農泊はどの県に多いのか|全国701地域を都道府県別に並べて読む

701という数字は、何を数えたものか

「うちの県にも農泊はあるのか」と調べ始めると、すぐに数え方の問題にぶつかる。農家民宿の軒数を挙げるサイトもあれば、体験プログラムの数を並べるサイトもある。国が公式に数えているのは、そのどちらでもない。農林水産省が「農泊地域」と呼ぶのは、農山漁村振興交付金による農泊推進の支援に採択された地域のことで、令和7年度末時点で全国701地域ある。

単位が「軒」ではなく「地域」であることに注意がいる。ひとつの農泊地域は、市町村や観光協会、農協、宿泊事業者などでつくる協議会が母体になっている。つまり701という数は、宿の数でも体験の数でもなく、受け入れの体制を組んだ協議会の数である。宿泊施設の数でいえば、令和6年度の673地域で合わせて5,742軒あり、そのうち古民家や廃校を活用したものが561軒、およそ1割を占める。

地域数は年を追って増えてきた。平成29年度の206地域から、令和2年度554地域、令和4年度621地域、令和5年度656地域、令和6年度673地域と積み上がり、令和7年度末で701地域に届いた。8年で3倍を超えた計算になる。交付金の採択が積み上がった結果なので、この数字は「盛り上がっている地域の数」ではなく「国の支援を受けて体制を整えた地域の数」として読むのが正確だ。

募集中の地域コンテスト

読んだら、地域に行ってみよう

地域が出したお題に、オンラインでアイデアを応募できます。受賞すると、現地に無料で招待されます。

募集中の地域をすべて見る

ブロック別に並べると、関東が突出する

701地域を地方農政局の区分で分けると、最も多いのは関東の144地域である。次が中国四国の109地域、九州の102地域と続く。意外に映るかもしれないが、農泊の分布は「農業が盛んな地方ほど多い」という素朴な予想とはずれる。

ブロック 地域数 内訳(都道府県別)
関東 144 長野24/千葉24/静岡21/山梨16/栃木13/群馬12/神奈川11/茨城9/埼玉7/東京7
中国四国 109 岡山21/島根17/香川17/広島16/山口10/鳥取8/愛媛8/高知7/徳島5
九州 102 熊本25/鹿児島23/福岡19/長崎11/大分11/宮崎7/佐賀6
東北 92 宮城26/岩手16/秋田13/福島13/青森12/山形12
北陸 66 新潟27/石川16/福井12/富山11
近畿 64 兵庫15/京都14/奈良14/和歌山9/滋賀7/大阪5
北海道 57 北海道57
東海 52 岐阜23/三重21/愛知8
沖縄 15 沖縄15

ブロックの切り方にも癖がある。農林水産省の区分では、山梨・長野・静岡が関東に入り、岐阜・愛知・三重が東海にまとまる。関東が144地域と大きく出るのは、この3県を抱え込んでいることが効いている。ブロックの合計だけを見て「首都圏に農泊が多い」と読むと、実態を取り違える。

県単位で見える、三つの顔

都道府県を一列に並べ直すと、順位の上位は北海道57、新潟27、宮城26、熊本25、長野24、千葉24、鹿児島23、岐阜23、岡山21、静岡21、三重21となる。北海道は一つの道で近畿ブロック全体に迫る規模を持つが、面積を考えれば密度としては高くない。

この並びは、おおまかに三つの顔に分かれる。ひとつは新潟・宮城・岩手のような、水田と漁村の両方を抱える地域。次が長野・岐阜・山梨のような山間部で、古民家や林業の体験が組みやすい。三つめが千葉・静岡・神奈川のような、大都市から日帰りでも行ける距離にある地域である。千葉24という数字は、首都圏の近さが受け入れの動機になることを示している。

逆に少ないほうを見ると、大阪5、佐賀6、徳島5、滋賀7、埼玉7、東京7、高知7、宮崎7と並ぶ。ここで目を引くのは、東京都にも7地域あることだ。島しょ部や西多摩の山間部が入っており、都市の県だから農泊がないわけではない。数の少なさは農地の少なさだけでなく、協議会をつくる体制が整ったかどうかにも左右される。

地域数と、泊まった人の数は別の話

地域数が多い県ほど人が来ているとは限らない。全国の農泊地域での延べ宿泊者数は、令和6年度で867.6万人泊だった。内訳は国内が792.7万人泊、外国人が74.8万人泊で、インバウンドの割合は8.6%にあたる。令和2年度には391万人泊まで落ち込んだところからの回復で、令和11年度に1,200万人泊という目標が置かれている。

単価の面では課題が残る。令和6年度末時点で農泊地域の平均宿泊費は13,196円だったのに対し、観光全体の1泊あたり宿泊費は18,940円である。体験プログラムの平均料金は3,442円。安く泊まれるのは利用者には利点だが、受け入れ側の収益という点では、滞在を長くするか内容を厚くするかの工夫が要る。

受け入れの環境にも差がある。同じ資料は、Wi-Fiや洋式トイレの整備は進んできたものの、外国語対応やオンライン予約サイトへの登録といったソフト面の充実が必要だと課題に挙げている。宿泊施設の総数は673地域で5,742軒、そのうち古民家や廃校を活用したものが561軒という構成なので、設備も体験の内容も一様ではない。地域数だけを見て「全国どこでも同じように泊まれる」と考えると、現地で戸惑うことになる。地域ごとの受け入れ内容の違いは農業体験の種類と選び方|期間・作業内容・受け入れ先で比べるでも整理している。

一覧から、行き先を絞るまでの順番

分布を把握したあと、実際に行き先を決めるには三つの段階を踏むとよい。第一に、自分が動ける範囲のブロックを決める。公共交通で行くのか車なのかで、候補はかなり絞られる。第二に、その県の中で何を体験したいかを決める。田植えや稲刈りなのか、林業や茅葺きなのか、漁業なのかで受け入れ先は変わる。

第三に、協議会の規模と受け入れ実績を見る。農泊地域は協議会単位なので、問い合わせ先は宿ではなく協議会になることが多い。農林水産省の資料には、滋賀県栗東市の奥こんぜ農泊推進協議会や京都府南丹市の美山観光まちづくり協会、北海道石狩市の浜益農泊推進協議会、長野県飯山市の信州いいやま観光局といった受け入れに積極的な団体が挙げられており、提供できる体験の内容まで書かれている。

学生が関わる道も開いている。意欲的な農泊地域のうち65%が教育旅行の受け入れに積極的で、企業研修の受け入れは40%、地域への貢献意欲のある人材の呼び込みは44%が意欲を示している(回答303地域)。ゼミやサークルの単位で相談できる余地があるということだ。地域と若者をつなぐ企画の作り方はFLASPOの取り組みでも扱っている。分布の全体像は農泊で働きながら滞在する|農業ワーケーションの受け入れ673地域の実像とあわせて読むと輪郭がはっきりする。

よくある質問

農泊地域の一覧はどこで確認できるか。農林水産省の都市農村交流課がまとめた農泊をめぐる状況について(令和8年8月13日時点)に、都道府県別の地域数が載っている。地域名そのものの一覧は、同省の農泊推進のページや各地方農政局の公表資料から追える。

農泊地域でないところには泊まれないのか。そんなことはない。農泊地域はあくまで交付金の採択を受けた協議会の区域を指すもので、それ以外の農家民宿や民泊に泊まることはできる。ただし国の支援を受けた地域は、体験の組み立てや相談窓口が整っていることが多い。

どうして都道府県別の数字が資料によって違うのか。集計の時点が違うためである。令和6年度末は673地域、令和7年度末は701地域で、1年で28地域増えた。年度をまたいだ資料を混ぜると数が合わなくなるので、引用するときは時点を必ず添えたい。

古民家に泊まれる地域はどれくらいあるのか。国の支援で整備された古民家の宿泊施設は、平成29年度の11軒から令和6年度には累計123軒に増えた。古民家と廃校施設を合わせると561軒で、総宿泊施設数5,742軒のおよそ1割にあたる。数としては少数派なので、早めの予約が要る。

大学のゼミで利用することはできるか。農林水産省は令和8年2月に「大学と農泊地域の連携事例集」を公表しており、ゼミやサークルのフィールドワークの受け入れが想定されている。岩手県遠野市の団体のように、少人数のインターンシップや数日のゼミ活動をコーディネートしている地域もある。


アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

FLASPO

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。

FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。

賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。

コンテストを探す▶︎

FLASPOで募集中のコンテスト

自治体や企業が出したお題に、学生・若者がオンラインでアイデアを応募できます。募集中のものも、これまでのお題と結果も、一覧で見られます。