林業経営体は3.4万に減った|新規就業708人と定着率73.2%の読み方

山で稼ぐ側に入る道は、農業や漁業と比べて語られることが少ない。白書を開くと、経営体の数が10年で半分以下になり、1つの経営体が面倒を見る山が倍に広がっていた。入口の制度と定着の数字から、この分野で始めるときの順番を確かめたい。

経営体が半分以下になり、1つあたりの山が倍になった

林野庁の白書によると、令和2年の林業経営体数は3.4万経営体で、前回調査の8.7万経営体から大幅に減った。保有山林面積の合計も437万haから332万haへ下がっている。

項目 前回調査 令和2年(2020年)
林業経営体数 8.7万経営体 3.4万経営体
保有山林面積の合計 437万ha 332万ha
1経営体あたりの平均保有山林面積 — 100.77ha
個人経営体の割合 — 82%(2.8万経営体)
林野庁「令和7年度 森林・林業白書」第3章第1節より作成。平均保有山林面積は白書が「前回調査から約2倍に増加」と記述している。

面積の減り幅より経営体の減り幅が大きいため、1経営体あたりの平均保有山林面積は100.77haになり、前回調査から約2倍に増えた。やめた人の山が残った人に集まったのではなく、調査に答える経営体の数え方が変わる中で、山を持つ単位が大きい側に寄ったという動きである。

組織形態で見ると、個人経営体が82パーセントで2.8万経営体を占める。法人化していない世帯単位の経営が大半という構造は変わっていない。白書は、保有山林で素材生産を行う家族経営に近い概念として自伐林家に触れているが、明確な定義はないとも書いている。数のうえでどれだけいるのかを統計から直接取り出せない層が、この分野には残っている。

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入口は研修から入る道が用意されている

新しく入る人の数は、制度を通して数えられている。令和6年度は「緑の雇用」事業を活用して708人が新規に就業した。この事業は、現場で必要な基本的な知識や技術の習得を支援する枠組みで、1年目の研修を修了した人を集計している。

指標 実績 目標
「緑の雇用」事業による新規就業者 708人(令和6年度) 毎年度1,200人
就業3年後の定着率 73.2%(令和4年度就業者) 80%(令和7年度まで)
全産業(高校卒)の3年後定着率 62.1% —
林野庁「令和7年度 森林・林業白書」より作成。目標値は森林・林業基本計画(令和3年6月閣議決定)に則した測定指標。全産業の値は厚生労働省「新規高卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」にもとづく白書の試算。

林野庁が置いている目標は毎年度1,200人である。令和6年度の708人はその6割弱にあたる。目標値は森林・林業基本計画にもとづく測定指標として設定されたもので、人数と定着率の2つを並べて見る形になっている。

白書はあわせて、作業量が季節で変動する農業や、機械の操作で共通点の多い建設業との連携、施業の適期が違う他地域との連携による従事者確保の取組も挙げている。1年を林業だけで埋めるのが難しい地域では、他の仕事と組み合わせて通年の収入を作るという発想が制度の側にも入っている。

定着率73.2パーセントという数字の位置

残るかどうかの数字は、他の産業と比べると見え方が変わる。「緑の雇用」事業を活用した令和4年度の新規就業者について、3年後にあたる令和6年度末の定着率は73.2パーセントだった。

白書は同じ場所で、全産業の高校卒の3年後定着率を62.1パーセントと試算して並べている。厚生労働省の離職状況の調査にもとづく値で、林業のほうが11ポイント高い。きつい仕事という印象とは逆向きの数字である。

ただし母数の性格が違う。林業の73.2パーセントは研修制度を経て入った人の値で、研修を受ける時点でこの仕事を選ぶ意思が固まっている集団にあたる。高校卒の全産業はそうした選別を通っていない。数字をそのまま比べるより、研修という入口が定着に効いていると読むほうが筋に合う。

高知県仁淀川町が作った研修のかたち

地域の側がどこまで用意するかで、入りやすさは変わる。白書が取り上げている高知県仁淀川町の例では、町と森林組合、林産協同組合でつくる仁淀川町森林管理推進協議会が運営主体となり、町独自の林業研修制度を設けた。

手順は段階に分かれている。研修を希望する人には、まず町が現場の視察やチェーンソーの操作体験ができるツアーを用意する。そこで就業の意欲を持った人について、林産協同組合が受入事業体の調整を行う。研修期間中は同組合から月額17万円の研修手当が支給され、住宅も無償で提供される。

研修生はチェーンソーや林業機械の講習を受け、実務経験を積みながら資格を取り、修了後は町内の林業事業体に就職する。制度開始から令和7年度までに53人が研修に参加し、そのうち37人が同町に定住した。定住者の中から研修生を支える人や、造林業で起業する人も出ている。

起業の話にするなら、どこから数えるか

山の仕事で独立するという話は、統計のうえでは見つけにくい。総務省が地域おこし協力隊の任期終了者を追った調査では、活動地と同じ市町村に定住した5,038人のうち、就農・就林が583人で、その内訳は農業477名、林業54名、畜産業20名、漁業・水産業12名である。林業に入った人は定住者の1パーセント程度にとどまる。

同じ調査で起業した人は2,296人いるが、分野の内訳は飲食サービス業308名、美術家やデザイナー217名、宿泊業181名、小売業174名と続き、林業の名前は上位に出てこない。山を買って木を出す形の独立は、制度の集計の外側に置かれやすい。

だからこそ、順番としては就業が先に来る。研修で資格を取り、事業体で現場を覚え、そのあとで自分の単位を作るという道筋が、仁淀川町の例でも実際に起きている。学生の段階でできるのは、この順番のどこに自分が立てるかを確かめることだろう。地域で働く入口の違いを数字で押さえる方法については、FLASPOでも扱っている。

よくある質問

林業の経験がなくても入れるのですか。

「緑の雇用」事業は、現場で必要な基本的な知識や技術の習得を支援する枠組みとして組まれています。令和6年度はこの事業を活用して708人が新規に就業しました。未経験から1年目の研修を受ける形が、制度上の標準的な入口になっています。

研修中の収入はどうなりますか。

制度や地域によって違います。高知県仁淀川町の例では、研修期間中に林産協同組合から月額17万円の研修手当が支給され、住宅も無償で提供されています。これは町と組合が独自に作った仕組みなので、他の地域で同じ条件が付くとは限りません。

林業経営体が3.4万まで減ったのは、仕事がなくなったという意味ですか。

そうとは読めません。保有山林面積の合計は332万haあり、1経営体あたりの平均は100.77haへ広がっています。面倒を見るべき山は残ったまま、見る単位の数が減った状態です。林野庁が毎年度1,200人という新規就業の目標を置いているのは、この差を埋める必要があるからです。

自伐型の林業で始めるという話をよく聞きますが、統計では何人いるのですか。

白書は、保有山林で素材生産を行う家族経営に近い概念として自伐林家に触れつつ、明確な定義はないと書いています。定義が定まっていないため、人数を公的な統計から取り出すことはできません。事例として語られる話と、統計で確かめられる話を分けて扱う必要があります。

出典:林野庁「令和7年度 森林・林業白書」第3章第1節 林業の動向(PDF)、総務省「令和7年度 地域おこし協力隊の隊員数等について」(PDF)。関連記事:漁業に外から関わる、森林9割の町で協力隊になる、地域起業の補助金。


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