LGBTQ+とは|「+」が置かれた理由と2026年の基本計画

LGBTQ+とは|「+」が置かれた理由と2026年の基本計画

五つの文字がそれぞれ指している範囲

六月になると、駅の改札や企業のロビーに虹色の旗が並ぶ。その隣に「LGBTQ+」と書かれていて、意味を尋ねられたら答えに詰まる、という人は少なくない。まず五文字の中身を押さえておきたい。長野県が公開している性の多様性の解説では、各文字は次のように説明されている。

文字 読み 指している人
L レズビアン 女性として女性に恋愛感情や性的感情を向ける人
G ゲイ 男性として男性に感情を向ける人
B バイセクシュアル 男女どちらにも感情を向ける人
T トランスジェンダー からだの性と性自認が異なる人
Q クエスチョニング/クィア 性自認や性的指向が定まっていない人、または性的マイノリティの総称
+ (読まない) 五つの枠に収まらないあり方すべて

注意したいのは、LとGとBが「誰に向かうか」の話で、Tだけが「自分をどの性別と認識しているか」の話だという点である。横に並んでいるが層が違う。この二つの軸を切り分けられると、あとの話がほどけやすくなる。軸そのものの整理はセックスとジェンダーの違いを扱った記事にまとめてある。

募集中の地域コンテスト

読んだら、地域に行ってみよう

地域が出したお題に、オンラインでアイデアを応募できます。受賞すると、現地に無料で招待されます。

募集中の地域をすべて見る

なぜ頭文字を足さずに記号を置いたのか

五文字で足りないなら六文字、七文字と伸ばせばよさそうに思える。実際、LGBTQIAやLGBTQIA2S+といった表記も世の中にはある。ただ、頭文字を増やすやり方は早い段階で行き詰まる。男性か女性のどちらかに定まっていないXジェンダー、他者に性的に惹かれることがないアセクシュアル、相手の性別が条件にならないパンセクシュアル。長野県の資料が挙げるだけでもこれだけあり、しかもこれで網羅ではない。

「+」は、足し忘れている人がまだいるという事実のほうを記号にしたものだと考えると腑に落ちる。一覧を完成させる記号ではなく、一覧が完成しないと認める記号である。

この発想をさらに進めたのがSOGIという語で、性的指向と性自認の頭文字を取っている。服装や言葉づかいといった性表現を加えてSOGIEと呼ぶこともある。LGBTQ+が少数の側を名指すのに対し、SOGIは全員が持っている属性として性のあり方を扱う。内閣府の理解増進法に関するQ&Aも、この法律は全ての国民が性的指向とジェンダーアイデンティティを有していることを前提としており、性的マイノリティだけを対象とするものではない、という立場をはっきり示している。

何人いるのかが、まだ決まっていない

広報物や社内研修でよく見る「およそ十人に一人」という表現には、裏づけに幅がある。2026年6月16日に閣議決定された国の基本計画は、本文の脚注にこう書いた。民間の調査では、性的マイノリティの割合が3%程度という調査結果もあれば、10%程度という調査結果もある、と。国の計画が3倍以上の開きをそのまま載せている。

開きが出る理由は、多くが設問の立て方にある。「あなたは性的マイノリティですか」と尋ねるのか、性的指向と性自認を別々に選択肢で尋ねるのかで、拾える範囲が変わる。言葉を知らない人、自認がまだ固まっていない人、勤め先の調査では答えたくない人も当然いる。基本計画が施策の筆頭に、国民の意識等を定期的に把握すると置いたのは、この土台の弱さを国も課題と見ているからだろう。

もっとも、実務の側から見れば結論はあまり変わらない。3%でも10%でも、百人規模の組織なら数人はいる。精度の高い数字が出るまで対応を待つ、という順番にはならない。

計画が現状と課題として並べた指摘も、数字より具体的である。自らのあり方を打ち明けた際に否定的な反応をされるのではないかと不安を抱え、家族にすら言えずに孤独を抱えてしまう人がいること。保護者への啓発が足りないために、こどもが家庭で悩みを出せないこと。相談窓口の職員に知識がないせいで、背景にある困りごとが認識されないまま終わること。いずれも割合の話ではなく、届かなかった場面の話である。

理解増進法と、三年遅れで出た基本計画

根拠となる法律は、2023年6月23日に公布・施行された「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」(令和5年法律第68号)である。議員立法で成立し、性的指向を恋愛感情または性的感情の対象となる性別についての指向、ジェンダーアイデンティティを自己の属する性別についての認識に関するその同一性の有無または程度に係る意識、と定義している。

この法律の第8条が政府に求めていたのが基本計画の策定で、閣議決定に至ったのは三年後だった。計画は国の施策を、学術研究等の推進、知識の着実な普及、相談体制の整備という三本に整理している。実施状況は毎年一回公表し、計画そのものはおおむね三年ごとに見直すと定めた。

読み違えられやすいのは、むしろ法律の性格のほうである。内閣府のQ&Aは、この法律が個人に新たな権利や義務を定めるものではないこと、差別を禁止する規定を置いていないこと、公衆浴場など身体的特徴により男女を区別してきた施設の取扱いを変えるものではないことを、いずれも明記している。理念を掲げて各主体に努力を促す型の法律だと読むのが正確である。

法律が役割を振り分けた先は四つある。施策を策定し実施する国、国に準じて地域の実情に応じた施策に努める地方公共団体、そして理解増進に努め施策に協力する主体として位置づけられた事業主と学校の設置者である。事業主に求められるのは、従業員への情報提供や研修の機会づくり、相談に応じる体制の整備といった範囲で、罰則を伴う義務ではない。計画はここに、企業の取組事例を周知して横展開を促すという国の側の宿題を書き添えている。

制度の側は、法律より十年早く動いていた

国の計画が出るはるか前、2015年11月に渋谷区と世田谷区が同性カップルを公的に認める仕組みを始めている。渋谷区と虹色ダイバーシティの共同調査によれば、2025年5月末の時点で導入した自治体は530、人口カバー率は92.5%に達した。一年で7.4ポイント上がった計算になる。交付された証明は9,836組、33都府県がカバー率100%となり、制度を持たない県庁所在地と政令指定都市はなくなった。

ただし、これは婚姻ではない。証明があれば公営住宅の申込みや医療機関での家族としての扱いが開ける一方、相続や配偶者ビザ、税や社会保険の取扱いは対象の外に置かれたままである。企業が福利厚生の適用判断に使う例は増えているが、そこから先は各社の判断に委ねられている。

多様性を事業の軸に据えた企業の実例はユニリーバを取り上げた記事に、つくり手の視点はインクルーシブな設計を扱った記事にまとめた。地域で若い世代の活動を支えるFLASPOの現場でも、参加の呼びかけ方や申込フォームの性別欄をどう置くかは、制度論ではなく運用の問題として日々立ち上がる。

よくある質問

LGBTQとLGBTQ+は使い分けるべきですか

どちらも誤りではありませんが、「+」が付いた表記のほうが、五文字に収まらない人を明示的に含みます。迷う場面では「+」を付けておくほうが取りこぼしが少なくなります。

SOGIはLGBTQ+の言い換えですか

言い換えではありません。LGBTQ+は特定の人々を指す呼び方で、SOGIは誰もが持つ属性を指す枠組みです。社内規程や調査票を設計するときはSOGIの語のほうが扱いやすい場面が多くなります。

理解増進法で差別は禁止されたのですか

禁止規定は置かれていません。内閣府は、合理的な根拠のない差別的取扱いは憲法が既に禁じていると説明したうえで、この法律自体は差別を禁止するものではないとしています。

アライを名乗るのに資格は要りますか

要りません。長野県の資料はアライを、性的マイノリティの人々を理解し応援する人と説明しています。虹色の目印を机に置く程度のことでも、打ち明けられずにいる人にとっては手がかりになります。

当事者がいない職場では学ぶ必要が薄いのでしょうか

基本計画が現状と課題の冒頭で挙げているのは、性のあり方は外見上明らかではないため多様な存在が実感されにくい、という点です。いないのではなく、言える状態になっていないと考えるほうが実態に近いでしょう。

パートナーシップ制度があれば結婚と同じ扱いになりますか

なりません。自治体の制度は区域内の行政サービスや民間企業の運用に効く仕組みで、相続や配偶者ビザといった国の法律が定める効果は生じません。利用できる範囲は自治体ごとに異なるため、窓口での確認が要ります。


アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

FLASPO

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。

FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。

賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。

コンテストを探す▶︎

FLASPOで募集中のコンテスト

自治体や企業が出したお題に、学生・若者がオンラインでアイデアを応募できます。募集中のものも、これまでのお題と結果も、一覧で見られます。