地域おこし企業人は今どこにいるか|地域活性化起業人871人の内訳

名前が二度変わった制度を追いかける

自治体の募集ページを古い順にたどると、「地域おこし企業人」という見出しが残っている年がある。ところが最新の資料を検索しても、その言葉はほとんど出てこない。制度が消えたからではない。平成26年に始まったこの仕組みは、令和3年から「地域活性化起業人」に名を変えた。「企業」が「起業」になった一字違いなので、古い呼び名のまま探すと数年前の情報だけを拾って終わってしまう。

中身も一度に固まったわけではなく、段階的に広がっている。総務省地域自立応援課の制度資料によると、入り方はいま三つある。平成26年からある企業派遣型、令和6年度に加わった副業型、令和7年度に新設されたシニア型である。企業派遣型は自治体と企業が協定を結んで社員を送り出す形、副業型とシニア型は自治体と個人が契約を結ぶ形で、後者には企業を退職した人も入る。同じ制度名の下に、雇用関係の違う三つの経路が並んでいると考えると整理しやすい。

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871人はどこから増えてきたのか

最新の実績が出ている。総務省が令和7年4月4日に公表した令和6年度の状況では、起業人の人数は企業派遣型780人と副業型91人を合わせて871人、前年度から92人増えた。受け入れた自治体は439団体で、内訳は企業派遣型421団体、副業型45団体である。両方を使った自治体があるため単純な足し算にはならない。派遣元の企業は390社、こちらは60社増えている。

伸び方には段差がある。初年度の平成26年度は22人・17団体にすぎず、平成30年度で70人、令和2年度でも148人と、最初の7年は小さな制度だった。それが令和3年度に395人・258団体へ跳ね、令和4年度618人・368団体、令和5年度779人・449団体と続く。注意したいのは令和6年度で、人数は増えたのに団体数は449から439へ減っている。新しく始める自治体が増えたというより、すでに使っている自治体が2人目3人目を受け入れる段階に入ったと読むほうが実態に近い。

活躍先も偏っている。令和6年度の都道府県別では北海道が132人で突出し、福島44人、新潟40人、山形35人、長野34人、福岡34人が続く。一方で青森・東京・大阪はいずれも3人で、人口の多さと起業人の多さは一致しない。受け入れには自治体側の企画と企業との接点の両方が要るため、制度の使い方を知っている県に集まりやすい構造になっている。

受け入れ側が受け取る額と、課される条件

自治体がこの制度を選ぶ理由は、人件費の相当部分が特別交付税で措置される点にある。ただし金額も勤務の条件も類型ごとに違う。

類型 契約の形 勤務の条件 期間中の特別交付税の上限
企業派遣型 自治体と企業が協定を締結 受入自治体の区域内での勤務が月の半分以上 610万円/人(令和8年度から引き上げ)
副業型 自治体と企業の社員が契約 月4日以上かつ月20時間以上、滞在は月1日以上 報償費等100万円+旅費100万円(合計200万円/人)
シニア型 自治体と退職した個人が契約 副業型と同じ 副業型と同じ

これとは別に、受け入れの準備に要する経費が1団体あたり100万円まで、起業人が自ら発案・提案した事業の経費が1人あたり100万円まで、いずれも措置率0.5で見られる。任期は6か月から3年。受け入れられるのは三大都市圏外の市町村などで、対象は1,433市町村とされている。派遣元になれるのは三大都市圏の企業か、三大都市圏外の政令市・中核市・県庁所在市にある企業で、後者を使える受入団体は1,375市町村に絞られる。自分の関心のある町が対象かどうかは、ここで決まる。

類型ごとの使われ方にも差がある。871人のうち副業型は91人、使った自治体も45団体にとどまる。初年度としては立ち上がったほうだが、主役はいまも企業派遣型である。月の半分以上を現地で勤務するという条件は重いかわりに、交付税の上限は副業型の3倍を超える。腰を据えて一つの課題に当たらせたい自治体ほど、企業派遣型を選ぶ計算になる。

送り込まれた人は実際に何をしているか

肩書きだけでは中身が見えないので、分野別の内訳を見る。令和6年度の871人で最も多いのはDXで255人、全体の29パーセントを占める。次が観光振興・観光誘客対策・DMO設立等の189人で22パーセント、三番目が地域経済活性化・雇用対策・人材育成・企業誘致等の93人で11パーセントである。以下、地域産品の開発・販路開拓が63人、移住促進・都市農村交流が46人、脱炭素などのGXが35人と続く。農林水産は17人、教育は23人で、第一次産業や学校現場に入る人はまだ少数派だ。

前年度との比較を企業派遣型で見ると、動いた方向がはっきりする。DXは200人から238人へ38人増えた一方、観光振興等は216人から170人へ46人減っている。地域産品の開発も75人から59人へ落ちた。増えたのは中間支援機能に関する業務で、6人から22人へ3倍以上になっている。地域商社の立ち上げを支える役回りで、観光客を呼ぶ仕事から、地域の中に稼ぐ仕組みを据える仕事へ重心が移りつつある。受け入れる自治体の関心が、来訪者数から事業そのものへ動いているということでもある。

学生はこの制度のどこに立てるのか

結論から言えば、学生がそのまま起業人になる道はない。派遣されるのは企業の社員か、企業を退職した個人だからである。年齢構成を見ても、企業派遣型は40歳以上が約6割を占め、20代は98人で12.6パーセントにとどまる。副業型は30代から40代が6割で、こちらも若くはない。男女比は全体で男性713人・女性158人、女性は18.1パーセントである。この数字の並びは、制度が経験と人脈を持ち込む仕組みとして設計されていることを示している。

それでも関わりようはある。一つは時間差の経路で、都市部の企業に入った数年後に、会社の看板を背負って地方で働く選択肢が現実に存在すると知っておくこと。もう一つは地域側からの経路である。DXや中間支援の案件は地元の若手と組まないと進まないため、インターンや学生団体として同じ机に着く場面がある。任期や財源の考え方は20代30代が6割の地域おこし協力隊と比べると違いがつかみやすく、入口の選び方は協力隊を選ぶ前に見る数字にまとめてある。地域で働く人と出会う場はFLASPOのような窓口からもたどれる。

よくある質問

「地域おこし企業人」で検索しても制度のページが出てこないのはなぜか。令和3年に名称が「地域活性化起業人」へ変わったためで、現在の要綱や実績はすべて新しい名前で公表されている。古い記事を読むときは、どの年度の制度を指しているかを確かめるとよい。

副業型なら社会人1年目でも手を挙げられるか。制度上は企業に所属する社員が自治体と契約を結ぶ形なので年齢の下限はない。ただし勤務日数が月4日以上かつ月20時間以上、受入自治体での滞在が月1日以上という条件があり、勤務先の副業規定と移動時間の両方が通ることが前提になる。

企業派遣型と地域おこし協力隊はどこが違うのか。協力隊が個人として自治体に着任するのに対し、企業派遣型は企業と自治体の協定に基づいて社員が送られる。身分は企業に残り、任期は6か月から3年で、戻る場所があるという点が最も大きな差である。

受け入れている自治体を調べるにはどうするか。総務省が公表している活用事例集と、各自治体の募集ページが基本の資料になる。都道府県別の人数も毎年の資料に載るので、関心のある県の欄を見てから個別の市町村に当たると早い。数が少ない県は、制度そのものを使っていないこともある。


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