が約23パーセント(約437万人)、地域の人との交流やイベント参加が中心の参加・交流型が約26パーセント(約485万人)、地域での消費や趣味を楽しむ趣味・消費型が約38パーセント(約711万人)となる。
この分類で見ると、報酬を伴う働き方は関わりの一形態にすぎない。マルシェへの出店や地域ブランドづくりの協力は直接寄与型に入り、必ずしも自治体と契約を結んでいるわけではない。地元企業と直接雇用関係を結ぶ人、農林水産業の繁忙期だけ手伝う人も、制度の集計には出てこない。推計の根拠は全国18歳以上の男女約12万人を対象としたモニター調査の拡大推計で、自治体の事業報告とは別の経路で数えられた値である。
学生のように本業の勤め先を持たない層は、そもそも副業型の要件である「企業に所属する個人」に当てはまらない。関わりたい気持ちがあっても制度の入口に立てないため、別の経路を探すことになる。FLASPOのように若い世代と地域を結ぶ取り組みが意味を持つのは、この空白の部分である。
数えられていない関わりを、自治体はどう扱おうとしているか
制度の外の関わりを無視したままでは、地域の実力を見誤る。そこで動いているのが、関係人口創出・拡大官民連携全国協議会、通称「かかわりラボ」である。内閣府が事務局を担い、全国の中間支援組織や民間事業者、地方公共団体が参加する会員組織で、令和8年4月1日時点の会員は557団体にのぼる。内訳は中間支援組織・民間企業等が282団体、地方公共団体が275団体で、官と民がほぼ同数という構成だ。
活動は情報の共有に重きを置いている。先進的な取り組みを行う地域や中間支援組織を招いた全国フォーラム、会員が自ら取組内容を紹介するオンラインイベント、モデル事業の成果報告会などが開かれる。令和8年度からは地域ブロック単位のフォーラムも始まり、北海道・東北、東海・北陸、中国・四国での開催が予定されている。年会費は不要で、会員にはメールなどで補助金や政策の情報が届く。
関わりたい側から見ると、この会員名簿は実務的な手がかりになる。自分の関心地域の自治体や中間支援組織が参加しているなら、副業型の枠が出ていなくても、別の形で人を求めている可能性が高い。制度の募集一覧だけを見て「募集がない」と判断するのは早い。
よくある質問
副業型の299名という枠は、応募すれば入れる規模ですか。全国で年に300人程度しか受け入れていないため、関心のある地域で枠が出ているかどうかに大きく左右される。受け入れ可能団体の一覧で対象自治体を絞り、募集が出た時点で動けるよう準備しておくのが現実的だ。
制度を使わずに地域の副業に関わることはできますか。できる。国土交通省の推計で就労型に分類される約250万人の多くは、自治体の制度を経由していない。地元企業との直接の契約、民間のマッチングサービス、知人からの紹介といった経路がある。制度は選択肢の一つにすぎない。
月4日以上という条件は、土日だけでも満たせますか。日数と時間の要件は月4日以上かつ月20時間以上なので、週末を使えば形式的には届く。ただし受入自治体に月1日以上滞在する条件が別にあるため、移動時間と交通費を含めた計画が必要になる。旅費は上限100万円まで支援の対象になっている。
学生でも制度の対象になりますか。副業型の要件は企業に所属する個人と自治体が協定を結ぶ形になっているため、勤め先を持たない学生は対象になりにくい。関わり方としては、インターンや地域のプロジェクトへの参加、かかわりラボの会員団体が開く催しなどから入るほうが現実に合う。
関係人口の推計値と制度の実績は、同じものを数えていますか。違う。推計値は全国約12万人へのモニター調査を拡大した値で、本人の自己申告にもとづく。制度の実績は自治体が受け入れた人数の集計である。母集団も数え方も異なるため、片方の増減をもう片方の成果として読むことはできない。
出典と関連記事
本文の数値は次の資料によった。総務省「地域活性化起業人」、国土交通省「関係人口の分類と推計値」、内閣府「関係人口創出・拡大官民連携全国協議会(かかわりラボ)」。
あわせて、地域と関わる副業はどこに募集が出るか、地域に関わる副業の収入の天井、SNSで地域を応援する人は8.0%も参考になる。
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