言葉の輪郭は、法律の側から先に決まっている
マッチングアプリという呼び方は、サービス側が名乗っている通称である。法律の条文には出てこない。代わりに置かれているのが「インターネット異性紹介事業」という区分で、インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律(平成15年法律第83号)の第2条第2号が定義している。
定義は4つの要素を重ねた形になっている。面識のない異性との交際を希望する人の求めに応じて、その交際に関する情報をインターネットで公衆が閲覧できる状態に置いて伝えること。情報を受け取った側が、電子メールその他の電気通信で相手と相互に連絡できるようにすること。この役務を提供する事業であること。この4つを満たすものが、法律上の区分に入る。
ここから言えるのは、画面の見た目や課金の形では決まらないということである。プロフィールが公開され、相手を選んで連絡を取り合える仕組みであれば、恋人探しを掲げていようと結婚相手探しを掲げていようと同じ枠に入る。逆に、連絡手段を提供していない掲示板は定義の3つ目の要素を満たさない。呼び名より先に、この構造を確かめるほうが早い。
届出と年齢確認が、事業者側の最低条件になっている
定義に当てはまると、事業者には手続きが生じる。第7条は、事業を行おうとする者が事務所の所在地を管轄する都道府県公安委員会に届け出なければならないと定めている。届け出る内容は、氏名または名称と住所、広告や宣伝で使う呼称の全部、事務所の所在地、連絡先、法人なら役員の氏名と住所、そして年齢確認の実施方法を含む業務の方法である。
年齢確認は第11条の義務である。異性交際に関する情報を公衆が閲覧できる状態に置くときなどに、あらかじめ相手が児童でないことを確認しなければならない。ここでの児童は第2条第1号で18歳に満たない者と定められている。さらに第10条は、広告や宣伝のときに児童が利用してはならない旨を明らかにすることと、利用しようとする人にその旨を伝えることを求めている。
実効性の裏打ちもある。届出をしないまま事業を行った者には、第32条第1号により6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が定められている。違反があれば公安委員会が第13条で指示を出し、第14条で事業の停止を命じることもできる。ただし届出は公安委員会に対して行うものなので、利用者が外から直接たどれるわけではない。
結婚した夫婦の2割が、この経路で知り合っている
規模の話に移ると、この数年で大きく動いた。第17回出生動向基本調査 結果の概要は、調査時点から過去5年間に結婚した初婚どうしの夫婦570組に、知り合ったきっかけをたずねている。「ネット(インターネット)で」と答えた夫婦は20.2パーセントで、前回調査の11.0パーセントからほぼ倍になった。
| 知り合ったきっかけ | 第16回(2021) | 第17回(2025) |
|---|---|---|
| 職場や仕事で | 25.6% | 20.9% |
| 友人・兄弟姉妹を通じて | 24.9% | 20.2% |
| ネット(SNS・ウェブサイト・アプリ等)で | 11.0% | 20.2% |
| 学校で | 13.8% | 14.0% |
| 結婚相談所で(オンラインを含む) | 6.7% | 7.7% |
| アルバイトで | 3.9% | 4.7% |
| 見合いで(親せきや上役の紹介を含む) | 2.2% | 1.1% |
この選択肢の回答欄には、SNS、ウェブサイト、アプリ等によるやりとりがきっかけで知り合った場合を指すという注記が付いている。偶然ネットで見かけたという話ではなく、やりとりが出発点になった出会いを数えている。20.2パーセントという値は学校の14.0パーセントを上回り、長く上位を占めてきた職場の20.9パーセントと友人の20.2パーセントに並んだ。
未婚で交際相手がいる人の側でも同じ向きに動いている。恋人または婚約者がいる18〜34歳の未婚者では、ネットで知り合ったという回答が男性19.8パーセント、女性23.0パーセントだった。経路ごとの内訳は大学生の恋愛事情の記事で詳しく扱っている。
結婚相談所や見合いとは、調査でも別に数えられている
同じ調査のなかで、ネットと結婚相談所と見合いは別の選択肢として立っている。過去5年間に結婚した夫婦のうち「結婚相談所で(オンラインを含む)」は7.7パーセントで、前回の6.7パーセントから増えた。「見合いで」は1.1パーセントまで下がっている。オンラインの仕組みを備えた相談所が伸びた一方、仲立ちを個人に頼む形は細った。
この2つとアプリの違いは、仲介がどこに入るかである。相談所は会員の情報を事業者が預かり、担当者やシステムが相手を絞って示す。アプリは利用者自身が一覧から選ぶ。法律の定義に当てはまるかどうかも、情報を公衆が閲覧できる状態に置くかという1つ目の要素で分かれてくる。会員の情報を外に出さない形の仲介は、この要素に当たらない余地がある。
集計上の注意もひとつ付いている。報告書は、自由記述のうち街コンなどの記述を結婚相談所の側へ振り分けたと書いている。イベント型の出会いは、アプリの数字ではなくこちらに入っている。どの枠に何が含まれているかを確かめないまま、7.7パーセントと20.2パーセントをサービスの人気として比べることはできない。
在学中に使うなら、年齢と届出の2点を先に確かめる
学生の立場で押さえるべき点は、ここまでの条文からそのまま出てくる。まず18歳未満は利用できない。これは事業者の確認義務の裏返しであり、年齢を偽って登録する行為は確認の仕組みを壊す。第6条は、何人もこの事業を利用して児童を性交等の相手方となるよう誘引してはならないと定め、違反には第33条で100万円以下の罰金が置かれている。
次に届出である。届出のない事業は、それ自体が違法な状態にある。利用者の側から確かめやすいのは、第10条が求めるもう一方の義務である。広告や登録の画面に、児童は利用できないという趣旨の表示が置かれているかを見る。そこが抜けているサービスは、年齢確認や禁止誘引行為への対応も怠っている可能性がある。
もうひとつ、法律が守っているのは児童の育成であって、利用者の金銭や個人情報ではない。料金の表示や退会の手続き、相手から持ち込まれる投資や副業の勧誘は、この法律の外側にある問題である。学外の活動で人と会う機会をつくるという意味では、地域の課題に学生が提案を持ち込むFLASPOのような場も選択肢に入る。結婚そのものへの意向の数え方は結婚意向の記事にまとめた。
よくある質問
マッチングアプリという言葉は法律に書かれていますか。
書かれていない。法律が定めているのは「インターネット異性紹介事業」という区分で、定義は平成15年法律第83号の第2条第2号にある。通称がどうであれ、定義の4つの要素を満たせばこの区分に入る。
届出をしていない事業者はどうなりますか。
第7条第1項の届出をしないまま事業を行った場合、第32条第1号により6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になる。届出先は事務所の所在地を管轄する都道府県公安委員会である。
18歳になっていれば使えますか。
法律が利用を禁じているのは18歳に満たない者である。ただし事業者ごとに20歳以上などの独自の条件を置いている場合があり、利用規約の年齢要件はそれぞれ確かめる必要がある。
この経路で知り合う人は、本当に増えているのですか。
増えている。過去5年間に結婚した初婚どうしの夫婦では11.0パーセントから20.2パーセントへ、恋人または婚約者がいる未婚者では男性が11.9パーセントから19.8パーセント、女性が17.9パーセントから23.0パーセントへ上がった。元の数値は研究所が公開しているグラフデータで確かめられる。
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