企画書に「留学生と一緒に」と書く前に
ゼミやサークルで地域の企画を立てるとき、多文化共生やインバウンドを軸に据える案はよく出る。留学生に話を聞いて、地域の店の多言語対応を手伝う。筋は通っているのだが、その地域に留学生が何人いるのかを確かめないまま書かれた企画書は、相手探しの段階で止まりやすい。
人数は公表されている。独立行政法人日本学生支援機構が毎年5月1日時点で行う外国人留学生在籍状況調査に、地方別と都道府県別の人数が載っている。令和8年5月に公表された令和7年度の結果を開くと、企画の前提にすべき偏りがはっきり出てくる。
地域プロジェクトの立ち上げそのものの順番は学生が地域プロジェクトを始める順番で扱っている。ここでは相手が何人いるかという一点に絞って、調査の数字を読む。
全国で40万人を超え、1年で2割増えた
令和7年度の調査結果によれば、令和7年5月1日現在の留学生数は408,069人。前年比で71,361人、21.2パーセントの増加である。1年で7万人増えるという動きは、企画を立てる側にとっては追い風に見える。ただし、その7万人がどこで何を学んでいるかを見ると、印象は変わる。
在学段階別の内訳はこうなっている。日本語教育機関が140,174人で最も多く、次が専修学校の専門課程で106,829人。大学の学部が92,442人、大学院が60,013人と続く。短期大学は4,138人、準備教育課程は3,946人、高等専門学校は527人である。
つまり、留学生の多数派は大学にいない。日本語教育機関と専修学校を合わせると246,000人を超え、全体の6割に達する。大学の構内で声をかけて相手を探そうとすると、最も人数の多い層にはそもそも届かないことになる。
増え方にも偏りがある。国地域別の上位5か国を見ると、中国が131,097人で最多だが前年比6.2パーセント増にとどまる一方、ネパールは64,816人から100,239人へ54.7パーセント増、ミャンマーは16,596人から29,413人へ77.2パーセント増、スリランカも12,269人から17,626人へ43.7パーセント増えている。ベトナムは43,366人で7.5パーセント増。「留学生」と一括りにした企画が、実際の顔ぶれとずれていく速さがここに出ている。
半分が関東に集まっている
地方別の人数を並べると、企画の立てやすさが地域によってまるで違うことが分かる。事務局の本部が所在する都道府県にまとめた集計では、次のような分布になる。
| 地方 | 留学生数(令和7年5月1日) | 構成比 | 前年 |
|---|---|---|---|
| 関東 | 207,745人 | 50.9% | 172,201人 |
| 近畿 | 88,944人 | 21.8% | 73,554人 |
| 九州 | 42,187人 | 10.3% | 33,171人 |
| 中部 | 37,201人 | 9.1% | 29,841人 |
| 中国 | 13,961人 | 3.4% | 12,002人 |
| 東北 | 9,666人 | 2.4% | 8,574人 |
| 北海道 | 5,646人 | 1.4% | 5,119人 |
| 四国 | 2,719人 | 0.7% | 2,246人 |
関東だけで半分を超える。都道府県では東京都が144,661人で、大阪府40,498人、福岡県25,683人、京都府23,410人、兵庫県19,295人が続く。一方で四国4県の合計は2,719人しかなく、全国の0.7パーセントである。高知県は335人、山形県は336人、鳥取県は423人。
地方の中でも集中は起きている。九州42,187人のうち福岡県が25,683人を占め、地方内の6割がこの1県にある。大分県4,046人、沖縄県4,489人、長崎県2,773人が続き、宮崎県は722人である。中国地方13,961人も広島県5,839人と岡山県4,583人で7割を超え、島根県は699人にとどまる。東北9,666人では宮城県が6,293人で、残る5県を合わせても3,400人に届かない。「九州だから留学生が多い」とは言えず、県まで下げて見る必要がある。
中部37,201人も愛知県16,641人が中心で、静岡県6,096人、岐阜県3,347人と続く。新潟県2,633人、石川県2,621人、山梨県2,176人、長野県2,168人はほぼ同じ水準に並び、富山県は637人である。近畿88,944人では大阪府40,498人と京都府23,410人に集まり、滋賀県は763人。隣県どうしでも桁が変わるため、広域で組む企画は人数の出所をそろえておきたい。
この差は、企画の組み立て方を変える材料になる。数百人規模の県で「留学生にアンケートを配る」と書けば、母集団の小ささが先に問題になる。逆に、一人ひとりに深く話を聞く設計なら、人数の少なさは障害にならない。数を先に見ておけば、手法の選び方で迷わずに済む。
同じ県の人数が、数え方で変わる
調査をそのまま引用する前に、もう一つ確かめておきたいことがある。集計表には地方別・都道府県別の表が二通り載っている。一つは大学の学部等が複数の都道府県にある場合に事務局本部の所在地へまとめた集計、もう一つは留学生が実際に学んでいる校舎の所在地ごとの集計である。
どちらを使うかで県の数字が動く。東京都は本部で数えると144,661人、校舎で数えると140,029人。神奈川県は逆で、本部では11,931人だが校舎では16,732人になる。千葉県も16,192人と18,807人で差が開き、群馬県は6,808人と4,075人で大きく違う。本部が東京にある大学が郊外にキャンパスを置いている構図が、そのまま数字に出ている。
地域で動く企画にとって意味があるのは、後者である。実際に通っている人がその土地にいるかどうかが、連絡の取りやすさを決める。引用するときは、どちらの表から取った数字なのかを書き添えておきたい。出典の精度は、コンテストや学内の審査でも最初に見られる部分である。
大学を窓口にして地域と組む制度の側から入りたい場合は、地方創生で大学と組む事業で認定や交付の仕組みを整理している。
人数の少ない地域でどう組むか
数百人の県で企画を立てるなら、探す先を大学の外へ広げるのが現実的である。全国の内訳が示すとおり、最も人数の多い区分は日本語教育機関と専修学校の専門課程だった。県内にそうした学校があれば、大学より多くの在籍者がいる場合もある。調査の集計表は学校種別の人数も県ごとに載せているので、企画書を書く前にその県のページを見ておくと、相手の居場所の見当が立つ。
もう一つの手は、人数ではなく滞在の形に注目することである。調査は在留資格「留学」を持つ学生を対象にしており、学位取得を目的としない短期留学生も含む。半年や1年で入れ替わる層が混ざっているということは、関わりを単年で終わらせない設計を先に考えておく必要があるという意味にもなる。引き継ぎの資料を最初から作っておく企画は、少人数の地域でこそ効く。
地域と学生をつなぐ入口を増やしたい段階なら、FLASPOのように学生向けの企画や公募を集めた場も相手探しの手がかりになる。大学内の国際交流窓口と、県の国際交流協会、そして日本語教育機関。この三つを当たれば、数百人の県でも接点は作れる。
まとめると、留学生と組む企画の成否は熱意より先に分布で決まる部分がある。全国408,069人という総数ではなく、自分が動く県の数字を見る。集計の仕方を確かめる。大学の外も数える。この三つを踏めば、企画書の前提が崩れにくくなる。
よくある質問
この調査の数字はいつ時点のものなのか。各年の5月1日現在である。令和7年度の結果は令和8年5月に公表された。年度の途中で入学や卒業があるため、秋以降に企画を動かす場合は半年以上前の状態を見ていることになる点を踏まえておきたい。
調査を実施しているのはどこなのか。独立行政法人日本学生支援機構である。調査結果の注記によれば、2003年度までは文部科学省が実施していたが、2004年4月の機構設立に伴って移管された。対象は出入国管理及び難民認定法が定める在留資格「留学」で学ぶ外国人学生である。
日本語教育機関の学生も調査に入っているのか。注記では、2009年7月公布の法改正により2010年7月1日付けで在留資格の「留学」と「就学」が一本化されたことに伴い、2011年度から調査対象になったとされている。平成26年度からは高等教育機関と日本語教育機関の合計を留学生数としている。
大学院生と学部生で分けて見たほうがよいのか。企画の中身によって変わる。令和7年度は大学院が60,013人、学部が92,442人で、前年度比の増加率は大学院3.1パーセント、学部5.7パーセントだった。研究テーマとして地域を扱う相手を探すなら大学院、手を動かす仲間を探すなら学部という分け方が目安になる。
県別の数字はどこで確認できるのか。調査結果のページから集計表が公開されており、地方別・都道府県別の表が二通り収められている。学校種別の内訳も同じ資料にある。企画書で引用するなら、表の番号と集計方式まで書いておくと、読む側が確かめ直せる。
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