環境ビジネスで地域に起業する|136.2兆円の内訳と自然環境保全9.2兆円

「環境で何かやりたい」と地域で言うとき、頭にあるのは太陽光のことか、ごみのことか、それとも畑のことか。環境省は環境産業の市場規模を毎年推計していて、2024年の値は136兆2,251億円だった。この額は4つの分野に分かれており、どこを選ぶかで市場の大きさも、伸び方も、必要な設備もまったく違う。起業の話を始める前に、自分が立とうとしている区分を特定しておきたい。

環境産業という言葉は、4つの箱に分かれている

推計で使われている定義は、供給する製品やサービスが環境保護および資源管理に直接的または間接的に寄与し、持続可能な社会の実現に貢献する産業というものである。抽象的に見えるが、下に並ぶ項目まで降りると具体的になる。環境汚染防止分野には大気汚染防止、下水と排水処理、土壌と水質の浄化、騒音と振動の防止、環境経営支援、化学物質汚染防止が入る。地球温暖化対策分野はクリーンエネルギー利用、省エネルギー化、自動車の低燃費化、排出権取引、CCUSである。

残る二つが、地域で小さく始める事業に近い。廃棄物処理・資源有効利用分野は廃棄物処理とリサイクル、資源や機器の有効利用、長寿命化で構成される。自然環境保全分野は緑化と水辺再生、水資源利用、持続可能な農林水産業、環境保護意識向上の4項目だ。有機農業や森林の仕事、自然体験の提供は最後の箱に収まる。環境問題そのものの地図は日本の環境問題を一覧で整理|7分野の現状と私たちにできることに載せているが、産業としての切り分けはそれとは別の線で引かれている。

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全産業の11パーセントまで来た市場である

規模の感覚を先に持っておくと判断が早くなる。2024年の市場規模は前年比3.0パーセントの増加で、2000年と比べて約2.2倍になった。雇用規模の推計は約296万人で、前年から7.0パーセント増えている。付加価値額は約55.3兆円、経済波及効果は約261.9兆円、輸出額は約23.2兆円、輸入額は約5.6兆円だった。輸出は2000年比で約13.1倍に伸びており、ここは自動車関連が大きい。

注目したいのは構成比の変化である。全産業の産出額に占める環境産業の割合は、2000年の6.6パーセントから2024年には11.0パーセントまで上がった。この割合は2024年度国民経済計算の経済活動別財貨・サービス産出表にある全産業の産出額を使って出されている。経済のなかの脇役ではなくなったということだが、同時に伸びの中身は分野によって割れている。2024年に伸びたのは廃棄物処理・リサイクル設備のうち都市ごみ処理装置と事業系廃棄物処理装置で、設備更新に伴う官公需要が押し上げた。地球温暖化対策分野では再エネ売電ビジネスと省エネルギー建築が増え、環境汚染防止分野は自動車の生産台数の減少を受けて大気汚染防止用装置が大きく減っている。

2050年の推計は、分野ごとに向きが違う

同じ資料には2050年までの見通しも載っている。全体は約157.1兆円まで成長する一方で、分野別に見ると増える箱と減る箱がはっきり分かれる。地域で事業を考えるなら、現在の大きさより、この向きのほうが効いてくる。

分野 主な項目 2050年の市場規模(推計)
環境汚染防止 大気汚染防止、下水・排水処理、化学物質汚染防止など 9.6兆円
地球温暖化対策 クリーンエネルギー利用、省エネルギー化、CCUSなど 約56.6兆円
廃棄物処理・資源有効利用 廃棄物処理とリサイクル、資源・機器の有効利用、長寿命化 約81.0兆円
自然環境保全 緑化・水辺再生、水資源利用、持続可能な農林水産業 9.8兆円
合計 - 約157.1兆円

最も大きくなるのは廃棄物処理・資源有効利用分野で、2024年の65.6兆円から81.0兆円へ向かう。環境汚染防止分野は2024年から2050年までの年平均成長率がマイナス1.5パーセントと推計され、規制の導入が一巡した分野が縮んでいく姿が出ている。規模の順番が将来も入れ替わらない点は、参入先を選ぶときの前提にしてよい。

9.2兆円の箱は、大きくならずに中身が入れ替わる

地域起業と相性がよい自然環境保全分野を細かく見ておく。2024年の市場規模は9.2兆円で、前年に比べて1.6パーセント増えた。伸びの理由は緑化水辺再生工事であり、そのうち工場緑化が工業立地面積の大幅な増加によって拡大したと説明されている。つまり2024年の増加分を作ったのは、農でも林でもなく、工場の敷地だった。

それが2050年には9.8兆円で、年平均成長率は0.3パーセントにとどまる。箱そのものはほとんど膨らまない。ただし構成比率は変わり、2050年には持続可能な農林水産業が63.9パーセントを占めて最多になると推計されている。雇用の面でも、この分野はもともと持続可能な農林水産業の占める割合が高く、分野全体の動きがその増減に連動してきた。市場の総額を追うより、6割強を占めることになる持続可能な農林水産業のどこに自分の仕事が入るかを決めるほうが実際的である。開業の入り方そのものは地域起業と若者|開業7.0%と協力隊33.2%が開く差で扱っている。

市場の前に、場所の側が決まっていることがある

需要が自然に湧くのを待つのではなく、公的な計画が先に立っている地域もある。環境省は2030年度までに民生部門の電力消費に伴うCO2排出を実質ゼロにし、運輸部門や熱利用も含めて国全体の2030年度目標と整合する削減を実現する地域を「脱炭素先行地域」として選んできた。第7回の募集は令和7年10月6日から15日までで、共同提案を含む39の地方公共団体から18件の計画提案が出され、令和7年12月15日から4回開かれた評価委員会の評価を踏まえて12件が選ばれた。

この結果、第1回から第7回までに選定された計画提案は102件、選定された市町村を有する都道府県は45道府県となった。2025年度までに少なくとも100か所という目標に達したため、募集はここで終了している。これから起業する側にとっては、新たに手を挙げる枠は閉じたが、すでに102件の計画が各地で走っているという意味になる。省エネ改修、再エネの導入、地域内のエネルギー管理などの実務を担う事業者が要るので、計画の中身を読んで入り先を探すほうが近道である。一方で選定された市町村を持たない県も残っているため、計画の密度には地域差がある。無償の活動から入る道を比べたい場合は環境ボランティアの種類と選び方|法律に裏づけのある活動から探すも参考になる。

よくある質問

136.2兆円という数字は、起業の判断にどこまで使えるのか。これは国内の市場規模の推計値で、個別の地域や事業規模まで割り戻せるものではない。使えるのは分野ごとの向きと、伸びている項目の名前である。自分の事業がどの項目に入るかを先に決めてから、その項目の増減を見るのが筋道になる。

再生可能エネルギーで始めるのは有利なのか。地球温暖化対策分野は2050年に向けて増え続ける推計で、2024年も再エネ売電ビジネスが伸びた。ただし雇用規模の2023年から2024年にかけた急増は、再エネ賦課金の単価変更に起因するものだと注記されている。制度の設計変更が数字を動かす分野なので、売電の価格に依存する組み立てはそのぶん脆い。

農林水産業を選ぶと市場は小さいのか。分野の総額では確かに小さい。それでも2050年の自然環境保全分野の6割強を占める見通しで、地域の土地と人に結びついた仕事という点では置き換えにくい。規模の小ささを嫌うか、競合の少なさを取るかという選択になる。

廃棄物の分野は個人でも入れるのか。2024年の増加を作ったのは都市ごみ処理装置や事業系廃棄物処理装置といった設備で、官公需要が中心だった。設備の製造に近い場所は資本の壁が高い。入りやすいのは収集運搬や分別、修理や再使用のように、長寿命化と資源の有効利用に当たる実務の側である。

数字の出どころを自分で確かめたい。環境省の環境産業の市場規模等調査結果のページに概要版と詳細版が置かれ、2024年版の概要は推計結果の概要についてとして令和8年6月に公表された。脱炭素先行地域の選定結果は第7回の報道発表に出ている。若い世代と地域の接点づくりに取り組むFLASPOでも、こうした一次資料から分野を絞る作業を最初に置いている。


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