独身の理由に、それだけ別種の一行がある
恋人ができない理由を自分の性格のせいにしてしまう前に、同じ説明を選んでいる人がどれくらいいるのか見ておきたい。国立社会保障・人口問題研究所の「第16回出生動向基本調査」は2021年に実施された調査で、18〜34歳の未婚者に独身でいる理由を複数回答で尋ねている。25〜34歳の層で最も多いのは「適当な相手にまだめぐり会わないから」で、男性43.3%、女性48.1%だった。次に「独身の自由さや気楽さを失いたくないから」が男性26.6%、女性31.0%と並ぶ。
この並びの中で性質が違うのが「異性とうまくつき合えないから」である。25〜34歳では男性20.0%、女性18.2%が選んでいる。相手がいない、急いでいない、という外向きの説明ではなく、自分の関わり方そのものを理由に挙げた回答だ。18〜24歳では男性12.3%、女性7.3%で、年齢が上がると差が開く。若いうちは「まだ若すぎる」で説明できたものが、二十代の後半からは説明の形を変える、ということでもある。
18〜24歳の回答を並べると、その違いがはっきりする。この層で最も多い理由は男性では「結婚するにはまだ若すぎるから」の47.8%、女性では「今は、仕事(または学業)にうちこみたいから」の42.1%だった。時間を理由にできる段階である。年齢の上限がある説明は、いずれ使えなくなる。
30年のあいだに、この回答は倍になった
同じ設問は1992年の第10回調査から続いているので、推移をそのまま並べられる。25〜34歳で「異性とうまくつき合えないから」を選んだ割合は、1992年には男性10.5%、女性7.9%だった。それが2021年には男性20.0%、女性18.2%になっている。男性でおよそ倍、女性では2.3倍だ。この間に「適当な相手にまだめぐり会わない」はむしろ下がっており、理由の構成そのものが入れ替わってきたことが分かる。
注意しておきたいのは、これが能力の測定ではないという点である。設問は自己申告で、しかも複数回答だ。実際に下手になったのか、下手だと自覚する人が増えたのか、この数字だけでは分けられない。ただどちらに転んでも、人づきあいの難しさを理由として口にすることが珍しくなくなった、という事実は残る。
減ったほうの理由も見ておくと、変化の向きが掴みやすい。25〜34歳の男性で「結婚資金が足りないから」を選んだ割合は1992年の25.5%から2021年の23.1%へとほぼ横ばいだが、「結婚する必要性をまだ感じないから」は30.7%から25.8%に下がっている。お金や必要性の話が動かないまま、人づきあいの話だけが増えている構図だ。
| 調査年 | 男性(25〜34歳) | 女性(25〜34歳) |
|---|---|---|
| 1992年(第10回) | 10.5% | 7.9% |
| 1997年(第11回) | 9.2% | 7.7% |
| 2002年(第12回) | 9.0% | 6.6% |
| 2005年(第13回) | 11.3% | 7.3% |
| 2010年(第14回) | 13.5% | 11.6% |
| 2015年(第15回) | 14.3% | 15.8% |
| 2021年(第16回) | 20.0% | 18.2% |
恋人がいる割合は、年齢で山がずれる
では実際の交際はどうなっているのか。同じ調査で、18〜34歳の未婚者のうち恋人または婚約者がいる人は男性21.1%、女性27.8%だった。回答者数は男性2,033人、女性2,053人である。四人に三人は交際相手がいない状態で答えていることになる。
年齢で区切ると山の位置が見えてくる。男性は18〜19歳が14.9%、20〜24歳が24.0%、25〜29歳が26.1%と上がり、30〜34歳では14.2%に落ちる。女性は20.5%、30.9%、32.6%、20.6%という形で、やはり20代後半が頂点だ。男女とも30代前半で一段下がるところが共通している。つまり二十代後半を過ぎると、交際している人の割合は増えるどころか減る。焦りの正体はここにあるが、同時に、全体がそう動いているという前提の話でもある。
年代ごとの意識の違いは大学生の恋愛とはの側でも扱っている。
交際相手がいない人を一枚にまとめない
交際相手がいないという状態は、望んでいるのに不在なのか、望んでいないのかで中身が逆になる。第16回調査はこの二つを分けて集計している。18〜34歳の未婚者のうち、交際相手がおらず交際を望んでいる人は男性31.5%、女性24.6%。交際を望んでいない人は男性33.5%、女性34.1%だった。望まない側のほうがわずかに多い。
残りは交際の希望が不詳だった層で、男性7.1%、女性5.5%を占める。四つに割ると、交際相手がいる人、いないが望む人、いないし望まない人、答えを保留した人という構成になる。世の中が全員同じ方向を向いているわけではない、という当たり前のことが数字の形で出ている。
この割り方は、悩みの扱いを変える。交際を望んでいない三分の一にとって、人づきあいの練習は恋愛のためのものではない。逆に望んでいる三割にとっては、出会いの機会の少なさと、機会があっても続かないことのどちらが詰まっているのかを分けないと、対策がかみ合わない。「異性とうまくつき合えない」を選んだ二割は、後者に寄った説明をしていると読める。
交際そのものの損得をどう見るかは、大学生の恋愛のメリットの整理が参考になる。
会話術より、続く関わりの作り方が効く
「うまくつき合えない」を話術の問題と読むと、練習の方向を間違える。経済産業省の社会人基礎力は人と関わる力を六つの要素に割っていて、発信力、傾聴力、柔軟性、情況把握力、規律性、ストレスコントロール力が並ぶ。このうち初対面の場で目立つのは発信力だが、関係が続くかどうかを決めるのは傾聴力と柔軟性の側だ。恋愛でも同じ順番になる。
もうひとつ効くのは、同じ人と何度も会える場をいくつ持っているかである。一度の会話で印象を残す勝負より、週に一度顔を合わせる関係のほうが、言葉の不器用さを吸収してくれる。FLASPOのように関心を軸に人が集まる場だと、話題を探す手間がかからないぶん、関わりが途切れにくい。
具体的には、相手の話に出てきた固有名詞を次に会うときまで覚えておく、くらいの単純な作業で足りる。前に聞いた話の続きから入れる相手は、それだけで他と区別される。傾聴力はこういう形で現れるので、話す量を増やす練習とは方向が違う。
人と打ち解けるのに時間がかかる側の組み立て方は、コミュ力と内向型でもう少し細かく扱っている。
よくある質問
恋人ができないのは自分のコミュ力が低いからでしょうか。第16回調査で「異性とうまくつき合えないから」を選んだのは25〜34歳の男性20.0%、女性18.2%で、独身の理由として最多だったのは「適当な相手にまだめぐり会わないから」の43.3%と48.1%だった。機会の側の説明のほうが多数派である。
交際相手がいないのは少数派ですか。18〜34歳の未婚者で恋人または婚約者がいる人は男性21.1%、女性27.8%だった。いない側が多数であり、そのうち交際を望んでいない人も男性33.5%、女性34.1%と三分の一を占める。
30代になると不利になりますか。恋人または婚約者がいる割合は30〜34歳で男性14.2%、女性20.6%と、20代後半より下がる。ただしこれは個人の力の低下ではなく、既婚者が母数から抜けていく年齢構成の影響も含んだ数字だ。
この調査の数字はいつのものですか。第16回出生動向基本調査は2021年の実施である。前回の第15回が2015年なので、通常より1年長い6年の間隔が空いた。交際状況の数字を読むときは、その時点の調査だという前提を押さえておきたい。
何から練習すればよいですか。初対面の受けを良くする練習より、同じ相手と何度も会う場を一つ増やすほうが結果につながりやすい。回数が確保できれば、一回ごとの出来の差は埋まっていく。
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