賃貸と持ち家の分かれ目|持ち家率60.9%と家賃5万9656円で考える

賃貸と持ち家の分かれ目|持ち家率60.9%と家賃5万9656円で考える

家を借り続けるか、いつか買うか。この問いが切実になるのは、たいてい更新の通知が届いたときか、同世代の誰かが家を買ったと聞いたときだ。そのとき手元にあるのは、不動産の広告に載った月々の支払い額の比較くらいで、国の調査が示す実額はほとんど視界に入っていない。総務省と国土交通省は、持ち家と借家それぞれの戸数・家賃・取得資金を5年ごと、あるいは毎年の調査で公表している。まずその数字を並べ、そのうえで「月々いくら」だけでは並べられない項目を洗い出す。

日本の住まいは今どちらに寄っているか

総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査(住宅及び世帯に関する基本集計)によると、2023年10月1日時点の総住宅数は6504万7千戸で、2018年から4.2%増えて過去最多になった。このうち持ち家は3387万6千戸、住宅全体に占める持ち家住宅率は60.9%である。2018年の61.2%から0.3ポイント下がったが、1993年の59.8%以降、この30年間は60%前後でほぼ横ばいに動いている。

借家は1946万2千戸で35.0%。内訳を見ると民営借家が1568万4千戸(住宅全体の28.2%)と大半を占め、公営の借家が176万戸(3.2%)、給与住宅が130万2千戸(2.3%)、都市再生機構(UR)・公社の借家が71万6千戸(1.3%)と続く。つまり借りるという選択肢の実質は民間の賃貸住宅で、公的な借家は全体の5%に届かない。ここで押さえておきたいのは、持ち家率が下がっているといっても落ち方は0.3ポイントで、世の中が一気に賃貸へ振れたわけではない点だ。動いているのは借家の中身で、公営と給与住宅が縮み、民営借家が広がってきた。

募集中の地域コンテスト

読んだら、地域に行ってみよう

地域が出したお題に、オンラインでアイデアを応募できます。受賞すると、現地に無料で招待されます。

募集中の地域をすべて見る

借りる側の家計から毎月いくら出ていくか

同じ調査では家賃も集計されている。借家(専用住宅)の1か月当たり家賃は全国平均で5万9656円。2018年の5万5695円から7.1%上がった。種類別では公営の借家が2万4961円、給与住宅が3万7993円、民営借家(木造)が5万4409円、民営借家(非木造)が6万8548円、UR・公社の借家が7万1831円となっている。木造と非木造で1万4千円ほど開くので、同じ地域で部屋を探しても建物の構造によって負担はかなり変わる。

広さで割った1畳当たり家賃は3403円で、2018年の3074円から10.7%の上昇。民営借家(非木造)が4151円で最も高い。5年間の伸び率を月額と1畳当たりで比べると、月額が7.1%、1畳当たりが10.7%なので、家賃の上がり方以上に借りられる面積が縮んでいることになる。支払う額だけを見て「それほど上がっていない」と判断すると、この面積の目減りを見落とす。借り続ける前提で家計を組むなら、更新のたびに同じ広さを同じ家賃で維持できるとは限らない、と見ておくほうが実際に近い。

買う側が最初に動かす金額

買う側の実額は国土交通省の令和6年度住宅市場動向調査が示している。令和5年度中に住み替えなどを行った世帯への調査で、平均購入資金は土地を購入した注文住宅の新築世帯が6188万円(中央値5030万円)、建て替え世帯が5214万円(同3900万円)。分譲戸建住宅が4591万円(中央値4100万円)、分譲集合住宅が4679万円(同4500万円)。既存(中古)戸建住宅が2917万円(中央値2400万円)、既存(中古)集合住宅が2919万円(同2560万円)だった。

このうち自分の手持ち資金で払う割合、つまり自己資金比率は、土地を購入した注文住宅の新築世帯で32.2%、建て替え世帯で57.1%。分譲戸建住宅が27.3%、分譲集合住宅が44.7%、既存戸建住宅が36.6%、既存集合住宅が43.8%となっている。分譲戸建の27.3%は、4591万円のうち3335万円を借りているという意味だ。住宅ローンを持つ世帯の割合は注文住宅の新築で78.8%、分譲戸建で63.7%、分譲集合で66.0%。中古の集合住宅だけは52.8%で、現金に近い形で買う世帯が半数近くいる。

月々の支払額だけでは並べられない項目

賃貸と持ち家を比べるとき、家賃とローン返済額を並べて終わりにすると、どちらの側にも計算に入っていない支出が残る。借りる側には更新料と引っ越しが、買う側には修繕と税が付いてくる。国土交通省のマンションの修繕積立金に関するガイドライン(令和6年6月改定)は、長期修繕計画366事例から積立額の目安を算出している。20階未満で建築延床面積5000平方メートル未満のマンションなら1平方メートル当たり月335円、20階以上なら338円が平均額の目安だ。70平方メートルなら月2万3千円前後で、これは管理費とは別に積む額になる。

かかる場面 賃貸 持ち家(分譲マンション)
毎月 家賃 全国平均5万9656円 ローン返済+管理費+修繕積立金(70平方メートルで目安月2万3千円前後)
数年ごと 更新料、住み替え時の敷金・礼金・引っ越し費用 固定資産税・都市計画税、設備の交換
入り口 敷金・礼金・仲介手数料 購入資金の自己資金分(分譲戸建で27.3%、分譲集合で44.7%)
出口 退去して終わり 売却・賃貸・相続のいずれかを選ぶ必要がある

表の「出口」の行がいちばん見落とされやすい。借りている部屋は退去すれば関係が切れるが、買った家は住まなくなったあとも持ち主であり続ける。空き家の全国の数が900万戸を超えたのは、この出口の設計が後回しになった結果でもある。

広さと身軽さ、どちらに重みを置くか

金額以外で差が大きいのは面積だ。住宅・土地統計調査によると、専用住宅1住宅当たりの延べ面積は全体で90.86平方メートル。建て方で分けると一戸建が126.32平方メートル、共同住宅が50.31平方メートルで、2.5倍の開きがある。借家の多くは共同住宅なので、この差はおおむね賃貸と持ち家の差として現れる。一方で1人当たり居住室の畳数は全体で14.65畳と、1993年の10.35畳から一貫して増えている。世帯人数が減ったぶん、1人が使える広さは狭い家でも広がってきた。

身軽さの側は居住期間に出る。住宅市場動向調査で民間賃貸住宅に入居した世帯の住み替え前の平均居住期間を見ると、前も賃貸住宅だった世帯は8.0年、前が持ち家だった世帯は22.8年だった。借りている人は8年前後で住まいを変え、持ち家の人は20年を超えて同じ場所にいる。転勤や転職、家族構成の変化が今後10年のうちに起きそうなら、この差は家賃の数千円より重い。FLASPOのように地域をまたいで活動の場を探す動き方が前提なら、持ち家は資産であると同時に動きにくさにもなる。判断の軸は損得だけではなく、これから何年そこにいるつもりかという前提の置き方にある。

よくある質問

持ち家のほうが得だとよく言われるのは本当か。国の調査は損得の結論を出していない。出ているのは実額だけで、持ち家は購入資金の平均が分譲戸建で4591万円、自己資金比率が27.3%、借家は月5万9656円という数字である。どちらが有利かは住む年数と地域の家賃水準、売るときの値段で変わるため、全国平均から一般解は出てこない。

中古を買う選択はどう位置づけられるか。既存(中古)戸建住宅の平均購入資金は2917万円、既存集合住宅は2919万円で、新築の分譲より1700万円前後低い。自己資金比率は36.6%と43.8%で新築より高く、借入に頼る割合は小さい。住宅ローンを持つ世帯は既存集合で52.8%なので、中古は手持ち資金を厚めにして買う世帯が多い市場だと読める。

公営住宅は選択肢に入るか。家賃は2万4961円で民営借家の半分以下だが、戸数は176万戸で住宅全体の3.2%しかなく、2018年の192万2千戸から減っている。入居には所得などの要件があるため、誰でも選べる前提では考えにくい。

家賃の上昇はこの先も続くのか。5年ごとの調査では、2013年から2018年が3.0%、2018年から2023年が7.1%と、直近の5年で伸びが大きくなった。将来の予測は調査の対象外だが、同じ広さを同じ負担で借り続けられるとは限らないことは、この推移から読み取れる。

地域差はどれくらいあるか。持ち家住宅率は都道府県で大きく開き、秋田県が77.1%で最も高く、沖縄県が42.6%で最も低い。家賃も同様に差が大きいので、全国平均は出発点にしかならない。住む地域の相場を調べたうえで、都道府県別の家賃相場のような地域別の数字と突き合わせるほうが実務的だ。

判断を急がないための順序はあるか。まず今後5年から10年で住む場所が変わる見込みを立て、次に表の4つの場面それぞれに自分の数字を入れ、最後に出口をどうするか決める。この順で考えると、月々の支払額の比較だけで決めるより迷いが減る。関連する論点は二地域居住の住まいの選び方や空き家の現状と統計でも扱っている。


アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

FLASPO

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。

FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。

賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。

コンテストを探す▶︎

FLASPOで募集中のコンテスト

自治体や企業が出したお題に、学生・若者がオンラインでアイデアを応募できます。募集中のものも、これまでのお題と結果も、一覧で見られます。