ふるさとプロボノは2か月で何を残すか|首都圏8名枠と4つの支援プログラム

東京で働きながら、生まれ育った県のNPOのウェブサイトを作り直す。報酬は受け取らず、使うのは本業で身についた技能である。この関わり方に「ふるさとプロボノ」という名前が付き、都道府県の事業として続いている地域がある。青森県の取組を軸に、何をどれだけの期間で引き受けることになるのかを、募集要領と報道発表の記載から追っていく。

住んでいる場所を動かさずに、技能だけを持ち込む

仕組みの輪郭は、運営にあたる認定NPO法人サービスグラントの案内に書かれている。参加の形は二つで、個人型は最短1時間から最長3か月、エントリーしてから始まるまでが1週間から1か月ほどである。チーム型は3か月から1年、メンバーは5名前後で、事務局が参加者を募ってチームを組む。立候補から編成までには1か月から2か月を要し、新規プロジェクトの案内は年に数回しか出ない。成果物として挙がるのは、ウェブサイトやパンフレット、映像、営業資料、業務フローの設計、活動運営マニュアル、事業計画の立案といったものだ。

参加料はかからない。現地での滞在は1泊2日から2泊3日が想定され、交通費や宿泊費は受け入れ側や事務局が補助する場合がある。案件は「GRANT」というオンラインの社会参加プラットフォームに載り、そこから直接応募する流れになっている。技能を使うかどうかで無償の活動を分ける線引きはプロボノとは?ボランティアとの3つの違いと参加5つのメリットで整理したとおりで、ここで求められるのは職業上の経験である。

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青森県は2018年度に始め、2020年度に県外枠を足した

県の資料では、この取組は「青森プロボノチャレンジ」と呼ばれている。県民生活文化課が所管し、企業等で働く現役世代をはじめ社会貢献をしたい県民が、地域課題に取り組むNPOの活動支援を行うものとして2018年度から実施されてきた。県外に目を向けたのは2020年度からで、首都圏在住のプロボノワーカーが「ふるさとプロボノ」として加わる形になった。

2022年度の募集では、定員は県内在住者が20名程度、首都圏在住者が8名程度と分かれていた。首都圏からの参加者には旅費の一部補助が用意され、活動そのものは基本的にオンラインで進む設計である。支援先は5団体の予定で、1団体を4名から6名のチームが担当した。2021年度の案内には2018年度からの累計で14件の支援プロジェクトを実施したとあり、1年に数件を積み上げる速さだとわかる。2022年度の支援先は黒石市、五所川原市、むつ市、藤崎町、七戸町の団体で、県内の広い範囲に散っていた。2023年度からは青森県社会福祉協議会が協働団体に加わっている。

引き受ける仕事は4つのプログラムに分かれる

何でも相談してよい、という形にはなっていない。支援は目標と成果物を先に決める「プロジェクト型支援」として設計され、内容は4つの柱に整理されている。団体側は自分の困りごとをこの枠のどれかに翻訳して応募することになる。

支援プログラム 想定される成果物
情報発信 ウェブサイト構築、SNS発信のサポート、団体紹介リーフレットやボランティア募集チラシ
寄附者拡大 営業資料の作成、クラウドファンディング戦略
業務改善 活動運営マニュアルの作成、作業効率化や会計業務の改善提案
事業戦略 マーケティング基礎調査、課題整理、事業計画の立案

応募できる団体も限られている。県内の非営利活動団体で、NPO法人、任意団体である市民活動団体、町内会や自治会といった地域活動団体、各種公益法人が対象だった。活動分野は高齢者支援、子育て支援、地域活性化、環境保全、防災・安全対策が挙げられている。2021年度の募集枠は5団体で、締切は6月4日だった。審査では事業の趣旨に添う活動に取り組んでいるかに加えて、支援の受け入れ体制が見られる。打合せに出る人と決める人が離れていると、2か月の日程には収まらない。

採択から成果報告まで、実質2か月で終える

日程の組み方には明確な型がある。2021年度の流れでは、6月4日の応募締切と届き次第の書類審査、6月中旬に対面やオンライン、電話によるヒアリングの二次審査、6月下旬に支援団体の決定と採択通知、7月に支援内容の打合せと確定、そして9月4日の事前オリエンテーションとキックオフミーティングで始動する。10月2日に中間共有会、11月中旬に成果報告ミーティングと成果報告会が置かれ、チームが動く期間は2か月で完結すると明記されていた。

年度が変わっても、この2か月は動いていない。2022年度は9月3日から11月19日まで、2023年度は9月2日のオリエンテーションから11月18日の成果提案ミーティングまでだった。令和5年の合同成果報告会は、青森市の新町キューブ3階会議室で13時から15時までの2時間、各チームの発表を並べる形で開かれている。4月から8月は参加登録とチーム編成、市町村による団体の選定と推薦、支援内容のヒアリングに充てられ、動き出す前の準備に半年近くを使う設計である。

無償の支援でも、団体側が払うものは残る

見落としやすいのが費用の線引きである。プロボノによる支援と成果物の提供は無償だが、募集要領には受け入れる団体が負担する項目が列挙されていた。チラシなどの印刷物を作る場合の印刷費と配送費、有償の画像素材を買う費用、打合せで発生する団体側出席者の交通費と施設使用料や茶菓代、そのほか文房具などの消耗品費と雑費である。

ただし例外も書かれている。事前オリエンテーション、キックオフミーティング、中間共有会、成果提案ミーティングと成果報告会の施設使用料は青森県が負担する。つまり県が持つのは全体の進行に関わる場の費用で、個々の成果物を世に出すための実費は団体の側に残る。ウェブサイトを作ってもらっても、運用に移った後の費用は自分たちで見ることになる。国のモデル事業の検証でも、受け入れ側の準備が成否を左右したことが記録されている。詳しくは関係人口のプロボノ事例|スキルで関わる437万人と16団体の検証にまとめた。

よくある質問

成果物は実際どの程度の粒度になるのか。令和5年度の4件が参考になる。青森市の青森大学ぬい撮り倶楽部にはInstagram投稿の改善提案、弘前市のNPO法人しののベースにはイベント予約フローの整理とオンラインフォームの導入および手順書の作成、つがる市のNPO法人つがる夢庭志仙会には団体紹介ウェブサイトのリニューアル、南部町のNPO法人青森なんぶの達者村には「南部太ねぎ」の販路拡大に向けた広報課題の整理と提案である。抽象的な助言ではなく、渡して使える物が目標に置かれている。

現地に行かなくても務まるのか。首都圏からの参加は基本的にオンラインで、オリエンテーションや発表の回に合わせて訪問する人もいるという扱いだった。ただし現地の聞き取りを抜くと課題の読み違いが起きやすいので、1度は足を運べる日程を見ておきたい。

参加する側の負担はどれくらいか。参加料はなく、青森県内での交通費や通信費、食費は参加者が持つ扱いだった。首都圏からの参加には旅費の一部補助が付く年もある。

青森県以外でも参加できるのか。サービスグラントの案内には、信州高山村観光協会、丹波篠山市の関係人口案内所、隠岐の島町などが受け入れ側として並んでいる。全国にいくつあるかは公表されていないため、GRANTに載っている案件を見て探すのが確実である。

関係人口の施策としてはどう位置づくのか。訪れる回数ではなく手を動かした中身で関わりの深さが決まる形なので、分類のうえでは深い側に寄る。全体像は関係人口2,263万人と協力隊8,196人|関わりの深さで並べて読むで比べている。若い世代と地域の接点づくりに取り組むFLASPOの側から見ると、技能を持つ人を募るより、受け止める課題を言葉にしておくほうが難しい。

出典は青森県の青森プロボノチャレンジ2021の支援団体募集資料と青森プロボノチャレンジについて(令和5年度)、およびふるさとプロボノの参加案内と青森プロボノチャレンジ2022の参加者募集である。


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