同じ三文字がついていても、中身は揃っていない
シラバスに「PBL」と書かれた科目を見つけて履修を迷う。この迷いの正体は、その三文字が指す範囲が広すぎることにある。PBLは課題解決型や問題解決型の学習を指す言い方で、題材の出どころまでは決めていない。企業から渡された商品開発の課題を扱う科目もPBLと呼ばれ、自治体の人口減少を扱う科目もPBLと呼ばれる。学生の時間の使い方が大きく変わるのは、その題材が誰のものかという点である。
「地域連携」と冠がつく場合、相手は自治体、商工会、観光協会、地域の事業者、学校などになる。ここで動く課題は、担当者が日々抱えているものがそのまま出てくることが多く、答えが先に決まっていない。企業の課題であれば決裁の順路がはっきりしているが、地域の課題は関係者が複数いて、誰の合意を取ればよいのかを学生側が探すところから始まる。つまずきやすいのはそこで、題材の難しさよりも、関係者の数が負荷になる。
どのくらいの大学に置かれているのか
文部科学省は毎年、大学の教育内容の改革状況を調べている。令和5年度の調査は国公私立792大学を対象とし、786大学が回答した(回答率99%)。その中でPBLに関係する項目は次のようになっている。
| 項目 | 該当する大学数 | 割合 |
|---|---|---|
| 能動的学修(アクティブ・ラーニング)を取り入れた授業を実際に行っている | - | 97.0% |
| ボランティア活動を取り入れた授業科目を開設している | 509大学 | 約67% |
| カリキュラム編成に当たり、企業等と連携する仕組みを設けている | - | 42.0% |
| 教育課程内で、企業の課題解決や製品開発等を題材とした授業科目を開設(PBLの実施) | 344大学 | 約45% |
| 教育課程外で、同じ題材の特別講義等を開設(PBLの実施) | 167大学 | 約22% |
注意したいのは、調査の項目名が「企業等と連携して実施する、企業の課題解決や製品開発等を題材とした授業科目の開設」であり、地域の課題を題材とする科目はこの数字に必ずしも含まれないことである。教育課程内の45%という割合は、企業連携型を数えたものと読むのが正確で、地域連携型の全国規模の件数はこの調査では別掲されていない。自分の大学に地域連携PBLがあるかどうかは、全国の統計ではなく履修要項と各学部の案内で確かめることになる。
数字に出にくいのは、置かれている場所がばらけているからである
地域と組む授業は、科目名に「PBL」と入らないことが多い。地域研究、フィールドワーク、実習、ゼミの演習、全学共通のプロジェクト科目といった名前で散らばり、担当も学部ごとに分かれる。そのため、大学全体でいくつあるのかを学生が把握しづらい。探すときの手がかりは三つある。シラバスの検索で地名や自治体名を入れること、全学共通科目の一覧をあたること、そして地域連携センターや社会連携課のような窓口の事業報告を見ることである。
窓口の存在は数字にも表れている。同じ調査では、学生のボランティア活動を支援するセンター等を設置している大学が38.2%で、令和元年度の36.7%から増えた。センターが置かれている大学なら、授業として履修できる科目と、正課外で関われる活動の両方を同じ場所で聞ける。授業として取るか、課外で関わるかは、使える時間と単位の必要量で決めればよい。国内で一定期間地域に滞在する形まで視野に入れるなら、地域留学という選択で経路ごとの違いを見ておくと判断材料が増える。
探し方でもう一つ効くのは、過去の受講者に当たることである。シラバスには分量が書かれていないため、現地に何回行ったのか、班の人数は何人だったのか、連絡のやり取りが平日の日中に発生するのかといった実務の感触は、受けた人しか持っていない。ゼミの先輩や学部の掲示に残る報告会の案内から辿れることが多い。同じ科目名でも担当教員が替わると進み方が変わるので、直近の年度の話を聞くほうが当てになる。
単位は時間の長さで決まっている
現地へ何度も出向く科目を取ると、拘束時間に対して単位が少ないように感じることがある。これは単位の計算方法を知ると整理できる。文部科学省の令和4年度大学設置基準等の改正に係るQ&Aは、1単位の授業科目について、授業時間外の学修時間も含めた45時間の学修を必要とする内容をもって構成することを標準とすることは維持しつつ、授業方法別に必要時間数を定めた規定は廃止したと説明している(文部科学省「令和4年度大学設置基準等の改正に係るQ&A」)。
同じQ&Aは、1コマの授業時間や実施回数、授業期間を各大学の判断で設定できるとし、授業時間を変更する場合でも1単位当たりに必要となる学修時間が引き続き確保されるよう留意が必要だとしている。いわゆる定期試験に相当する試験を時間数に含めることは想定されていない。現地での活動が長い科目は、事前学修と事後学修がその45時間の内側で設計されていると考えればよく、報告書の作成や振り返りが重い理由もここにある。履修前にシラバスで授業時間外の学修の指示を見ておくと、学期中の負荷が読める。
履修を決める前に確かめたい四つのこと
第一に、相手方が誰で、その課題を出しているのが担当部署か個人かという点である。担当課の事業として位置づけられていれば、学期をまたいでも継続する。第二に、成果物の形である。提案書で終わるのか、試作や実施まで含むのかで、必要な時間はまるで変わる。第三に、現地までの移動と費用を誰が負担するのかである。交通費が自己負担であれば、回数がそのまま出費になる。
第四に、終わった後に記録が残るかどうかである。報告会の資料や成果物が大学や自治体の側に公開されていれば、就職活動で経緯を説明する材料になる。逆に提出だけで終わる科目では、自分で記録を残しておく必要がある。関わり方の型をあらかじめ知っておきたい人は、大学生が地域活性化でできることを読んでから履修相談に行くと、聞くべきことが整理できる。学生の活動を扱うFLASPOのような場でも、残っている記録の有無が説明のしやすさを左右する。
よくある質問
成績はどう付くのか。科目によるが、提案の出来だけで決まることは少ない。議事録や中間報告、振り返りのレポートといった過程の提出物が評価に入る設計が多く、シラバスの評価方法の欄に配点が書かれている。そこを読めば、何に時間を割くべきかが見える。
事前の知識はどこまで必要なのか。統計の読み方や会議の進め方を知っていると楽になるが、入口で求められるのは資料を読む習慣のほうである。相手方から渡される計画書や統計は分量があり、そこを読まずに提案を書くと、すでに実施済みの施策を提案してしまう。初回の打ち合わせまでに、相手の計画を一本通して読んでおくだけで、話の位置が変わる。
提案は実際に採用されるのか。採用までたどり着く例はあるが、多くは検討材料として受け取られる段で終わる。自治体側の予算編成の時期と学期の進み方が噛み合わないことも理由の一つで、年度をまたいで引き継がれる科目のほうが、形になる確率は上がる。
他学部の科目でも取れるのか。全学共通科目として開かれていれば学部を問わず履修できることが多い。学部専門科目の場合は、他学部履修の枠や単位の上限が決まっている。履修要項の他学部履修の項を先に確認しておくと、卒業要件への算入まで含めて見通せる。
単位にならない関わり方はどう扱えばよいのか。正課外で関わる場合は保険の適用と連絡経路を先に確かめておく。センターを通していれば整っていることが多く、個人で参加する場合は自分で加入状況を確認する。経験としての価値は科目と変わらないが、事故が起きたときの扱いは別である。
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