採点の仕組みを先に見ないと失敗は読めない
ある自治体の取組がうまくいかなかったのかどうかを外から調べようとすると、手がかりは意外に少ない。役所が自分の事業に不合格の札を付けて公表することはまずないからだ。それでも、採点する仕組み自体は制度として置かれている。行政評価である。何がどこまで評価されているかを知れば、失敗が記録される場所と記録されない場所が分かれてくる。
総務省は地方行政サービス改革の取組状況等に関する調査の中で、行政評価の実施状況を団体ごとに公表している。最新は令和7年4月1日現在の調査で、令和7年12月19日に個票が出た。評価は三つの段に分かれていて、政策、施策、事務事業の順に粒が細かくなる。市区町村の個票を集計すると、この三段の間に大きな段差が見える。
1,721市区町村のうち、事務事業の評価を既に導入しているのは1,059団体で61.5パーセント。施策の評価は890団体で51.7パーセント、政策の評価は539団体で31.3パーセントにとどまる。個々の事業の良し悪しは半分以上の役所で採点されているが、その上の政策の層まで届いているのは3団体に1団体という形になっている。
三つの段に分かれた評価の実際
内訳を見ると、止まっている理由が段によって違う。政策の評価では「導入予定なし」が578団体、「検討中で導入予定時期は未定」が526団体で、この二つを合わせると1,104団体になる。試行中は20団体、導入予定時期を決めて検討中は16団体しかない。つまり政策の層は、検討が始まっていないか、始まっても期限が決まっていない。
事務事業の評価では「導入予定なし」は164団体まで減る。その代わりに目立つのが「過去に実施していたが廃止した」で115団体ある。政策で42団体、施策で58団体に対して、最も細かい層でいちばん多く廃止されている。手間に対して得るものが見合わなかったという判断が、現場に近いところで起きている。
| 評価の段 | 既に導入済み | 試行中 | 検討中 | 導入予定なし | 過去に廃止 |
|---|---|---|---|---|---|
| 政策 | 539団体 | 20団体 | 542団体 | 578団体 | 42団体 |
| 施策 | 890団体 | 34団体 | 458団体 | 281団体 | 58団体 |
| 事務事業 | 1,059団体 | 44団体 | 339団体 | 164団体 | 115団体 |
廃止や未導入の理由は個票の自由記述に書かれている。「基本構想は長期的な将来都市像や施策の方向性等を示すものであり、行政評価の手法による評価に馴染まない」「施策の行政評価を通じて一定の評価が行われていると考えられる」「毎年度の予算編成過程の中で精査することとした」といった文が並ぶ。評価そのものを否定しているのではなく、別の工程で代替しているという説明が多い。
公表まで届く数はさらに減る
導入していることと、外から読めることは別の話である。政策の評価を導入している539団体のうち、結果を全て公表しているのは393団体、一部公表が54団体、公表していないのが92団体だった。施策では890団体のうち全て公表が675団体、一部が90団体、公表せずが125団体。事務事業では1,059団体のうち全て公表が647団体、一部が192団体、公表せずが220団体である。
1,721団体を分母に置き直すと見え方が変わる。事務事業の評価結果を全て公表している役所は647団体で37.6パーセント、政策の評価結果を全て公表している役所は393団体で22.8パーセントしかない。最も細かい層ほど導入は進むが、公表の割合は逆に落ちる。事務事業で公表していない220団体は、導入している1,059団体の20.8パーセントに当たる。
理由の記述には具体的な事情が書かれている。「事務事業の評価は数が多く、内容も細かすぎるため公表には適さない」「内部的な評価であるため公表の必要はないと考えている」「令和6年度決算を基に評価を行っているため、令和7年9月以降に公表を予定」。隠しているというより、量が多すぎる、内部資料として作っている、時期がまだ来ていないという三つの型に整理できる。
都道府県と市区町村で形が違う
同じ調査を47都道府県で見ると、様子がまるで違う。施策の評価は47団体すべてが導入済みで、政策の評価は36団体、事務事業の評価は35団体が導入している。市区町村では政策の層がいちばん薄かったのに対し、都道府県では施策の層が全数で、むしろ事務事業の層が抜けている。
抜け方の中身も違う。都道府県で事務事業の評価を「過去に実施していたが廃止した」としているのは9団体、「導入予定なし」は3団体である。政策については「導入予定なし」が9団体、「廃止した」が2団体。公表のほうは、政策を導入している36団体のうち35団体が全て公表、施策は47団体のうち44団体が全て公表しており、市区町村より公表率が高い。
事務事業については都道府県でも公表が緩む。導入している35団体のうち全て公表は23団体、一部公表が9団体、公表していないのが3団体だった。細かい層の評価は内部の管理資料として使われる傾向が、規模の大きい団体でも同じように現れている。失敗が外から読めるのは、ほぼ施策の層までということになる。
調べる側はどこを開けばよいか
ある自治体の取組の結果を知りたいとき、最初に当たるのは総務省の個票である。自治体コードと団体名で行が並んでいるので、調べたい役所が政策、施策、事務事業のどこまで評価していて、結果を公表しているかが一目で分かる。公表していなければ、その役所の資料を探しても出てこないと先に分かる。
評価が公表されている場合は、総合計画の進捗報告や事務事業評価シートという名前で役所のサイトに置かれている。指標と目標値、達成状況が並ぶ形が多い。国の交付金が入った事業については別の経路もあり、こちらは地方創生の失敗はどこに記録されるか|検査報告が示した759団体の未公表で扱った会計検査院の決算検査報告が手がかりになる。
財政の側から判定を見る道もある。健全化判断比率のように、基準を超えると制度上の扱いが変わる指標は自治体の運営はどこで失敗と判定されるか|1,788団体中1団体の線引きにまとめてある。施設の整備が後から重荷になる型はハコモノはなぜ失敗するのか|地方創生の施設整備が抱える構造で整理した。自分の企画を自治体に持ち込む前に評価の仕組みを見ておく準備はFLASPOのプロジェクトでも扱っている。
よくある質問
行政評価はすべての自治体に義務なのか。義務ではない。総務省は取組状況を調べて団体ごとに見える化しているが、導入するかどうかは各団体の判断である。だから「導入予定なし」という回答が成立する。
政策の評価を導入していない役所は、何も振り返っていないのか。そうは言えない。個票の記述では、施策の評価で一定の評価が行われている、予算編成の過程で精査している、過去の行財政改革で全事業の点検を終えているといった説明が挙げられている。工程の名前が行政評価ではないという話である。
評価の結果に「失敗」と書かれることはあるのか。評価シートの体裁は、指標の達成状況と今後の方向性を記す形が一般的で、合否の札を付ける形式ではない。目標値に届かなかった事実と、縮小や見直しという方向性の組み合わせで読み取る。だから数字と方向性の両方を見ないと判断できない。
どの粒度の評価がいちばん役に立つのか。目的によって変わる。個別の事業がいくらで何をしたかを知りたいなら事務事業、地域の課題にどこまで効いたかを知りたいなら施策の層になる。施策の評価は890市区町村と47都道府県で導入されており、公表率も事務事業より高いので、外から読む用途には向いている。
一次資料はどこにあるか。総務省の地方公共団体の行政改革等のページに調査の一覧があり、令和7年4月1日現在の結果は地方行政サービス改革の取組状況等に関する調査に置かれている。市区町村の個票は市区町村の調査票、都道府県分は都道府県の調査票である。本文の集計値はこの個票から数えた。
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