空き店舗は減っているのに、衰退の実感だけが残っている
駅前のアーケードを歩くと、昼でも半分の店が閉まっている。地方創生の失敗を語るときに必ず引かれる風景で、商店街に補助金を入れてイベントを打っても戻らなかった、という話に落ち着くことが多い。ところが全国の数字を開くと、空き店舗そのものは増えていない。
商店街実態調査は昭和45年から続く調査で、令和6年からは全国商店街振興組合連合会が中小企業庁の協力を得て実施している。令和6年度の報告書によると、1商店街あたりの平均空き店舗率は11.30パーセントだった。平成30年度の13.77パーセント、令和3年度の13.59パーセントから、2.29ポイント下がっている。空き店舗率が10パーセントを超える商店街の割合も、43.3パーセントから36.5パーセントへ減った。1商店街あたりの空き店舗数は平均4.52店で、前回の5.49店より1店近く少ない。
それでも体感は変わらない。令和7年度の簡易調査では、現在の景況を「繁栄している」と答えた商店街が4.4パーセント、「繁栄の兆しがある」が4.1パーセントで、合わせても1割に届かない。一方で「衰退している」が30.3パーセント、「衰退の恐れがある」が29.7パーセントと、6割が下り坂だと答えている。来街者数も、1年間で減ったが37.3パーセント、増えたが14.0パーセントだった。空きが埋まっても人が戻らない、という形である。
店が閉まる理由の半分は、客の数と関係がない
なぜ閉まるのかを当事者に聞いた結果を見ると、見立てがずれていたことがわかる。令和7年度の調査では、過去1年間に退店や廃業した主な理由として、商店主の高齢化と後継者の不在が52.9パーセントで最も多く挙がった。次が売上不振や廃業の50.8パーセント、三番目が商店主の健康上の理由や死亡の26.9パーセントである。
売上が落ちて畳んだ店と、売れていても継ぐ人がいない店が、ほぼ同じ数だけ並んでいる。健康上の理由を足すと、人に起因する閉店のほうが多くなる。にぎわいを取り戻せば店は残るという前提は、ここで半分外れる。
商店街が自分たちの問題として挙げる項目も同じ方向を指している。令和6年度の調査で最も多かったのは経営者の高齢化による後継者問題で64.9パーセント。次に店舗等の老朽化が37.2パーセント、商圏人口の減少が31.1パーセントと続く。後継者問題が1位、老朽化が2位という並びは、前回も前々回も変わっていない。十年近く同じ答えが返り続けている。
空いた区画が埋まらないのは、借り手がいないからではない
閉まった店の後に誰も入らない理由は、一見すると需要の不足に見える。だが貸し手の側の事情を聞いた集計では、別の景色が出てくる。空き店舗がある2,601商店街の回答では、店舗の老朽化が40.4パーセント、所有者に貸す意思がないが38.1パーセント、家賃の折り合いがつかないが26.6パーセントの順だった。
二番目の項目が重い。4割近い商店街が、そもそも貸す気のない区画を抱えている。住居が上にあって他人を入れたくない、物置として使っている、相続の整理がついていない、といった事情は、来街者を増やしても解けない。老朽化も同じで、直す費用を出せる所有者がいなければ、借りたい人がいても契約に届かない。
商店街が挙げる問題と、空き区画が埋まらない理由を並べると、どちらも建物と人の世代交代に寄っている。
| 設問 | 1位 | 2位 | 3位 |
|---|---|---|---|
| 商店街が抱える問題 | 経営者の高齢化による後継者問題 64.9% | 店舗等の老朽化 37.2% | 商圏人口の減少 31.1% |
| 空き店舗が埋まらない理由(貸し手側) | 店舗の老朽化 40.4% | 所有者に貸す意思がない 38.1% | 家賃の折り合いがつかない 26.6% |
| 退店・廃業した主な理由 | 商店主の高齢化・後継者の不在 52.9% | 売上不振・廃業 50.8% | 商店主の健康上の理由・死亡 26.9% |
出典は令和6年度と令和7年度の商店街実態調査である。三行とも、集客の前の段階でつまずいていることを示している。
打たれている手は祭りに寄り、継承には届いていない
では商店街は何をしているか。令和6年度の調査で取組中の事業を聞くと、祭りやイベントが63.6パーセントで最も多い。防災と防犯が40.5パーセント、環境美化やエコ活動が36.0パーセント、ホームページやSNSを使った情報発信が30.9パーセントと続く。年間の総事業予算額は平均829万円である。
一方で、後継者問題があると答えた商店街にその対策を聞くと、策は講じていないが89.4パーセントを占めた。後継者候補へ教育を実施しているのは3.2パーセント、外部から後継者を募集しているのは2.1パーセントにとどまる。空き店舗対策や新規出店支援、起業支援を検討中と答えた商店街も13.6パーセントである。
ここに失敗の型がある。最も多く挙げられている問題に対して、九割が何もしていない。代わりに予算と人手が向かうのは、年に数回の催しと美化活動だ。どちらも意味のある活動だが、閉店の理由の半分を占める世代交代には触れない。シャッターが戻らないのは、打つ手が足りないというより、問題と手当てが別の場所を見ているからである。
構造としては、施設を作って終わる型とよく似ている。公共施設の整備が空振りする経緯はハコモノはなぜ失敗するのかで扱ったが、商店街でも同じことが起きる。目に見える成果が出やすい事業が先に選ばれ、所有者との交渉や承継の相談のように時間のかかる作業が後回しになる。
学生が入るなら、空いている側から入る
この数字は、外から関わろうとする人にとっては地図になる。祭りの手伝いは6割の商店街がすでに取り組んでいて、人手も型もある領域だ。そこに学生が加わっても、提案としては新しくない。空いているのは、検討中が13.6パーセントにとどまっている空き店舗対策や起業支援の側である。
後継者対策の実施率には地域差もある。立地環境別に見ると、観光地では後継者候補への教育と外部からの募集を合わせて12.3パーセントと最も高く、繁華街の7.4パーセント、ロードサイドの7.1パーセントが続く。つまり、来街者が多い場所では継ぐ人を探す動きが先に始まっている。逆に近隣型の商店街ほど、店舗の老朽化と貸す意思のなさが前に出る。
実際に動くときは、調べる順番を変えるだけで提案が変わる。何店空いているかではなく、その区画の所有者が貸す気があるかを先に聞く。イベントの集客数ではなく、翌年も店が残っているかを指標にする。空き店舗を使う企画の組み方は商店街活性化の学生プロジェクト、建物側の制度は空き家活用の学生プロジェクトで整理した。地域と関わる入口を探している段階なら、FLASPOのような学生と地域をつなぐ場から現地の人に当たるほうが早い。
よくある質問(FAQ)
空き店舗率が下がったのは、商店街が回復したからですか。そう読むのは早いです。空き店舗率は空き店舗数を全店舗数で割った値なので、店をやめた区画が住宅や駐車場に変わって商店街の名簿から外れると、率は下がります。景況や来街者の回答が改善していない以上、分母の側が動いた可能性を含めて見る必要があります。
調査はどこが実施しているのですか。昭和45年に中小企業庁が始めた調査で、令和6年度からは全国商店街振興組合連合会が中小企業庁と中小企業基盤整備機構の協力を得て実施しています。3年ごとの本調査と、その間に行う簡易調査があり、令和7年度は簡易調査でした。
シャッター街化は人口減少のせいではないのですか。商圏人口の減少は3番目に多い問題として挙がっており、無関係ではありません。ただ上位にあるのは後継者と建物の問題で、人口が同じでも継ぐ人がいなければ店は閉まります。人口の話に寄せると手の打ちどころが見えなくなります。
イベントは意味がないということですか。そうは言えません。6割の商店街が取り組んでいる以上、入口としての効果は認められています。問題は配分で、閉店理由の半分を占める世代交代に向けた動きが9割の商店街で止まっていることです。両方に手が入っているかを見てください。
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