一度も行ったことのない町のアカウントを追いかけ、祭りの告知を自分の投稿で広め、物産展の写真を上げる。足を運んでいないのに関わっている、という状態を言葉にするのは難しい。国の統計はこれをどう数えているのか、という問いには答えがあって、国土交通省の実態把握調査が人数と割合を出している。
訪問しない関係人口が三百七十九万人いる
国土交通省は令和七年六月二十七日に、地域との関わりについてのアンケートの結果を公表した。十八歳以上の全国の居住者を対象にしたインターネット調査で、実施時期は令和五年九月から十月、有効回答数は十一万八千九百六十三人である。母数となる十八歳以上の居住者は令和二年国勢調査の約一億二百七十五万人が使われている。
結果は二つに分けて示された。特定の地域を訪問している関係人口が約十八パーセントで約千八百八十四万人、訪問せずに関わっている関係人口が約四パーセントで約三百七十九万人、合わせて約二十二パーセントの約二千二百六十三万人である。訪問を伴わない層が、関係人口のおよそ六分の一を占めていることになる。
非訪問系の定義は調査の中で明記されている。地域を訪問せず、ふるさと納税、クラウドファンディング、地場産品等の購入、特定の地域の仕事の請け負い、情報発信、オンライン交流などを継続的に行っている人である。情報発信とオンライン交流が、定義の文面に最初から入っているところが見落とされやすい。訪問側の規模をどう使うかは大学は関係人口の入口になるかで扱った。
内訳の主役は納税と買い物である
では非訪問系の三百七十九万人は、具体的に何をしているのか。複数回答で尋ねた関わり方の内訳は、上の二つが抜けている。
| 非訪問地域との関わり方 | 全体 | 18〜34歳 | 65歳以上 |
|---|---|---|---|
| ふるさと納税によって継続的に応援 | 42.8% | 40.9% | 36.5% |
| 訪問せずに地場産品等を購入して応援 | 36.4% | 26.6% | 47.4% |
| SNS等で地域の情報発信を行い応援 | 8.0% | 13.9% | 4.6% |
| 遠隔で地域のためになる仕事を請け負い | 5.8% | 10.9% | 3.1% |
| オンラインを活用して継続的に関わる | 5.0% | 6.3% | 5.3% |
| クラウドファンディングで継続的に応援 | 3.1% | 6.3% | 1.7% |
ふるさと納税が四割強、地場産品の購入が三割半で、この二つで大半が説明できてしまう。SNSでの発信は八パーセント、オンラインでの交流は五パーセントで、桁が一つ違う。訪問しない関わりの中心は、いまのところ寄附と買い物という形をとったお金の動きである。
地域から応援や支援を受ける形の交流は一・一パーセントにとどまる。関わりの方向は、外から地域へ向かうものがほとんどだと読める。
若い層だけ、順位が入れ替わる
年代で割ると、同じ調査から別の絵が出てくる。十八歳から三十四歳では、SNS等での情報発信が十三・九パーセントで、全体の八・〇パーセントを五ポイント以上上回る。三十五歳から四十九歳では九・三パーセント、五十歳から六十四歳では七・〇パーセント、六十五歳以上では四・六パーセントと、年齢が上がるにつれてまっすぐ下がっていく。
遠隔で仕事を請け負う形も同じ傾きで、若い層の十・九パーセントから高齢層の三・一パーセントまで落ちる。逆向きに動くのが地場産品の購入で、十八歳から三十四歳の二十六・六パーセントに対し、六十五歳以上は四十七・四パーセントに達する。買って応援する人と、発信して応援する人は、世代で分かれている。
ふるさと納税は三十五歳から六十四歳が四十八パーセント台で最も高く、十八歳から三十四歳は四十・九パーセント、六十五歳以上は三十六・五パーセントと、働き盛りの層に寄る。寄附の制度が所得に連動していることを考えれば、この山の位置は無理のない形をしている。学生が使える関わり方は、お金を動かす側より発信する側に偏るということだ。
非訪問系の人物像は、思われているほど若くない
内訳だけを見ると非訪問系はデジタルに強い若年層のように思えるが、属性の集計は逆を示している。性年代で最も多いのは女性の六十歳から六十九歳で十三・四パーセント、次が女性の七十歳から七十九歳の十一・〇パーセントである。
職業は会社勤務が三十二・七パーセントで、専業主婦と主夫が十五・六パーセント、無職が十三・五パーセント、パートとアルバイトが十一・五パーセント、学生は一・五パーセントにとどまる。世帯構成は夫婦が三十三・一パーセント、夫婦と子どもが二十八・五パーセント、単身が十八・八パーセントである。
関わり先の都道府県は北海道が十二・一パーセントで突出し、東京都の四・七パーセント、福島県の四・五パーセントが続く。関わり始めてからの年数は一年から二年未満と二年から三年未満がともに十七・一パーセントで並ぶが、年代別に見ると十八歳から六十四歳は一年から二年未満が最も多く、六十五歳以上では三十年以上が最も多い。高齢層の非訪問系には、出身地との長い縁がそのまま残っている人が混ざっている。
発信は、訪問の前段階として扱われていない
調査には、非訪問系の人が今後その地域を訪れるとしたら何をしたいかという設問もある。最も多いのは地域ならではの飲食や買い物で約二十三パーセント、次が特に訪問や滞在をしたいと思っていないという回答で約二十一パーセント、三番目が特に何もしないで過ごすという回答の約十五パーセントだった。
つまり、訪問しない層の五分の一は、そもそも行くつもりがない。発信や寄附を入口にして訪問へ進んでもらう、という筋書きは、少なくともこの集計からは自動的には出てこない。関わりを持ちたいと思っている人が挙げた改善点は、仕事や私生活での時間的な余裕の確保が二十七・四パーセント、移動や滞在に伴う金銭的な負担の軽減が二十六・七パーセント、地域に行くための交通の利便性の改善が二十六・四パーセントで、いずれも発信の工夫では動かない項目である。
この構図は、自治体が発信を学生に任せるときの期待値にも効いてくる。SNSの運用は非訪問の関わりを増やす手段としては数字が小さく、訪問へ直結する装置でもない。それでも意味があるのは、年代別で若い層だけ比率が跳ね上がっている点で、同世代に届く経路としては代替が少ない。発信の届き方そのものは地域のSNS発信は誰に届くかで確かめられる。地域の企画に関わってみたい学生は、FLASPOのような募集が集まる場から入る手もある。
よくある質問
投稿を見ているだけでも関係人口に入りますか。入らない。定義は継続的に行っていることを条件にしていて、挙げられている行為は情報発信やオンライン交流のように、こちらから動くものである。閲覧や応援の気持ちだけでは、この調査の数には乗らない。
八・〇パーセントは何に対する割合ですか。非訪問系の三百七十九万人に対する割合である。十八歳以上の居住者全体に対する比率ではないので、人口全体の八パーセントがSNSで地域を応援しているという読み方はできない。複数回答なので、ふるさと納税と発信の両方をしている人は両方に数えられている。
この数字はいつの状態ですか。調査が行われたのは令和五年の九月から十月で、公表は令和七年六月である。発表と実施のあいだに一年半以上の開きがあるため、短期の流行を測る材料には向かない。制度や統計の名前で検索するときは、公表日ではなく調査時点を確かめたい。
訪問系と非訪問系の両方に当てはまる人はどう扱われていますか。両方を回答した場合は、類型の判別では訪問系が優先される。したがって非訪問系の三百七十九万人は、訪問を伴わない関わりだけを持つ人の推計に近い。
出典は国土交通省の報道発表全国の「関係人口」は18歳以上の2割強と、その資料2である。
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