任期を終えた協力隊の23%はどこへ行ったか|不明511人と地域差24ポイント

定住率70.3%は何を数えた数字か

「任期を終えた隊員の7割が地域に残る」という一文は、募集ページでもよく見かける。もとになっているのは総務省が令和8年4月24日に公表した調査で、令和2年4月1日から令和7年3月31日までの5年間に任期を終えた8,762人について、令和7年5月1日時点の居所を数えたものだ。同じ地域に定住していたのは6,163人、割合にして70.3%だった。

注意したいのは「同じ地域」の範囲である。内訳は活動地と同一市町村内が5,038人で全体の57.5%、活動地の近隣市町村内が1,125人で12.8%。隣の市町村へ移った人も「定住」に含めた合計が70.3%という構成になっている。前年の調査は任期終了者8,034人のうち5,539人で68.9%だったため、1.4ポイント上がった計算になる。

数え方が分かると、この数字が答えているのは「活動した地域の圏内に残ったか」という問いまでだと見えてくる。残った先で何をして暮らしているか、どの地域で残りやすいかは、同じ調査の別の欄を開かないと分からない。協力隊の定住率70.3パーセントの内訳で全体像を確かめたうえで、ここでは数字が黙っている側を追う。

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行き先が記録されていない511人

8,762人から定住者6,163人を引くと2,599人が残る。内訳は他の地域に転出した人が2,013人で23.0%、「不明」が511人で5.8%、「その他」が75人で0.9%だ。4人に1人に近い割合が、活動した地域とその隣からは離れている。

転出した2,013人のうち228人は、転出先でも活動地と関わりのある地域協力活動等に従事していると報告されている。離れたことが関わりの終わりを意味するとは限らない、という材料でもある。くわしい動きは近隣1,125人と転出後の228人の整理が追っている。

課題として重いのは「不明」の511人のほうだ。受け入れた自治体が、任期を終えた隊員の行き先を把握できていない件数がこれだけあるということになる。5年で8,762人を受け入れた制度で、5.8%の行方が記録に残らない。定住率の分母に含まれているので、この人たちが定住していた場合は実際の割合はもう少し高く、離れていた場合は低くなる。幅を持った数字として扱うのが正確だ。

規模も押さえておきたい。令和7年3月31日までに任期を終えた隊員は累計で15,045人、前回の集計から2,363人増えている。制度が始まった平成21年度の隊員は89人だったので、任期を終えた人の層はこの数年で急に厚くなった。追跡の仕組みを整えないまま人数が伸びると、記録に残らない人の実数もそのぶん増えていく。

都道府県で24ポイント開く

全国で70.3%という一つの数字は、地域ごとの差を平らにしてしまう。同じ調査には都道府県別の任期終了者数と定住率が載っている。任期終了者が100人以上の県だけを並べると、最も高い広島県は79.6%、最も低い宮崎県は55.6%で、その差は24.0ポイントになる。

都道府県 任期終了者(直近5年) 同じ地域に定住 定住率
広島県 108人 86人 79.6%
北海道 1,225人 959人 78.3%
長野県 656人 512人 78.0%
静岡県 125人 96人 76.8%
兵庫県 198人 150人 75.8%
全国 8,762人 6,163人 70.3%
岩手県 296人 188人 63.5%
長崎県 115人 70人 60.9%
島根県 388人 234人 60.3%
秋田県 179人 100人 55.9%
宮崎県 223人 124人 55.6%
総務省「地域おこし協力隊の定住状況等に係る調査結果」(令和8年4月24日公表、調査時点は令和7年5月1日)から、任期終了者100人以上の都道府県を抜粋

受け入れ人数が多い北海道と長野県が上位にあるのは見落としにくい点だ。数を受け入れている県ほど残りにくい、という関係にはなっていない。一方で、島根県は388人を送り出して234人、宮崎県は223人のうち124人という結果になっている。隊員の資質ではなく、受け入れる側の体制や任期中の関わり方の差が表れている部分と読むのが自然だろう。

残った人のなりわいが示す次の課題

同一市町村内に定住した5,038人について、調査はなりわいも数えている。起業が2,296人で45.6%、就業が1,753人で34.8%、就農・就林が583人で11.6%、事業承継が70人で1.4%。残りは不明155人と、その他181人だ。半分近くが自分で事業を起こしているという構成は、ほかの移住施策には見られない。

内訳をもう一段開くと、別の事情が見える。就業1,753人のうち最も多いのは行政関係の480名で、自治体職員、議員、集落支援員などが含まれる。次が観光業の176名、農林漁業の138名、地域づくり・まちづくり支援業の99名と続く。起業の側は飲食サービス業308名、美術家やデザイナーなど217名、宿泊業181名の順だ。就業にはこのほか教育業78名、医療・福祉業72名、製造業58名、小売業53名、生産から販売までを手がける6次産業47名も含まれる。

就業で残った人の約4分の1が行政関係という形は、定住の受け皿として自治体の雇用が大きいことを意味する。採用枠には限りがあるため、隊員が増えたぶんだけ同じ道が開くわけではない。任期の終わりに向けた収入の組み立ては、二年目の冬までに決めることとして早い段階から具体化しておくほうが安全だ。

受け入れ側に残っている宿題

隊員の数は増え続けている。令和7年度の隊員数は前年度から286名増えて8,196人、取組自治体数は11団体増えて1,187団体になった。1,187団体の構成は20道県と1,167市町村だ。特別交付税の対象になりうる受入可能自治体は1,461団体あるので、実際に受け入れているのは約81%にあたる。

入口の設計も変わってきた。短期間の体験である「おためし地域おこし協力隊」の参加者は令和7年度に1,450人、学生なども対象にした「地域おこし協力隊インターン」は1,414人が参加している。インターンは令和5年度の393人から令和6年度に1,047人、令和7年度に1,414人と2年で3.6倍になった。着任前に地域と顔を合わせる機会が増えれば、思い違いのまま赴任して半年で辞める事態は減らせる。

ただ、体験の充実は着任前の課題にしか効かない。不明511人という記録の欠けや、県によって24ポイント開く定住率は、任期の3年間と任期後をどう設計するかの問題だ。地域と若い世代の関わりを扱うFLASPOの視点で言えば、人数の達成より、残った人がどう食べているかを公表資料で追える状態にするほうが、次の志望者にとって価値が高い。

よくある疑問

定住率は高いほど良い指標なのか。この数字は任期後に同じ圏内に住んでいるかだけを見ており、本人の満足や収入は含まない。地域を離れて別の場所で力を発揮する選択も、制度の失敗ではない。指標としては、定住率と合わせて定住後のなりわいの内訳まで見るのが実態に近い。

任期の途中で辞める人はどれくらいいるのか。全国の割合を示した公表資料は見つかっていない。総務省の調査は任期を終えた隊員を対象にしているため、途中で辞めた人は分母に入っていない。自治体ごとの議会資料などで触れられることはあるが、全国の数字として語れる段階にはない。

定住率が低い県は選ばないほうが良いのか。県単位の数字は、受け入れている市町村の性格の寄せ集めである。応募先を選ぶときは、県の平均より、その市町村の隊員数、過去の任期終了者の進路、任期後の仕事の見通しについて担当課に直接聞いた答えのほうが判断材料になる。

数字はどこで確かめられるのか。隊員数と定住状況は、総務省の報道資料令和7年度における地域おこし協力隊の活動状況等にまとまっている。別紙の隊員数等についての資料には都道府県別の表も載っているので、気になる地域の欄を自分で開いてみてほしい。


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