教育の仕事に進んだのは、78人だった
公営塾の立ち上げや高校の魅力化に関わって任期を終えた人が、そのまま教育の側に残ることがある。その人数が公表されている。総務省が令和8年4月24日に公表した令和7年度の地域おこし協力隊に係る調査結果では、直近5年間に任期を終えて活動地と同じ市町村に定住した5,038人のうち、雇われて働くことを選んだ1,753人の内訳が出ている。そのなかで「教育業」に進んだのは78名である。
1,753人の中では、行政関係の480名、観光業の176名、農林漁業の138名、地域づくり・まちづくり支援業の99名に次ぐ5番目の規模にあたる。医療・福祉業の72名、製造業の58名よりは多い。割合にすると4.4%で、大きな塊ではないが、毎年二十人前後が同じ道をたどっている計算になる。
少ないと感じるかもしれない。ただし分母の取り方に注意したい。この78名は「活動地と同じ市町村に定住し、かつ雇われる形を選んだ人」に限った数である。近隣の市町村に移った1,125人や、自分で教室を開いた人はここに入っていない。教育で地域に残る人の総数は、78という数字より大きい。
入口は一つではなく、立場が四つに分かれる
教育の仕事と言っても、雇われ方によって必要な準備が変わる。公表資料から読み取れる入口を、立場ごとに並べると見通しがよくなる。
| 入口 | 人数の目安 | 立場 | 出どころ |
|---|---|---|---|
| 学校や教育事業者に雇われる(教育業) | 78名 | 被用者 | 総務省・定住状況等調査 |
| 自治体職員や集落支援員として教育に関わる | 行政関係480名の一部 | 任用 | 総務省・定住状況等調査 |
| 地域学校協働活動推進員等として委嘱される | 全国で35,246人 | 委嘱 | 文部科学省・実施状況調査 |
| 自分で教室や教育事業を起こす | 起業2,296名の一部 | 事業者 | 総務省・定住状況等調査 |
三番目の推進員等は、文部科学省が令和7年5月1日現在でまとめた調査の数字である。地域と学校のあいだで企画や調整を担う役で、全国に35,246人が配置され、前年から633人増えた。そのうち15,174人は学校運営協議会の委員も兼ねている。配置している自治体は1,532で、全体の84.5%にあたる。
任期中に地域の学校と関わりを持った隊員が、任期後にこの役を受けるという流れは制度の上では成り立つ。ただし推進員等の多くは地域住民やPTA経験者が担っており、報酬の額も自治体ごとに異なる。これを生計の柱にするのは難しく、他の仕事と組み合わせる形が現実的である。
学校側の受け皿は、この5年で明確に広がった
外から来た人が学校に関わる道が開いているかどうかは、制度の整備状況で測れる。文部科学省の令和7年度の実施状況調査では、学校運営協議会を置く公立学校が22,009校に達し、導入率は64.9%になった。前年から1,856校増え、6.2ポイント上がっている。導入している自治体は1,523で、84.1%を占める。
地域学校協働本部の側は、整備されている公立学校が22,693校で66.9%、本部の数は14,044本部である。小・中・義務教育学校に限れば整備率は77.4%まで上がる。協議会と本部の両方がそろっている学校は17,481校で51.6%、こちらも前年から1,855校増えた。半分を超えたのは大きな変化である。
数字が示しているのは、学校の外の人を迎える窓口が制度として用意済みだということである。任期中に「学校に行っても相手にされない」と感じるなら、窓口の所在を知らないか、窓口がまだ動いていないかのどちらかに近い。制度の条文と関わり方の手順は教育ボランティアの入り口に整理した。
雇われる道と、自分で始める道のどちらが太いか
定住した5,038人のなりわいを見ると、起業が2,296名で45.6%、雇われて働く就業が1,753名で34.8%、就農・就林が583名で11.6%、事業承継が70名で1.4%だった。数の上では自分で始める人のほうが多い。
ところが起業の内訳を見ると、教育という分類は出てこない。公表されているのは飲食サービス業308名、美術家やデザイナー・写真家・映像撮影者217名、宿泊業181名、小売業174名、観光業130名、6次産業101名、出版・広告業80名、まちづくり支援業80名といった並びである。教育系の事業は、この一覧の下に散っているか、まちづくり支援業の中に含まれていると見るのが自然だろう。
読み方としては、教育を事業として立てた人の数はまだ分類に出るほど固まっていない、ということになる。先行事例が少ない領域に入ることになるので、収入の見込みは楽観しないほうがよい。就業と起業をどう比べるかは協力隊のあと行政側に回る480人と卒業後の進路一覧に数字を並べてある。
任期の3年を、準備の期間として使うなら
令和7年度の隊員は8,196人で、前年度から286人増えた。取り組む自治体は1,187団体あり、受け入れが可能な1,461団体の約81%に広がっている。年齢の構成を見ると20歳から29歳が33.6%、30歳から39歳が30.1%で、6割強が20代と30代である。学生からそのまま進む人も、この層に含まれる。
教育の方向を考えるなら、任期中に手をつける順番がある。まず活動する市町村で学校運営協議会が置かれているかを確かめる。次にその協議会の委員や推進員に会って、地域の学校が外部に何を頼みたがっているかを聞く。学習支援の需要なのか、キャリア教育の講師なのか、放課後の居場所づくりなのかで、必要な資格も人の縁も変わってくる。
そのうえで、免許の要否を早めに切り分けたい。学校の授業を担うなら教員免許が必要になるが、公営塾の講師や放課後の支援、総合的な学習の時間への協力には免許が要らない形も多い。免許の取得に時間を割くのか、免許が不要な領域で経験を積むのかという判断は、任期の2年目までに決めておくと間に合う。学生のうちから地域と関わって見通しを立てる方法はFLASPOのような仕組みを通じても探せる。
よくある質問
教員免許がないと教育の仕事には就けないのか。学校の正規の授業を担当するには免許が必要だが、公営塾の指導員、放課後子ども教室の支援員、地域学校協働活動推進員などは免許を前提としていない。自治体が独自に置く学習支援の職も、募集要項で免許を求めない例がある。まず地元の募集条件を確かめるのが早い。
教育業78名という数は増えているのか。今回の調査は直近5年間に任期を終えた人を対象にした集計で、年度ごとの推移としては公表されていない。累計で任期を終えた隊員は15,045人になり、前回の集計から2,363人増えている。母数が増えているので、教育に進む人の実数も増える方向にあると考えられる。
任期中に教育の活動をしていないと不利になるか。不利ではないが、縁の作り直しに時間がかかる。学校との関係は人を介してできていくもので、任期の最後の数か月で作れるものではない。別の分野で活動している場合は、公民館や図書館、子ども食堂のような学校の周辺から入るほうが現実的である。
同じ市町村に残らないと教育の仕事は見つからないのか。定住した人のうち同一市町村内が5,038人、近隣市町村が1,125人で、近隣に移った人も「同じ地域に定住」として数えられている。学校は市町村ごとに置かれているので、隣の市町村に職を得て住み続ける形は十分ありうる。通える範囲で探すのが実際の動き方に近い。
収入はどれくらい見込めるのか。公表資料に教育業の収入は出ていない。公営塾の指導員は会計年度任用職員として採用される例が多く、その場合の条件は自治体の給与条例に沿う。推進員等は委嘱で謝金の形になることが多い。複数の仕事を組み合わせる前提で、任期中に支出の実額を把握しておくと判断しやすくなる。
本文で用いた隊員数と定住状況の数値は、総務省が公開している資料に掲載されている。
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