一人で決める時間が、この十年で最も伸びた世代
時間の使い方を変えようとしても、他人の都合で埋まっている枠には手が入らない。だから、自分の裁量で動かせる時間がどれだけあるかが先に問題になる。総務省統計局の令和3年社会生活基本調査は、睡眠を除く生活時間を一緒にいた人の別で集計している。20歳から24歳では、一人でいた時間が週全体の平均で1日6時間14分あり、2016年の5時間5分から1時間9分増えた。15歳から19歳でも4時間49分で、56分の増加である。総数の5時間55分と比べても、20代前半の一人の時間は長い。
増えた理由は裁量が広がったからだけではない。同じ調査では、家族と一緒にいた時間が20歳から24歳で2時間51分と短く、学校や職場の人と一緒にいた時間は4時間25分まで下がった。後者は2016年と比べて1時間9分の減少で、10歳から14歳から55歳から59歳までのすべての年齢階級の中で減少幅が最も大きい。誰かと居合わせることで自動的に決まっていた時間割が薄くなり、その分が自分で決める時間に移った、という読み方になる。
この動きは若い層に限らない。一人でいた時間は2016年と比べてすべての年齢階級で増え、増加幅が最も大きいのは25歳から29歳の1時間21分だった。ただ、上の世代では仕事の時間が枠として固まっているため、増えた分を動かせる範囲は狭い。学生の時期は授業と授業時間外の学修の配分そのものを選べるので、同じ一時間の増加でも使い道の幅が違ってくる。
| 年齢階級 | 一人で(2021年) | 家族(2021年) | 学校・職場の人(2021年) | 学校・職場の人の増減 |
|---|---|---|---|---|
| 総数 | 5時間55分 | 5時間6分 | 3時間8分 | -33分 |
| 15〜19歳 | 4時間49分 | 4時間5分 | 5時間36分 | -1時間 |
| 20〜24歳 | 6時間14分 | 2時間51分 | 4時間25分 | -1時間9分 |
| 25〜29歳 | 6時間1分 | 3時間29分 | 4時間26分 | -59分 |
誘われて動く時間が減り、選んで動く時間が増えた
裁量が広がったことは、活動の種類の変化にも出ている。同じ調査で、学業として行うものを除いた学習・自己啓発・訓練の行動者率は、20歳から24歳で56.5%となり、2016年から3.7ポイント上がった。15歳から19歳は52.9%で3.9ポイントの上昇、10歳から14歳は55.6%で5.9ポイントの上昇である。クラブ活動や部活動もこの区分に含まれるため、自分で選んで続ける活動が増えた層だと言える。
逆に、人から声がかかって始まる活動は縮んだ。ボランティア活動の行動者率は、20歳から24歳で12.2%と2016年より7.0ポイント低く、15歳から19歳は13.2%で9.4ポイント低い。10歳から14歳では14.4%の低下で、全年齢階級の中で下げ幅が最も大きい。誘いの数が減れば、予定は待っていても埋まらない。何に時間を置くかを自分で決める工程が、以前より重く効くようになったということである。
同じ24時間でも、年代ごとに中身が違う
時間の中身の違いは、メディアの使い方にそのまま出る。総務省が令和8年6月26日に公表した令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書では、インターネット利用の平均時間が休日の20代で300分を超えた。一方でテレビのリアルタイム視聴は、平日も休日も70代で300分を超えている。全年代の平均は平日でインターネットが183.9分、テレビが156.1分なので、20代と70代はその平均から反対方向へ大きく離れている。
時間の長さだけでなく、どちらが優勢かも分かれる。同じ調査によると、テレビのリアルタイム視聴がインターネット利用を上回るのは、平日では60代と70代、休日では50代から70代に限られる。上の世代の時間割をそのまま当てはめた助言が若い世代に合わないのは、ここに理由がある。手元の時間を点検するときは、年代ごとの平均ではなく、自分の端末に残っている記録を基準にするほうが早い。
使っている機器の構成も違う。同じ調査では、モバイル機器によるインターネット利用の平均時間が平日の10代と休日の10代および20代で200分を超え、その行為者率は平日も休日も10代から40代で90%前後だった。持ち歩く端末が中心にある世代では、予定の確認も記録も同じ画面の上で起きる。机に座る時間を前提にした段取りではなく、移動の合間に収まる段取りを組むほうが現実に合う。
効きやすいぶん、放っておくと一方に傾く
自分で決められる時間が長いことは、工夫が結果に出やすいという意味でもあるが、同時に偏りも出やすい。大学の学修量は大学設置基準が目安を置いており、第21条第2項は1単位の授業科目を45時間の学修を必要とする内容をもって構成することを標準としている。授業がそのうち15時間なら、残りの30時間は授業時間外に自分で積む分である。誰も立ち会わない30時間が科目ごとに並んでいる、という構造になる。
立ち会う人がいない枠は、ほかの予定に押されやすい。第27条の2が、一年間または一学期に履修科目として登録できる単位数の上限を定めるよう努めなければならないとしているのは、入りきらない量を抱えないための仕組みでもある。第22条は一年間の授業を行う期間を35週にわたることを原則としているので、半期の予定は十数週の単位で読める。一単位45時間の内訳を一度書き出しておくと、どこが押されているかが見える。
動かせる時間が長い時期に、何を先に決めるか
一人の時間が1日6時間を超える時期は、人生のうちでそれほど長く続かない。就職や家族の事情が入ると、同じ調査の30代から50代の数字のように、家族と過ごす時間や職場の人と重なる時間が戻ってくる。だから、いま決めておく価値があるのは個別の予定ではなく、どの時間帯を何に使うかという割り当てのほうである。朝の二時間を学修に充てると決めておけば、毎週その枠を考え直す手間が消える。
割り当ての効き方は、お金の条件とも絡む。学費や生活費の都合でアルバイトの時間が決まっている場合、動かせるのは残りの時間だけになる。学生115万人が利用する制度のように、使える仕組みを先に調べておくと、時間の割り当てを選び直す余地が増える。地域との関わりを学生の時期から考えるFLASPOの見方でも、どこに住みどう動くかは時間の配分とまとめて決める問題として置かれている。自分で決める時間が増えたことを前提に、配分が見えることから始めるのが現実的である。
よくある質問
若いうちは時間管理をしなくても足りるのではないか。他人の都合で枠が埋まっていた時期ならその通りだった。ただ、20歳から24歳の一人でいた時間は1日6時間14分で、2016年より1時間9分長い。埋め方を決めない時間がそれだけあるなら、決め方の差がそのまま結果の差になる。
時間の使い方を測るとき、何を基準にすればよいか。年代ごとの平均は目安にしかならない。社会生活基本調査は週全体の平均を示しているので、平日と休日で振れる自分の記録とは形が違う。一週間だけ実際の記録を取り、そこから平均と比べるほうが誤差が小さい。
ボランティアやサークルは減らしたほうがよいのか。減らす必要はない。行動者率が下がっているのは誘いの機会が減ったことの反映で、価値が下がったわけではない。学業として行うものを除いた学習・自己啓発・訓練にはクラブ活動や部活動も含まれ、その行動者率は20歳から24歳で上がっている。
社会人になると時間管理は要らなくなるのか。形が変わるだけである。家族や職場の人と重なる時間が戻る代わりに、自分で決められる幅が狭まる。狭い幅をどう使うかを考える段階では、学生のうちに作った割り当ての型がそのまま流用できる。
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