地方創生の失敗はどこに記録されるか|検査報告が示した759団体の未公表

失敗はどこに書き残されるのか

地方創生の事業がうまくいかなかったという話を探すと、たいていは記事や書籍の論評に行き当たる。当事者である自治体が自分の事業を失敗と書き残すことはまずないからだ。数字が付いた形で残るのはほぼ一箇所で、会計検査院が毎年まとめる決算検査報告である。国の予算が入った事業について、使い方が適切だったかを事後に点検して国会と内閣に報告する仕組みになっている。

新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金は、その点検対象として最も規模の大きいものの一つだった。令和4年10月17日に内閣総理大臣と総務大臣に宛てて報告された検査結果は、令和2年度分の実施計画を対象にしている。交付先は47都道府県と1,741市区町村で、検査院が見たのは24都道府県と965市区町村。この範囲で45,469事業、事業費6兆1,832億余円、交付額3兆4,058億余円が検査された。

この交付金は使い道の自由度が高く、地域の実情に応じて事業を組めることが長所とされていた。裏返すと、何に使ったかを後から説明する責任が自治体側に重く乗る仕組みでもある。検査院が最初に見たのは、個々の事業の良し悪しよりも、その説明が行われていたかという点だった。自治体の運営そのものがどこで不適切と判定されるかは自治体の運営はどこで失敗と判定されるかが別の制度から整理している。

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検証結果を公表していなかったのが759団体

検査で最も大きく出たのは、個別の経理ミスではなく効果検証の空白だった。令和4年3月末の時点で、検証結果を公表していなかった事業主体が759にのぼった。内訳は21都府県と738市区町村で、検査対象989団体の約76.7%に当たる。その759団体が扱っていた事業費は5兆1,082億8,149万余円、交付額は2兆6,977億1,937万余円である。

効果検証の状況(令和4年3月末時点) 都道府県 市区町村 計
検証を実施し、結果を公表していた 3県 227市区町村 230団体
検証は実施したが、公表していなかった 4都府県 197市区町村 201団体
検証そのものを実施していなかった 17道県 541市区町村 558団体
検査対象の合計 24都道府県 965市区町村 989団体

公表していた団体は230、全体の2割強にすぎない。検証を実施していなかった558団体が挙げた理由は、事業完了後である令和4年度以降に行う予定だったこと、決算の説明として議会に報告済みだったことなどである。悪意のある隠匿ではなく、検証という工程が手順のなかに組み込まれていなかったという性格の空白だった。交付金の達成指標そのものの扱いは補助金頼みの地方創生はなぜ続かないのかでも論点になっている。

商品券は配った時点では終わらない

個別の事態として挙がったものを順に見ると、消費喚起のために配った商品券が最初に出てくる。対象は1,009事業、事業費664億7,118万余円、交付額598億5,047万余円。このうち39事業(30市区町村)で、使用期限を過ぎた未換金相当額6,893万余円が商工会等に滞留していた。交付金が充てられていた額は6,695万余円である。

商品券は配った枚数ではなく使われた枚数が効果に対応する。期限切れで使われなかった分は、本来なら国に返すか別の用途に回すべき金が商工会の口座に残っている状態になる。例示された板橋区では、未換金分の商品券相当額5,157万余円が商店街振興組合連合会に残っていた。

さらに84事業(57市町村)では、商工会等と取扱店舗の間でいくら換金されたかが把握されていなかった。交付金充当額は12億9,452万余円にのぼる。配布の実績は分かるが消費された実績が分からないため、そもそも効果を測る材料がない。検査院が内閣府に求めたのは、未換金相当額等には交付金を充当しない取扱いを定め、換金額を把握させて自治体に周知することだった。

減免と上乗せで起きていた取り違え

水道料金等の減免事業は356事業、事業費243億2,982万余円、交付額230億0,581万余円が対象になった。ここでは84市町村の90事業で、警察署や刑務所といった公的機関の利用に係る水道料金等1億2,257万余円が減免の対象に含まれていた。交付金充当額は1億1,616万余円。家計や事業者の負担を軽くするための減免が、国や都道府県の施設にも及んでいた形である。

信用保証料の補助等事業では、金額の桁が一つ変わる。475事業、事業費2,011億5,677万余円、交付額1,016億4,652万余円のうち、繰上償還による過払分の返金が11都県と115市区町村で合計257億6,037万余円発生していた。検査時点で額が確定していた94事業では、過払分返金5億6,294万余円が補助対象事業費から除かれず自治体に滞留していた。借入が早く返済されれば保証料も戻るという当然の流れが、交付金の精算に反映されていなかった。

持続化給付金の上乗せ事業は108事業、交付額323億4,805万余円。このうち103事業(5道県と86市町村)では、受給者本人から情報提供の同意を得ていなかった。上乗せ分の給付額は328億7,080万余円、交付金充当額は321億0,232万余円である。同意がないため、国の給付要件を満たしていたかを後から確認することが困難になっていた。不正があっても追えない状態を、制度の作りの側で生んでいたことになる。

2年後の報告と、税金の使い方を確かめる順番

同じ交付金は令和5年度決算検査報告でも取り上げられた。令和2年度から4年度までの予算額18兆3,259億余円のうち、内閣府と総務省で3兆2,665億余円が使われずに残っていた。事業数は47都道府県と1,741市区町村で164,803事業、事業費約7兆8,399億円、交付額約5兆3,331億円という規模である。最終年度の予備費1.2兆円が全額繰り越されたことも指摘された。

公表の状況は改善していた。令和6年4月の時点で、44都道府県は令和2年度と3年度分の検証結果を公表済みで、4年度分も繰越事業を除く42道府県が公表していた。ただし方法には差が残る。アンケート等の調査を用いたのは12県で、32道府県は議会説明のために作った内部の事業記録に頼っていた。大阪府、山口県、岩手県、福岡県の4府県は、施策単位でまとめたり概要だけを示したりして計画との対比が難しい形で公表しており、その後に表し方を修正している。

読む側としては、まず自分の住む自治体が交付金事業の検証結果を公表しているかを探し、次にその検証が事業単位で計画と実績を並べているかを見る順番になる。並んでいなければ、成果があったかどうかは判断できない。学生が地域の課題に関わるときも同じで、事業の成果を測る指標が先に置かれているかどうかが、その取り組みが続くかどうかを分ける。FLASPOが扱うようなプロジェクト型の関わりでも、何をもって達成とするかを決めずに動き出した企画は後から説明ができなくなる。制度そのものの構造は地方創生交付金の仕組みとはで確かめられる。

よくある質問

決算検査報告は誰でも読めますか。会計検査院のサイトで年度ごとに公開されており、交付金名や省庁名から該当箇所をたどれます。今回挙げた事態は令和3年度決算検査報告と令和5年度決算検査報告に収められています。

指摘された金額は返還されるのですか。項目によって異なります。未換金相当額や過払分返金のように交付金を充てるべきでなかった分は、国庫返還の要否を確認する対象になります。検査院は総務省に対し、返金額を把握して補助対象事業費から除外する報告の仕組みを整えるよう求めました。

効果検証を公表していない自治体は違法なのでしょうか。違法ではありません。交付金の要綱で検証と公表が求められていた一方、手順や方法が自治体に委ねられていたために実施の有無が分かれました。検査院が内閣府に示したのは、適切な方法を周知する方策を検討するという意見表示です。

予算が余ったことは失敗に数えるべきですか。使い残しそのものより、必要な額の見積りと配り方が実態に合っていたかが問われます。18兆3,259億余円のうち3兆2,665億余円が未使用という規模は、急いで積んだ予算が現場の事業計画に追いついていなかったことを示します。

自分の町の検証結果が見つからないときはどうすればよいですか。広報や予算・決算のページに載らず、総合戦略の点検資料に紛れていることがあります。見当たらなければ情報公開の窓口に問い合わせる形になり、問い合わせが届くこと自体が公表を促す材料にもなります。


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