地域の大人が学校に入る仕組み|公立18,135校が置いた協議会を読む

校長が書いた方針を、地域の人が承認する

校長がまとめた学校運営の基本方針に、保護者や地域住民が「承認」の判断を下す。公立学校にはそういう会議体が置かれている。地方教育行政の組織及び運営に関する法律第47条の5にもとづく学校運営協議会で、これを設置した学校をコミュニティ・スクールと呼ぶ。

文部科学省のコミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的推進という資料に、協議会の機能が三つ挙げられている。基本方針の承認、学校運営に関する事項について教育委員会または校長に意見を述べること、教職員の任用について教育委員会に意見を述べること。委員は10〜15人程度で、地域住民、保護者、地域学校協働活動推進員などが入る。

注意しておきたいのは、教育活動を実施する権限と責任は校長が持ったままだという点である。協議会は学校の意思決定を代わりに行う場ではない。それでも「承認」という言葉が入っているぶん、委員の発言には責任がついてくる。地域の側が当事者として座る設計になっている。

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公立34,687校のうち18,135校

広がり方を数で見ておく。令和5年5月1日時点で、学校運営協議会が置かれているのは18,135校である。母数は公立の幼稚園から特別支援学校までの34,687校で、割合にすると52.3%になる。前年度から2,914校増え、導入率は9.4ポイント上がった。平成17年4月1日時点では17校だったので、20年足らずで千倍を超えている。

地域住民が緩やかなネットワークを組んで学校を支える「地域学校協働本部」のほうは、21,144校に整備されている。協議会より3,000校ほど多い。校種によって事情が違うので、同じ資料の数字を並べておく。

校種 学校数 協議会の設置 設置率 協働本部の整備 整備率
幼稚園 2,437園 341園 14.0% 510園 20.9%
小学校 18,437校 10,812校 58.6% 13,487校 73.2%
中学校 9,010校 5,167校 57.3% 6,173校 68.5%
義務教育学校 202校 152校 75.2% 152校 75.2%
高等学校 3,449校 1,144校 33.2% 581校 16.8%
特別支援学校 1,117校 511校 45.7% 237校 21.2%
合計 34,687校 18,135校 52.3% 21,144校 61.0%
文部科学省「コミュニティ・スクール及び地域学校協働活動実施状況調査」(令和5年5月1日時点)より作成

小中学校は6割近くに達している一方、高等学校は33.2%、協働本部の整備は16.8%にとどまる。地域との接点が制度として用意されているのは、どちらかといえば小中学校の段階だということになる。

放課後の教室から、地域課題の調べものまで

協議会が協議する場だとすれば、実際に人が動くのは地域学校協働活動の側である。文部科学省が示す定義では、幅広い地域住民の参画を得て子どもの学びや成長を支え、あわせて「学校を核とした地域づくり」を目指す活動とされている。

中身は幅広い。放課後子供教室、学習支援の地域未来塾、授業補助や校内清掃、登下校の対応、部活動の補助。地域の防災活動や祭りへの参画、家庭教育支援、そして学びによるまちづくりや地域課題解決型学習、郷土学習も並ぶ。社会教育団体、文化・スポーツ団体、企業やNPO、PTA、子ども会、民生委員、消防団といった顔ぶれが関わる。

地域と学校をつなぐ役は地域学校協働活動推進員が担う。社会教育法第9条の7にもとづいて教育委員会が委嘱するコーディネーターで、協議会の委員を兼ねることもある。誰かが橋渡しをしないと、地域の人は「何をすればよいのか」がわからないまま終わる。推進員はそこに置かれた職である。

校長が実感した変化は、学校の外側に多い

導入した学校の校長に、どんな成果が得られたかを尋ねた調査がある。令和2年度の文部科学省委託事業「学校と地域の新たな協働体制の構築のための実証研究」で、肯定的な回答の割合が高い順に並ぶ。

成果として挙がった項目 肯定的な回答
学校と地域が情報を共有するようになった 89.0%
地域が学校に協力的になった 81.9%
特色ある学校づくりが進んだ 81.2%
子供の安全・安心な環境が確保された 77.0%
管理職の異動があっても継続的な学校運営がなされた 72.4%
教育課程の改善・充実が図られた 57.1%
児童生徒の学習意欲が高まった 49.4%
いじめ・不登校・暴力など生徒指導の課題が解決した 33.4%
出典は上記の文部科学省資料。コミュニティ・スクール導入校の校長が対象

上位に来ているのは情報共有と地域の協力で、どちらも学校と地域の関係そのものに関する項目である。いっぽう生徒指導の課題解決は33.4%で最も低い。会議体を置いたからといって子どもの困りごとが直接ほどけるわけではない、という読み方になる。関わりの経路ができることと、成果が出ることは別に数えたほうがよい。

卒業生が委員席に座ると、何が変わるか

同じ資料には自治体の実践も載っている。茨城県牛久市では、協議会の委員が校内の研究授業を参観し、授業後の研究協議に教師と一緒に入る。子どもの実態や指導の意図を共有したうえで、学校の教育目標と地域の課題を柱に教育課程を話し合う。牛久南中学校では、その話し合いを踏まえて地域活性化に取り組む内容を総合的な学習の時間の探究課題に据えた。

この市で起きた変化のうち、外から地域に関わる話として目を引くのは、一部の協議会が卒業生である大学生を委員として迎えた点である。資料は、若者の視点が入ったことで話し合いが活性化したと書いている。母校の運営に関する正式な会議体に席があるというのは、同窓会や単発のボランティアとは重みが違う。

北海道登別市では、民生委員や地域住民が委員に入り、不登校対策チームの情報を協議会に報告する体制をつくった。委員には守秘義務があるため、個別の家庭の状況まで共有できる。導入後の5年間で不登校の児童生徒数が約3割減ったと報告されている。学校の情報公開のために地域の大人を入れたのではなく、守秘義務を負う立場として巻き込んだ例である。

どの事例でも、関わりの入口は「子どもの学び」だった。地域に縁のある人が無理なく戻れる窓口として、学校は相当に強い。関係人口の議論では観光や副業が入口として語られがちだが、母校という接点はそれらより古くからある。関係人口の種類と分類を見ると、訪問系と非訪問系のどちらにも教育の場は置かれていない。制度の側では、まだ数えられていない関わりだということになる。

よくある質問

学生や社会人が、縁のある学校の協議会に関わることはできるのか。委員を任命するのは教育委員会なので、まず自治体の教育委員会か学校に問い合わせることになる。牛久市のように卒業生の大学生を委員にした例があるので、制度上できないわけではない。委員でなくても、地域学校協働活動の側なら授業補助や放課後子供教室の支援など参加の形が多い。

コミュニティ・スクールと地域学校協働本部は何が違うのか。前者は法律にもとづく会議体で、権限と責任を持って学校運営を協議する。後者は地域の人や団体による緩やかなネットワークで、活動を動かす側にあたる。両方そろえて進めるのが文部科学省の方針で、だから数も別に集計されている。

高校では使えないのか。設置率は33.2%で小中学校より低いものの、1,144校が置いている。義務教育学校は75.2%と最も高い。校種で差があるので、関わりたい学校の状況は個別に確かめるのが早い。

情報はどこで探せばよいか。文部科学省の学校と地域でつくる学びの未来というサイトに、調査結果や手引きがまとまっている。都道府県・市区町村別の実施状況もここから辿れる。地域と若者の関わり方を広く見たいときは関係人口はなぜ重要かや、FLASPOが扱っている地域プロジェクトの事例もあわせて見ておくと、学校以外の入口との比較ができる。


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