募集要項に金額が書かれていないとき、どこを見るか
自治体が出している副業人材の募集を見ていくと、業務の内容は細かいのに報酬の欄が「要相談」や「予算の範囲内」で止まっているものがある。交渉の材料が手元にないと、安く引き受けてしまうか、話が合わずに流れるかのどちらかになりやすい。
そこで効いてくるのが、自治体側の財源の仕組みである。都市部の企業に勤めたまま地方の仕事に関わる形には「地域活性化起業人」という制度があり、受け入れた自治体が支出した経費の一部を国が特別交付税で手当てする。手当ての上限額は公表されているので、自治体が払える額の上限はそこから推測できる。
制度の方式は三つに分かれている。企業から社員を派遣してもらう企業派遣型が平成26年度から、企業に所属する個人が自治体と契約を結ぶ副業型が令和6年度から、都市部の企業を退職した人を対象とするシニア型が令和7年度から始まった。個人として関わるのは、後ろの二つである。
国が手当てする上限は、報償費100万円と旅費100万円
総務省の地域活性化起業人制度推進要綱は、措置額の上限を金額で書いている。副業型とシニア型については、報償費等と旅費のそれぞれが1,000千円を超えるときは1,000千円をそれぞれの上限とする、という書き方になっている。つまり報償費等で100万円、旅費で100万円、合わせて1人あたり200万円が天井である。
| 区分 | 副業型・シニア型 | 企業派遣型 |
|---|---|---|
| 受入れの期間前に要する経費 | 上限100万円/団体(措置率0.5) | 上限100万円/団体(措置率0.5) |
| 受入れの期間中に要する経費 | 報償費等 上限100万円/人+旅費 上限100万円/人 | 上限610万円/人 |
| 発案・提案した事業に要する経費 | 上限100万円/人(措置率0.5) | 上限100万円/人(措置率0.5) |
| 勤務の下限 | 月4日以上かつ月20時間以上、滞在は月1日以上 | 受入自治体の区域内で月の半分以上 |
| 任期 | 6か月から3年 | 6か月から3年 |
企業派遣型の610万円と並べると差が大きいが、こちらは企業に対する負担金で、社員の給与は派遣元から出ている。副業型の報償費等は個人に直接渡る性質のものなので、同じ額として比べるものではない。個人の手取りに関わる数字として見るべきなのは、100万円という側である。
なお措置の対象になる自治体は限られている。要綱の対象は1,433市町村で、三大都市圏外の政令市・中核市・県庁所在市に所在する企業の社員が使える団体はさらに狭く1,375市町村になる。相手が政令市や県庁所在市であれば、この制度の枠外で予算を組んでいることになる。
月4日・20時間で割ると、どのくらいの単価になるか
要件として示されているのは、月4日以上かつ月20時間以上の勤務と、受入自治体における月1日以上の滞在である。この下限で1年間続けたとすると、年間48日・240時間になる。報償費等の上限100万円をこの時間数で単純に割ると、1時間あたり約4,166円、1日あたり約20,833円という水準が出てくる。
これは上限の話で、実際に支払われる額ではない。自治体は一般財源から支出し、その一部が後から交付税で手当てされる形なので、財政の余裕や他の人材との兼ね合いで低く設定されることは珍しくない。逆に言えば、月20時間の関わりに対して年間100万円を超える報償を提示できる自治体は、制度の外で予算を立てているということになる。
勤務時間を増やせば単価が上がるわけでもない。上限は人単位で決まっているので、月40時間働いても天井は同じ100万円である。時間を増やすほど実質の単価は下がっていく。関わる量を自分で決められるなら、要件の下限に近いところで設計したほうが割は良くなる。どこで募集が出ているかは地域と関わる副業はどこに募集が出るかに整理した。
旅費が別枠になっているのが、この制度の勘所である
見落とされやすいのは、旅費が報償費等と別に100万円まで措置されるという点である。要綱は旅費について「実際に支出した経費を対象とする」と書いており、報償費等のような月割の調整は入らない。月1日以上の滞在が要件に入っているので、遠方から通う場合の交通費と宿泊費はここで受け止める設計になっている。
この線引きを知らずに交渉すると、報償費の中から移動費を出す形で話がまとまってしまう。年に12回往復する距離が片道2万円なら、それだけで報償費の半分近くが消える。契約の段階で、報償費と旅費を別の項目として書いてもらうかどうかで、手元に残る額が大きく変わる。
滞在の頻度そのものが続けられるかどうかの分かれ目になる、という話は副業は関係人口を続かせるかでも触れた。費用の面だけでも、旅費が別枠で手当てされる制度を選ぶかどうかで続けやすさが変わる。FLASPOのように地域と人をつなぐ仕組みを間に置くと、条件の確認を自分一人で抱えずに進められる。
年度の途中から始めると、天井が下がる
報償費等には月割の規定がある。年度の中途から受入れを開始した場合は、月の初日を基準日として月割により計算した額が上限になる。受入期間が1年に満たない年度も同じ扱いで、たとえば10月開始なら、その年度の上限は100万円ではなく6か月分の50万円に近い額まで下がる。
さらに、要件を満たさない月があった場合も月割で計算される。月4日・20時間に届かなかった月は、その分が上限から落ちるという意味である。繁忙期に本業が立て込んで地域の仕事に手が回らなかった月は、自治体側の手当てが減る。ここを曖昧にしておくと、年度末に報償の減額という話が出てくる。
対策は単純で、開始の時期を年度の始めに合わせられるか相談すること、そして毎月の稼働日数と時間を自分で記録しておくことである。副業として届け出や確定申告の手順を踏む流れは副業の始め方にまとめてある。制度全体の図解は総務省の施策資料に出ている。
よくある質問
フリーランスでもこの制度を使えるか。副業型は企業等に所属する社員が、シニア型は都市部の企業を退職した個人が対象で、どこにも所属していない働き方は想定されていない。会社員として在籍しながら関わるか、退職後にシニア型で入るかのどちらかになる。所属先の副業許可を先に取っておく必要がある。
報償費の100万円は手取りか。自治体が支出する額の上限であって、手取りではない。報酬として受け取れば所得になるので、源泉徴収や確定申告の対象になる。給与所得の勤め先がある人は、年末調整では精算されないため自分で申告する流れになる。経費として認められる支出があれば、そこで差し引ける。
学生のうちから使える制度か。企業等に所属していることが前提なので、在学中は対象にならない。地域と関わる入口としては、学生を対象にした別の仕組みを使うことになる。就職後に同じ地域と関わり続ける道が制度として用意されている、と見ておくのが実際に近い。
同じ自治体と何年も続けられるか。任期は6か月から3年の範囲で設定されている。3年を超えて関わる場合は制度の外になるので、自治体が独自に予算を立てるか、別の契約の形に移すことになる。長く続けたいなら、2年目のうちにその先の形を相談しておくほうがよい。
提案した企画の費用は自分で持つことになるのか。要綱には、起業人が発案・提案して自治体が実施した事業の経費も措置の対象として挙げられている。上限は1人あたり100万円で、措置率は0.5である。旅費・謝金や会場の借上費などが対象で、備品の購入と食料費は除かれる。自腹を切る前に、この枠が使えるかを確かめたい。
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