仕送りは減り、足りない分をアルバイトが埋めている
部屋を借りる負担を考えるとき、多くの家庭はまず月いくら送れるかを話し合う。ところが日本学生支援機構の令和6年度学生生活調査を前回と並べると、送る側の金額はむしろ下がっている。大学学部の昼間部で、家庭からの支援は令和4年度の年1,096,900円から1,029,700円へ、67,200円減った。
減った分はどこから来ているのか。アルバイト収入が375,900円から507,700円へ131,800円増え、収入全体に占める割合は19.1パーセントから25.0パーセントに上がった。収入のおよそ四分の一を学生自身が稼いでいることになる。奨学金も407,600円から437,500円へ増えている。
| 収入の内訳 | 令和4年度 | 令和6年度 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 家庭からの支援 | 1,096,900円(55.8%) | 1,029,700円(50.7%) | −67,200円 |
| 奨学金 | 407,600円(20.7%) | 437,500円(21.6%) | +29,900円 |
| アルバイト収入 | 375,900円(19.1%) | 507,700円(25.0%) | +131,800円 |
| 定職収入・その他 | 87,000円(4.4%) | 55,200円(2.7%) | −31,800円 |
| 収入の計 | 1,967,400円 | 2,030,100円 | +62,700円 |
家賃は毎月同じ日に同じ額が出ていく。収入の柱が支援から自分の労働へ移るほど、その固定費を支える土台は不安定になる。シフトを削られた月に家賃が待ってくれるわけではない、という点が自宅通学との最も大きな違いになる。
2年で生活費が17.7パーセント増え、逃げ場が少ない
収入が年62,700円増えたと聞けば改善のように見える。しかし支出の伸びのほうが大きい。学費と生活費を合わせた学生生活費は令和4年度から194,400円、10.7パーセント増えた。内訳では学費が74,500円、6.5パーセントの増加に対し、生活費が119,900円、17.7パーセント増えている。
支出の増加194,400円から収入の増加62,700円を引くと、131,700円が埋まっていない。この生活費の伸びは全居住形態の平均だが、重く効くのは部屋を借りている側である。アパート等に住む学生の生活費のうち、住居・光熱費が年529,700円を占め、食費が321,700円。家賃と電気代は献立を変えるようには削れない。
自宅通学ならこの二つの多くを家計が吸収するため、物価が上がっても本人の予算に出にくい。一人暮らしでは真っ先に本人の口座を通る。節約の余地が娯楽と食費に偏るので、上がり続けた場合に削る先が食事になりやすいという順序も見えてくる。
働く時間が増えると、削られるのは学習と課外になりやすい
アルバイトで埋めるという解き方には時間の制約がついてくる。同じ調査の週間平均生活時間では、アルバイトや定職に週16〜20時間充てている学生が16.9パーセント、21〜25時間が5.9パーセント、26時間以上が5.0パーセントだった。16時間以上を合わせると27.8パーセントで、四人に一人を超える。
同じ一週間の別の欄を見ると、授業以外の学習を0時間と答えた学生が49.0パーセント、部活動やサークル活動を0時間と答えた学生が53.7パーセント、就職活動を0時間と答えた学生が73.1パーセントいる。アルバイト従事者の割合は令和2年度の80.7パーセントから83.8パーセント、86.4パーセントと二期続けて上がっている。
この調査は働く時間と学習時間の因果を調べていないので、片方が他方を押し出したとは言えない。言えるのは、週に20時間近く働く学生が二割を超えて存在し、授業以外の学習や課外活動が0時間という回答が半分前後あるという、二つの分布が同時に成り立っていることである。家賃の分だけ働く時間を増やす計画を立てるときは、削る先をどこに置くかまで決めておきたい。
平均の収支は、すでにわずかに足りていない
居住形態ごとに収入と支出を突き合わせると、差の向きが分かれる。自宅通学の学生は収入1,862,800円に対して支出1,801,300円で、61,500円の余りがある。アパート等の学生は収入2,287,800円に対して支出2,342,900円で、55,100円足りない。
どちらも標本調査から推定した値で、項目ごとに別に集計されているため、この55,100円をそのまま赤字とは読めない。それでも、平均の段階で余りが出ないという事実は、個々の家庭では振れ幅がもっと大きいことを示している。家庭からの支援だけでは修学がやや困難または非常に困難、あるいは支援が無いと答えた学生は35.1パーセントで、前回から3.6ポイント増えた。
住む場所によって重さも変わる。アパート等の学生生活費は東京圏で2,807,500円、それ以外の地域で2,125,000円と、年682,500円の差がつく。同じ支援額で始めても、東京圏では最初から余白が狭い。地域ごとの物価の形は都道府県別の生活費を扱った回で、二つの拠点を持つ場合の積み上げ方は二地域居住の費用の回で整理した。
崩れる前に打てる手は、入居前のほうが多い
不利な点を並べても始める判断は変わらないことが多い。変えられるのは順番で、契約する前に決めておくと効く項目が四つある。第一に家賃の上限を、家庭からの支援と奨学金だけで払える額に収めること。アルバイト収入を家賃の原資に入れると、シフトの増減が住まいの危機に直結する。
第二に、奨学金は入学前の予約採用と在学中の申込で時期が違うため、志望校の募集時期を先に押さえる。第三に、食費を月単位ではなく週単位で区切る。年321,700円は月2万7千円ほどで、週で割ると6千円台になり、残りが見えやすくなる。
第四に、困ったときに相談する先を入居前に調べておく。授業料の減免や緊急の給付、学内の相談窓口は、必要になってから探すと時期を逃す。働いて埋める場合の落とし穴は学生フリーランスのデメリットの回にまとめた。進学先の土地の暮らしぶりを先に知りたいなら、FLASPOのような地域と人をつなぐ場で現地の話を聞いておくと、家賃以外の出費も見当がつく。
よくある質問
仕送りはいくらあれば安心でしょうか
アパート等に住む学生が家庭から受けている支援は年1,240,900円、月に10万3千円ほどである。これに奨学金508,500円とアルバイト476,000円が加わって収支が並ぶ水準なので、支援だけで全額を賄う前提だとかなり高い金額になる。家賃を支援と奨学金の範囲に収める設計が現実的だ。
アルバイトは週何時間までに抑えるべきですか
この調査に推奨値は示されていない。参考になるのは分布で、週16時間以上が27.8パーセント、11〜15時間が23.1パーセントと最も多い。授業と課題の時間を先に確保し、残りの枠から逆算するほうが、時間数を先に決めるより崩れにくい。
奨学金を借りるのは避けたほうがよいですか
何らかの奨学金を受けている学生は51.1パーセントで、前回から3.9ポイント減ったとはいえ半数を超える。貸与型は返還が必要だが、給付型もあり、受けられる種類は家庭の収入によって変わる。避けるか使うかの前に、自分がどの種類の対象になるかを確かめる段階が先にくる。
生活費の増え方は今後も続きますか
この調査は隔年で行われており、令和2年度から令和4年度にかけての生活費は2.0パーセントの増加だった。それが令和4年度から令和6年度では17.7パーセントに跳ねている。先の予測はできないが、入居時の家賃で4年間の予算を固定すると足りなくなる可能性は見込んでおきたい。
途中で続けられなくなったらどうなりますか
賃貸契約は年単位で、途中解約には違約金や原状回復の費用がかかる場合がある。退去して実家に戻る選択は残るが、往復の引越し費用が二度かかる。始める前に、最低何か月分の家賃を手元に置いておけるかを数えておくと、判断を先送りせずに済む。
出典
独立行政法人日本学生支援機構「令和6年度学生生活調査結果」(令和8年3月公表)。令和6年11月実施、調査対象82,593人に対し有効回答12,659人、回収率15.3パーセント。本文の金額と割合は大学学部(昼間部)の推計値で、前回は令和4年度調査を指す。
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