同じ「連携しています」が、違う相手を指している
県庁の担当課に問い合わせると、域内の大学とは連携していると返ってくる。大学の地域連携センターに問い合わせても、自治体とは連携していると返ってくる。どちらも嘘ではないのに、具体的な事業名を聞いた途端に話がかみ合わなくなることがある。
文部科学省が令和6年4月8日から5月8日にかけて実施した地方公共団体と高等教育機関との連携の状況に関するアンケートは、このすれ違いを数字で可視化した。都道府県と指定都市からは56団体(83.6パーセント)、大学・短期大学・高等専門学校・専修学校専門課程からは1,752機関(41.9パーセント)が回答している。
最も対照的なのが次の二つだ。都道府県・指定都市の96パーセントが「域内の国立大学と連携している」と答えた。ところが高等教育機関の側で「本部が所在する都道府県と連携している」と答えたのは40パーセントにとどまる。同じ関係を両端から見ているはずなのに、数字が倍以上ひらいている。
自治体の側に見えているのは、数えられる相手である
96パーセントという高さには理由がある。都道府県から見た国立大学は、多くの場合ひとつか二つで、窓口も固定されている。連携が十分になされていると答えたのは、連携している団体のうち83パーセント。満足度としては高い部類に入る。
それでも、域内に国立大学がある団体の93パーセントが「さらなる連携強化が必要」と答えている。十分だと思いながら、もっと必要だとも思っている。この両立は、いま成立している連携が広がりを欠いていることの裏返しと読める。
実際、地域連携プラットフォームの運営課題として挙がったのは、人員の確保が26.0パーセント、予算の確保が24.7パーセント、構成員間の温度差と活動内容の不明確さがそれぞれ19.5パーセントだった。自由記述には、活動が一部の大学に限られ、産業界への広がりが見られないという声も残っている。
担当部署の置かれ方も、この温度差を説明する。連携を担う部署があると答えた団体は92.9パーセントにのぼるが、その部署の業務量のうち高等教育機関との連携が占める割合は平均で3.9割、最も多かった回答は2割程度だった。連携を本業とする部署はほとんどなく、他の業務の片隅で回っている。自由記述には、いまは県が予算を持って主導しているが、今後は大学主導で人員と予算を確保し自走できる仕組みへ移すべきだという指摘もあった。
大学の側は、県より市区町村のほうが近い
高等教育機関の回答を並べると、相手によって数字が変わる。本部が所在する都道府県と連携しているのは40パーセント、本部が所在する市区町村とは53パーセントで、より小さい自治体のほうが接点が多い。日々の協力が、まちの単位で起きているということである。
さらに落差が大きいのが、本部以外のキャンパスだ。複数の都道府県にキャンパスを持つ機関は全体の約半数にのぼるが、そのうち本部以外のキャンパスがある都道府県と連携しているのは19パーセント。市区町村でも33パーセントにとどまる。分校やサテライトキャンパスのある地域は、統計のうえではほとんど結ばれていない。
連携を進めるうえでの障害は、両者でよく似ている。自治体は専門家・コーディネータの不足を32.3パーセント、予算の不足を26.3パーセントで挙げ、高等教育機関も28.1パーセントと22.9パーセントで同じ二つを上位に置いた。一方、高等教育機関だけが21.4パーセントで「連携実績がない又は不十分」、20.7パーセントで「自治体の連携窓口や意向が分からない」を挙げている。探しているのに見つからない側が、大学のほうにいる。
困っていることの順番が入れ替わる
同じ地域について「どんな課題があるか」を三つまで選んでもらうと、優先順位がずれる。
| 課題 | 都道府県・指定都市 | 高等教育機関 |
|---|---|---|
| 卒業後に地元で就職する機会の周知不足、地元に残るインセンティブの不足 | 29.9%(1位) | 18.1%(2位) |
| 進学ニーズに応じた高等教育機関の不足、地元へ進学するインセンティブの不足 | 22.0%(2位) | 12.9%(4位) |
| 経済的な修学支援の不足(自治体からの奨学金など) | 1.6% | 20.1%(1位) |
| 教育研究リソースが地元産業界や自治体に知られていない | 7.1% | 13.4%(3位) |
目を引くのは奨学金である。高等教育機関の最多回答が「経済的な修学支援の不足」で20.1パーセントだったのに対し、自治体側で同じ項目を選んだのは1.6パーセントしかない。学費が払えずに辞めていく学生を日々見ている側と、人口や産業の指標で地域を見ている側とで、課題の見え方が分かれている。
学生がこの差を踏むのは、窓口を探すときである
地域の活動に関わりたいと考えた学生が最初に当たるのは、たいてい大学の地域連携窓口か、自治体の企画課である。先の数字をふまえると、所属キャンパスが本部かどうかで、その先の反応がかなり変わると見ておいたほうがいい。本部であれば市区町村との接点が既にある確率は半々、分校であれば三分の一である。
一方で、動きが出やすい領域もはっきりしている。地域連携プラットフォームで今後特に扱いたい事項として最も多く選ばれたのは「卒業後の域内定着に向けた学生インターンや就業体験、企業説明会などの実施」で24.4パーセント。次いで産業界の人材需要の議論・共有が14.4パーセント、域内進学率の向上と、地域社会における高等教育機関の役割の共有がそれぞれ13.3パーセントだった。学生が関わる枠は、まず就業体験の形で用意されやすい。
具体的な共同研究の件数から地域ごとの濃淡をつかむなら自治体と大学の共同研究は何件あるか|地方別の実績から確かめるが、これから枠組みがどう変わるかは2040年に大学進学者は46万人になる|地域連携の枠組みはどう変わるかが参考になる。地域とのつながり方そのものを広く見たい場合は大学は関係人口の入口になるか|SPARC6件と訪問系1,884万人も合わせて読める。学生向けの地域との接点づくりはFLASPOでも扱っている。
自治体は大学に何を期待しているのか。自由記述で最も多かったのは人材育成に関するもので、次いで地域課題の解決、若者の人口流出への歯止めが続いた。学生を多数抱えるという特徴を活かしてまちづくりに関与してほしい、という書き方をした団体もある。学生が地域側から当てにされていることは、数字の裏に一貫して出ている。
よくある質問
この調査の対象に、市町村は入っているのか。入っていない。自治体側の調査対象は都道府県と指定都市に限られており、回答は56団体である。町村と大学の関係は、この調査からは読み取れない。
「連携している」の定義は決まっているのか。アンケートでは定義を置かず、各団体・各機関の判断に委ねている。96パーセントと40パーセントの差には、包括協定一本を連携と数えるか、継続している事業があることを連携と呼ぶかという、言葉の幅も含まれている。
地域連携プラットフォームとは何を指すのか。文部科学省が令和2年10月に作成したガイドラインに沿い、大学等に加えて自治体や産業界が参加する恒常的な協議の場で、現状と課題をデータで把握したうえで将来目標を共有しているものを指す。自治体の3分の2が参加しており、そのうち事務局を高等教育機関が担っているのが51.3パーセントである。
回答率に偏りはないのか。ある。高等教育機関側の内訳は、高等専門学校が91.4パーセント、大学が64.6パーセント、短期大学が44.1パーセント、専門学校が34.5パーセントで、専門学校の回答率が低い。全体値を読むときは、専門学校3,009校のうち1,037校しか答えていない点を頭に置いておきたい。
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