週末だけ地域に通いたいという学生から、どのくらいの距離までなら続くのかと聞かれることがある。感覚で答えるしかなかったこの問いに、国土交通省が令和7年6月27日に公表した関係人口の実態把握調査が数字を出した。関わり先までの片道の所要時間と、どの圏域からどの圏域へ人が動いているかの内訳である。東京で暮らしながら関わり先を探すなら、この二つを先に見ておくと候補の広さが変わる。
近さは「片道の所要時間」で測られている
同じ調査は、全国の18歳以上の居住者約1億275万人のうち約2,263万人、2割強が特定の地域に継続的に関わっていると推計している。うち訪問を伴う層が約1,884万人、訪問を伴わない層が約379万人である。インターネットによる調査で、実施時期は令和5年9月から10月、有効回答は118,963人。
注目したいのは、訪問を伴う層に片道の所要時間を尋ねた結果だ。最も多いのは「1.0〜1.5時間未満」で16.1パーセント、次が「0.5〜1.0時間未満」と「1.5〜2.0時間未満」の各13.0パーセントだった。報告書自身が「所要時間は分散している」と書いているように、特定の帯に固まってはいない。それでも2時間未満を合わせると48.9パーセントで、ほぼ半数が片道2時間以内の場所と関わっていることになる。
| 片道の所要時間 | 割合 |
|---|---|
| 30分未満 | 6.8% |
| 0.5〜1.0時間未満 | 13.0% |
| 1.0〜1.5時間未満 | 16.1% |
| 1.5〜2.0時間未満 | 13.0% |
| 2.0〜2.5時間未満 | 11.7% |
| 2.5〜3.0時間未満 | 10.4% |
| 3.0〜4.0時間未満 | 11.3% |
| 4.0〜5.0時間未満 | 6.7% |
| 5.0時間以上 | 11.2% |
居住地で分けても形は大きく変わらないが、「1.0〜1.5時間未満」では近畿圏都市部が約21パーセントと突出している。都市の広がり方と鉄道網の密度が、そのまま関わり先の距離に出ていると読める。
首都圏に住む555万人はどこへ向かっているか
では東京を含む首都圏の都市部からは、どこへ人が動いているのか。調査は居住地と関わり先を四つの圏域に分けて推計している。首都圏都市部に住む訪問型の関係人口は、関わり先の内訳を足すと約555万人になる。
内訳は、三大都市圏の都市部を除く「その他地域」が約293万人で52.8パーセント、首都圏都市部の中が約222万人で40.0パーセントだった。近畿圏都市部は約31万人で5.5パーセント、中部圏都市部は約9万人で1.7パーセントにとどまる。つまり首都圏に住む人の4割は、地方へ出ることなく同じ圏域の中に関わり先を見つけている。
同じ圏域の中で完結する割合を見ると、その他地域が76.3パーセントで最も高い。地方に住む人は、同じ地方の別の市町村と関わっている場合が多いということである。首都圏都市部の40.0パーセントはこれに次ぐ水準で、中部圏都市部の25.0パーセントや近畿圏都市部の43.2パーセントと比べても低くはない。東京一極集中の裏側で、圏内で完結する関わりが相当量あることは見落とされやすい。
最も大きい流れは「その他地域からその他地域へ」の約763万人で、地方に住む人が別の地方と関わるパターンである。地方居住者から首都圏都市部への流れも約123万人あり、人の往復は一方通行ではない。首都圏整備法の既成市街地と近郊整備地帯が首都圏都市部の範囲なので、埼玉や千葉、神奈川の市街地は「地方」ではなく圏内に数えられている点は押さえておきたい。関係人口の種類と分類を先に確かめると、この区分の意味がつかみやすい。
関わり先の都道府県で最も多いのは東京都
関わりのある地域を都道府県で聞いた結果は、順位が意外に映るかもしれない。首位は東京都の9.9パーセントで、次が大阪府の5.6パーセント、神奈川県の4.6パーセントと続く。北海道が4.0パーセント、千葉県が3.8パーセント、京都府と兵庫県と福岡県がそれぞれ3.6パーセント、愛知県が3.5パーセントだった。
関係人口という言葉から思い浮かぶ過疎地域よりも、人口の多い都府県が上位に並ぶ。回答者の居住地そのものが都市部に偏っているため、近い場所が選ばれやすいという構造がここに出ている。埼玉県3.2パーセント、宮城県3.1パーセント、静岡県3.0パーセント、長野県2.9パーセントという次の層を見ると、新幹線や高速バスで2時間前後の圏内が厚いことも分かる。
滞在場所の上位は商業・サービス・レジャー関連施設で、次が旅館やホテルなどの宿泊施設、その次が親族の所有または賃借する物件だった。宿を取らずに済む関わり方が一定数あることが、近い関わり先が選ばれる理由を補強している。
自家用車前提の平均値は首都圏には当てはまらない
所要時間を自分の条件に置き換えるとき、見落としやすいのが移動手段である。全国でみると主な交通手段は自家用車が58.1パーセントで最も多く、新幹線以外の鉄道が24.6パーセント、新幹線が17.0パーセント、旅客機が9.3パーセントと続く。報告書は、公共交通機関を合わせると自家用車を上回ると注記している。
ところが居住地で分けると様子が変わる。自家用車は中部圏都市部で69.6パーセント、その他地域で68.8パーセントと7割近いのに対し、首都圏都市部では42.8パーセント、近畿圏都市部では49.5パーセントまで下がる。首都圏と近畿圏では鉄道の比率が高い。車を持たない学生が全国平均の所要時間をそのまま自分に当てはめると、片道の見積もりが実際より短く出る。
関わりを持ちたいが持てていない人に改善点を聞いた項目でも、仕事やプライベートでの時間的な余裕の確保が27.4パーセント、移動や滞在に伴う金銭的な負担の軽減が26.7パーセント、地域に行くための交通の利便性の改善が26.4パーセントと、三つがほぼ並んでいる。距離の問題は時間とお金の問題として現れる。
近い関わり先を選ぶときに確かめる順番
以上をふまえると、候補地を絞る手順は三段階になる。第一に、自分が使える移動手段で片道の実測時間を出す。鉄道なら乗り換え待ちを含めた所要時間で、調査が尋ねているのも乗り物に乗っている時間ではなく片道のトータルである。第二に、往復の交通費を年間の訪問回数で掛けて上限を決める。第三に、宿泊が必要かどうかを確かめる。日帰りで往復できるかどうかで、年間の負担は大きく変わる。
そのうえで首都圏在住者が見落としがちなのが、同じ圏内の候補である。222万人という推計は、都心から1時間前後の市街地や近郊にも関わり先が成立していることを示している。訪問を前提としない関わり方も約379万人と推計されており、移動の制約が大きいなら関係人口のオンライン事例から入る手もある。大学の授業や研究を足がかりにする道筋は大学は関係人口の入口になるかでまとめている。
学生向けの地域プロジェクトを探している場合は、FLASPOが扱う案件のように、現地での滞在日数と移動の条件が先に示されているものから始めると見積もりを外しにくい。
よくある質問
片道2時間はどのくらいの範囲ですか。東京駅を起点に新幹線なら仙台や名古屋、在来線と高速バスなら群馬や栃木、静岡の東部あたりが目安になる。ただし調査が測っているのは自宅から現地までの合計時間なので、自宅から駅までと駅から現地までを足す必要がある。
遠い地域と関わっている人は少ないのですか。そうとは言えない。片道5時間以上が11.2パーセント、3時間以上を合わせると29.2パーセントある。年に数回の訪問で成り立つ関わり方であれば、距離は決定的な制約にならない。
関係人口はどの定義で数えていますか。国土交通省は、移住でも観光でもなく単なる帰省でもない、日常生活圏や通勤圏以外の特定の地域と継続的かつ多様な関わりを持つ人としている。母数の18歳以上人口は令和2年国勢調査の値を使っている。
数字はどこで確認できますか。概要は国土交通省の報道発表資料、内訳は同時に公表された資料2に入っている。出典は全国の「関係人口」は18歳以上の2割強と、地域との関わりについてのアンケート調査結果(資料2)、掲載ページは国土交通省の関係人口の実態把握である。
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