学園祭の警備は誰がやるのか|警備業法の線引きと人の流れの設計

学園祭の警備と聞いて浮かぶのは、腕章をつけて門に立つ人の姿だろう。ところが実行委員会で先に止まるのは配置表ではなく、「それは警備なのか、整理なのか」という区別のところである。言葉の選び方の問題に見えて、よりどころにする法令と、頼める相手と、学生がどこまで手を出せるかが一緒に動く。

同じ「警備」の中に、主体の違う二つがある

総務省消防庁の検討会に出された参考資料「雑踏警備の概要」は、雑踏警備を「祭礼、花火大会、その他の行事等の開催により、特定の場所に不特定多数の人が一時的に集まることにより、事故若しくは混乱等が発生するおそれがある場合において、部隊活動により事故、交通の規制等の諸活動を行うもの」と説明している。参考文献として挙がっているのは兵庫県警察が出した「雑踏警備の手引き」で、ここでいう主体は警察である。

もう一方は民間の業務としての警備である。警備業法第2条第1項第2号は、警備業務のひとつを「人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務」と定め、同項の柱書きで「他人の需要に応じて行うもの」という条件をかぶせている。条文の重心は行為の中身ではなく、誰の需要で動いているかに置かれている。

先の参考資料には、主催者が自主警備計画を警察機関へ提出し、警察機関から指導・助言を受けながら、警備の一部を警備業を行う事業所に委託する、という関係図が載っている。主催者が自分の行事のために自分で人を立てる部分と、対価を得て引き受ける事業としての部分が、はじめから別の層として描かれているわけである。もっとも、個々の業務が警備業務に当たるかどうかは委託契約書の内容や実態から判断されるので、外部の催しへ人を出す、他団体から謝礼を受けて整理を請け負う、といった形になれば線は動く。迷ったら所轄の警察署に実態を話して確かめるのが早い。

層 担い手 よりどころ 学園祭での現れ方
部隊としての雑踏警備 警察 警察法第2条第1項 校外の交差点や駅前の規制
事業としての警備業務 警備業者 警備業法第2条第1項第2号 有料で委託する誘導・整理
主催者の自主警備 実行委員会 自主警備計画の提出と指導・助言 場内の案内、出入口の管理
学校としての安全確保 学校と設置者 学校保健安全法第27条・第29条 安全計画への行事の組み込み
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配置人数より先に決まるのは、入れていい人数

同じ参考資料は警備計画の概念として、「会場等の安全許容人数を確認の上、迂回路、避難場所、警備員の配置、広報手段等について」定めることを基本に挙げている。並び順をそのまま読むと、最初に来るのは何人立てるかではなく、何人まで入れていいかである。実行委員会の議論はたいてい逆から始まるので、ここを入れ替えるだけで計画の形が変わる。

過去の事故も同じ順番を示している。2001年7月21日、明石市の花火大会で朝霧歩道橋に見物客が集中し、11人が死亡、247人が負傷した。市の事故調査委員会は事前の警備計画が不十分だったと認定し、歩道橋上に最大で約6400人が滞留していたとしている(神戸新聞の報道)。人が多かったことではなく、どこに何人たまるかを見積もっていなかったことが問題として残った。

校内に置き換えると、たまる場所はおおむね決まっている。ステージ前、食品の出店の列、体育館や教室棟の入口、階段の降り口、そして門の内側である。図面に上限人数を書き込み、そこへ流れ込む経路と出ていく経路を別にする。ぶつからせない、戻らせない、片方向に流す。この三つだけで事故の芽はかなり減る。来場者を増やす施策と受け入れ上限の関係は学園祭の集客を設計する記事でも触れた。

門の外に一歩出ると、許可の話になる

校内だけで完結するなら相談先は学校と所轄の警察署で足りるが、歩道や車道を使う段になると書類が増える。道路交通法第77条第1項は、道路で工事や作業をする者、道路に工作物を設ける者、場所を移動しないで露店や屋台店を出そうとする者、そして道路において祭礼行事をするなど一般交通に著しい影響を及ぼす形で道路を使う者に、所轄警察署長の許可を受けるよう求めている。

許可の出方にも条文がある。同条第2項は、申請に係る行為が現に交通の妨害となるおそれがないと認められるとき、許可に付された条件に従って行われることで妨害のおそれがなくなると認められるとき、現に妨害のおそれはあるが公益上または社会の慣習上やむを得ないと認められるときのいずれかに当たれば、警察署長は許可をしなければならないと定める。つまり「条件付きで通す」余地が制度の側に用意されている。看板の位置、立て看の高さ、誘導員の人数といった条件を先に自分たちから出せると、話が早く進む。

規模が大きくなると相談の段が上がる。前掲の参考資料は、兵庫県警が警察本部の地域部と協議を行う場合の目安として、一日当たりの人出予想が10万人以上の行事を挙げている。学園祭でこの数字に届く例はまれだが、所轄署への相談と本部協議が別の段として存在することは知っておきたい。自分たちがどの段にいるかを数えておけば、相談を持ち込む時期を外さない。

学校の側には、すでに土台の計画がある

警備計画を白紙から起こそうとすると、毎年同じところでつまずく。実際には学校側に先行する計画があり、そこへ行事の日を差し込む形のほうが早い。学校保健安全法第27条は、学校に対し、施設及び設備の安全点検、日常生活における安全に関する指導、職員の研修などについて計画を策定し実施することを義務づけている。これが学校安全計画である。

同法第29条は、危険等発生時において職員がとるべき措置の具体的内容及び手順を定めた対処要領の作成を求め、校長に対しては職員への周知と訓練の実施を課している。第30条は、児童生徒等の安全確保のために、地域を管轄する警察署その他の関係機関との連携を図ることを掲げる。学園祭当日に誰が救急車を呼び、誰が校内放送を入れ、誰が保護者へ連絡するかという役割は、この要領の中にもう書かれていることが多い。

だから実行委員会がつくるべきものは独立した警備マニュアルではなく、既存の要領との差分である。来場者がいること、校外の人が校内を歩くこと、夜まで人が残ること。この三つが平常日との違いなので、そこだけを足す。委員会と学校の役割の分かれ目は学園祭の運営方法を整理した記事で扱った。

当日に効くのは、交代と情報の置き場所

前日までの準備が同じでも、当日の出来には差がつく。差が出るのは装備より運用で、とくに人の交代と情報の集約である。立ち番は二時間を超えると注意が落ちるので、交代の時刻と交代場所を紙に書いて渡す。無線やチャットの系統は一本にまとめ、本部の席に地図と名簿を置いて動かさない。情報が二箇所に分かれた瞬間、現場は止まる。

救護の導線も先に決めておく。保健室が開いているか、鍵を持つのは誰か、担架はどこか、救急車の入口はどの門か。参考資料が警備計画の要素として避難場所と広報手段を挙げているのは、逃がす先と伝える手段が揃ってはじめて計画になるからである。拡声器の電池と、校内放送の使い方を知っている人の当番表まで詰めると、抜けが減る。

火気を使う出店がある場合は、消火器の設置と消防署への届出が火災予防条例で別に求められる。これは警備の話とは別系統なので、担当を分けて進めたい。詳しい手順は学園祭の出店を開くまでの記事にまとめた。こうした段取りを一度通した経験は、学外の催しや団体活動にそのまま持ち出せる。活動の選び方や広げ方はFLASPOでも扱っている。

よくある質問

警備の相談を受けると、返ってくる問いはだいたい次の四つに集まる。

警備会社に頼まないと違法になるのか

警備業法が規制しているのは、他人の需要に応じて行う業務としての警備である。自分たちの行事で自分たちが場内の案内や整理を行う形は、この条件の外に置かれている。ただし該当するかどうかは契約の内容と実態で判断されるため、規模が大きい場合や校外の道路にかかる場合は、所轄の警察署に実態を説明して確認しておくのが確実である。

腕章やトランシーバーは何人分そろえればいいのか

人数から決めると毎年ずれる。先に滞留点を図面に落とし、そこに何人を割り当てるかを数えてから装備をそろえる。交代を二交代とするなら必要数は単純に二倍になるので、兼任を前提にした薄い配置より、持ち場を減らして厚く置くほうが崩れにくい。

部外者の立ち入りを制限したい場合はどうするか

校地は学校の管理下にあるため、入場の方法や範囲を主催者側が定めることはできる。受付の位置、入れる時間帯、入れない区域を事前に掲示し、断る場合の言い方を当番で共有しておく。判断を現場に委ねると対応がばらつくので、断る基準は委員会で決めて文章にしておく。

雨や強風で中止にする判断は誰が出すのか

判断する人と、判断する時刻と、判断の材料を先に決めておく。前日の何時に誰が何を見て決めるか、決まったことをどこに出すかまで書いておけば、当日の混乱は小さくなる。中止の連絡先には、届出や許可を出した窓口も入れておきたい。


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