ふるさと起業家とは|寄附が初期投資に変わる仕組みと2,500万円の枠

起業の資金を、応援したい人から先に集める

地方で小さく事業を始めようとすると、売上が立つ前に出ていくお金が先に見える。店舗の改修、機械の購入、備品一式を並べれば、それだけで数百万円になる。この初期投資の部分を、自治体を通した寄附でまかなう仕組みが制度として用意されている。総務省が平成29年10月27日付の通知「ふるさと納税を活用した地域における起業支援及び地域への移住・定住の推進について」で立ち上げを示し、平成30年度に始まった「ふるさと起業家支援プロジェクト」である。

通知が掲げた目的は二つある。一つは、地方団体による地域の起業支援を促すとともに、ふるさと納税の仕組みを使って地域の外から資金を調達し、地域経済の好循環の拡大を図ること。もう一つは、ふるさと納税を活用する事業の内容を具体的に明示して募ることで、寄附文化の醸成を図ることだ。返礼品の魅力で寄附を集める流れとは別に、事業そのもので選ばれる募集をつくろうという設計である。

骨格は単純だ。自治体が、地域資源を使って地域課題の解決に資する事業を立ち上げる起業家を選び、その事業にクラウドファンディング型のふるさと納税を募る。集まった寄附を財源に、自治体が起業家へ補助を出す。寄附する側は通知の中で「ふるさと未来投資家」と呼ばれ、支援した事業の報告を受け取る相手として位置づけられている。寄附の使い道を分野から選ぶ一般的な形との違いは、ふるさと納税の使途10分野の読み方と並べると見えやすい。

募集中の地域コンテスト

読んだら、地域に行ってみよう

地域が出したお題に、オンラインでアイデアを応募できます。受賞すると、現地に無料で招待されます。

募集中の地域をすべて見る

寄附が起業家に届くまでに九つの段取りがある

起業家が自治体の窓口に行けば寄附が集まる、という作りにはなっていない。通知は事務の進め方を九段階で示しており、自治体と起業家が交互に動く形になっている。

段取り 動く主体 中身
1 地方団体 プロジェクトを周知し、起業家を募集する
2 起業家 事業内容と、寄附者に関心を持ってもらう工夫を提案する
3 地方団体 提案された事業を審査する
4 地方団体 ポータルサイト等でふるさと納税を募集する
5 寄附者 応援したい起業家の事業を選んで寄附する
6 地方団体 寄附を財源に補助し、独自の上乗せ補助があれば実施する
7 起業家 資金を使って事業を実施し、約束した工夫を実行する
8 起業家 補助に係る事業報告を自治体へ行う
9 地方団体 ふるさと納税の活用状況をウェブサイト等で公表する

出典は前掲の総務省通知。審査の項目として通知が挙げるのは、事業の公益性や採算性、地域の課題解決への寄与度、寄附者への定期的な事業報告の有無、自社製品の送付などがふるさと納税の趣旨に沿っているかである。外部有識者を交えて審査することが考えられるとも書かれている。思いつきを持ち込む場ではなく、公費を入れる相手として見られる場だと考えたほうがよい。

二段目の「工夫」は自由度が高い。通知は、定期的な事業報告のほか、自社製品の試供品等の送付、事業所見学への招待、起業が成功した際の新製品の贈呈を例に挙げ、内容は起業家の創意工夫に委ねるとしている。ただし事業報告については必ず行うものとする、と条件が付く。集めた後に黙っていることは制度の側が許していない。

補助の上限は、集まった寄附の額で決まる

このプロジェクトには、自治体が独自に上乗せして補助した分を国が支える仕組みが付いている。総務省は、起業家の事業立ち上げの初期投資費用について自治体が補助する場合に特別交付税措置を講じるとし、対象経費を三つの区分で示している。

経費の区分 対象になるもの
施設整備費 事業の遂行に必要な建物、建物付属設備および構築物に係る設計、工事監理、建築工事、修繕および購入(用地取得費を除く)
機械装置費 事業の遂行に必要な機械装置に係る設計、工事監理、修繕、購入およびリース・レンタル
備品費 事業の遂行に必要な備品の購入およびリース・レンタル

措置の内容は、対象経費に措置率0.5と財政力補正を掛けた額である。ここに上限が二重に掛かる。1事業あたりの対象経費は、ふるさと納税を財源に補助する金額または2,500万円のいずれか少ない額までとされている。つまり自治体がいくら手厚くしたくても、寄附で集まった額を超える部分は措置の対象外になる。寄附が100万円しか集まらなければ、上乗せ補助に対する措置も100万円の枠の中で考えることになる。

審査にかかる経費も措置の対象だ。起業家が提案した事業を審査する外部有識者への報酬等と、起業家の募集に要する経費が対象経費とされ、措置率は同じく0.5である。ただし自治体から起業家への補助そのものはこの枠に含めない、と線が引かれている。用地の取得費が施設整備費から外れていることと合わせて、どこまでが国の支えで、どこからが自治体の判断なのかが細かく決められている。

事業を指定して募る寄附は、いまどれくらい動いているか

この形がどれだけ使われているかは、ふるさと納税全体の統計から輪郭をつかめる。総務省が令和8年7月31日に公表したふるさと納税に関する現況調査結果(令和8年度実施)によると、令和7年度に寄附の使い道を選べる団体は1,749団体で全指定団体の98.2%を占める。ところが具体的な事業まで選択できる団体は586団体(32.9%)にとどまり、そのうちクラウドファンディング型を実施したのは516団体(29.0%)だった。プロジェクト総数は1,547事業、寄附金受入総額は333億円である。

分野別に見ると、使途として選べる「地域・産業振興」の受入額は995億円、該当する団体は1,141団体だった。ふるさと納税の総額が1兆3,314億円という規模であることを踏まえると、産業や起業に向かう資金はその中の一部にすぎない。全体の規模が地域に何を残すのかという論点は、ふるさと納税1兆3,314億円が地域に残すもので扱っている。

同じ調査には、事業を指定して集めた寄附が実際に店を生んだ例が載っている。広島県北広島町は、使われていない廃校を再生して地域の賑わいをつくる取組にふるさと納税を活用し、受入額1,737万円、達成率116%を記録した。コンサルタントとの協議を経て店舗化の工事を進め、地元食材を活かしたパン屋を開業している。令和7年度は出店等のイベントを計12回実施し、カフェの開業やサテライトオフィス事業の現地視察会も行い、総来客数は5,000人を超えた。寄附が設備になり、設備が営業になるまでの時間がここに出ている。

使う側が先に確かめておくこと

制度の説明を読むだけでは足りない点が三つある。第一に、募集があるかどうかは自治体ごとに違う。クラウドファンディング型そのものを実施している団体が516団体という段階なので、起業家の公募までやっている自治体はさらに限られる。住みたい地域、事業をやりたい地域の募集要項を直接見るところから始まる。

第二に、目標金額に届かなかったときの扱いである。通知は募集にあたって、募集期間、目標金額を設定する場合はその額と未達のときの取り扱い、関心を持ってもらうための工夫の内容、自治体が上乗せ補助をする場合はその旨、寄附者の個人情報を起業家へ提供する場合はその旨を明らかにすることを求めている。裏を返せば、未達でも寄附が返らない設計があり得るということで、募集ページでそこを読み落とすと話が食い違う。

第三に、資金の性格だ。これは出資ではなく補助であり、寄附者は株主でも貸主でもない。見返りは事業報告や試供品といった範囲に収まり、配当や返済は発生しない。若い世代の地域での起業がどれくらい起きているかは地域起業と若者の開業率の差にまとめた。地域での挑戦と学生の関わりを扱うFLASPOの現場でも、資金の出どころと引き換えに負う約束を先に確かめた人のほうが、立ち上げの後で動きやすい。

よくある質問

ふるさと起業家支援プロジェクトは誰でも申し込めるのか。申し込み先は国ではなく自治体である。通知は自治体がプロジェクトを周知して起業家を募集する段階から始まる形を示しており、事業分野を限定せずに募る方法と、地域課題に資する分野を示して募る方法の両方が考えられるとしている。募集の有無と条件は自治体によって異なる。

集まった寄附はそのまま受け取れるのか。受け取るのは自治体からの補助という形で、寄附が直接入金されるわけではない。自治体が寄附を財源に補助し、独自の上乗せ補助を行う場合はそれも加わる。使った後は補助に係る事業報告を自治体へ行う義務がある。

初期投資以外の費用にも使えるのか。特別交付税措置の対象経費として示されているのは施設整備費、機械装置費、備品費の三区分で、用地取得費は除かれている。人件費や広告費がどう扱われるかは通知に区分の記載がないため、自治体の補助要綱を確認する必要がある。

寄附した側に税の優遇はあるのか。事業を指定して寄附しても、制度上は自治体への寄附として扱われる。クラウドファンディング型は募集の仕方を変えたもので、寄附金税額控除の根拠が別になるわけではない。

似た名前の制度と混ざりやすい。地域の起業を支える仕組みには、任期を終えた隊員が使える補助のように、別の制度に属するものもある。原資がふるさと納税なのか、国の補助金なのか、自治体の単独事業なのかで要件も報告の相手も変わるので、名前ではなく原資で区別するのが早い。


アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

FLASPO

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。

FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。

賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。

コンテストを探す▶︎

FLASPOで募集中のコンテスト

自治体や企業が出したお題に、学生・若者がオンラインでアイデアを応募できます。募集中のものも、これまでのお題と結果も、一覧で見られます。