国公立に下宿したほうが、私立に家から通うより安く済む場合がある
部屋を借りると出費が増える、という前提は正しい。ただし志望校ごとに金額を並べ直すと、順番が入れ替わる組み合わせがある。日本学生支援機構の令和6年度学生生活調査で、学費と生活費を合わせた一年分の金額を見ると、国立大学に通ってアパート等に住む学生は1,800,700円。私立大学に自宅から通う学生は1,905,400円で、下宿した国立のほうが104,700円低い。
居住形態だけで生活費を比べれば、差は小さくない。自宅の年500,800円に対してアパート等は1,256,700円で、755,900円ひらく。月にすると6万3千円ほどで、この年76万円が何に変わるのかを順に見ていく。
それでも総額の順番が入れ替わるのは、学費の幅のためである。アパート等に住む学生の学費は、国立が年603,200円、私立が1,391,100円で、78万円以上ひらく。部屋を借りることで増える生活費よりも、設置者による学費の差のほうが大きい。公立とアパート等の組み合わせは1,750,600円で、さらに低い。
| 組み合わせ | 学費 | 生活費 | 学生生活費の計 |
|---|---|---|---|
| 国立・アパート等 | 603,200円 | 1,197,500円 | 1,800,700円 |
| 公立・アパート等 | 581,100円 | 1,169,500円 | 1,750,600円 |
| 私立・自宅 | 1,400,600円 | 504,800円 | 1,905,400円 |
| 私立・アパート等 | 1,391,100円 | 1,298,000円 | 2,689,100円 |
この順番を知っていると、志望校を通学圏の内側だけで選ぶ必要がなくなる。実際に国立では59.2パーセント、公立では55.8パーセントの学生が下宿やアパートなどに住んでおり、遠方から集まることが前提の構成になっている。家から通えるかどうかを最初の条件に置くと、こうした進路をはじめから落としてしまう。
往復2時間が、片道20分以内に変わる
金額の次に戻ってくるのは移動の時間だ。同じ調査の片道通学時間を居住形態別に見ると、アパート等から通う学生は0〜10分が40.6パーセント、11〜20分が33.2パーセントで、20分以内が73.8パーセントに達する。
自宅通学の分布はこれと重ならない。20分以内は7.6パーセントにとどまり、61〜90分が31.1パーセントで最も多い。91分以上も21.8パーセントあり、往復で3時間を超える学生が一定数いる。片道1時間の通学を週5日続ければ、週に10時間が移動に消える。
取り戻せる時間は、授業の取り方にも効く。一限から五限まで入れても帰りの終電を気にしなくてよい、夕方から夜のアルバイトに入れる、図書館を閉館まで使える。通学費も自宅生の年112,900円に対してアパート等は28,900円で、定期代の負担は8万4千円軽い。
戻った時間がどこへ向かうかは、分布を見ると見当がつく
時間ができても自動的に有益に使われるわけではない。同じ調査の週間平均生活時間では、授業期間中の典型的な1週間の使い方が項目別に出ている。アルバイトや定職に充てる時間は11〜15時間が23.1パーセントで最も多く、16〜20時間が16.9パーセント、まったく充てていない学生が19.3パーセントだった。
学習の側はもっと短い。授業の予習・復習や課題に充てる時間は1〜5時間が54.8パーセントで、6〜10時間が21.8パーセント。授業以外の学習を0時間と答えた学生は49.0パーセントに上る。娯楽・交友は6〜10時間が29.3パーセント、1〜5時間が26.5パーセントで、多数が週10時間以内に収まっている。
つまり多くの学生の一週間には、学習にも遊びにも振り分けられる余白が残っている。通学で週10時間を使っていた人がその枠を手にすると、アルバイトを一段増やすか、授業以外の学習を0時間から動かすか、どちらにも回せる。ガクチカのアルバイト編で扱ったように、この時間の使い方は後の選考で話す材料にもなる。
家計が自分の手を通るようになる
三つ目は数字に出にくいが、効き方は大きい。自宅通学だと住居費と光熱費は家計の中にまとめられ、本人の目には入らない。この調査でも自宅生の住居・光熱費は0円として集計されている。部屋を借りると、年529,700円の住居・光熱費と321,700円の食費が自分の口座から出ていく。
原資の内訳も変わる。アパート等に住む学生の収入は年2,287,800円で、家庭からの支援が1,240,900円、奨学金が508,500円、アルバイト収入が476,000円、定職・その他が62,400円。支援の額は自宅生の883,600円より36万円多いが、裏を返せばそれでも足りない分を奨学金とアルバイトで埋めている構造になる。
全体ではアルバイトを経験した学生が86.4パーセント、何らかの奨学金を受けている学生が51.1パーセントを占める。家賃の支払期日と収入の入金日を合わせる、光熱費の季節変動を見込んで残高を置く、こうした段取りを在学中に一度通しておくと、卒業後の住み替えで迷う場面が減る。収入を自分で作る側に寄せていくなら、学生フリーランスのメリットを扱った回も参考になる。
同じ予算でも、どこに住むかで中身が変わる
四つ目は場所を選べることだ。アパート等に住む学生の学生生活費は、東京圏で2,807,500円、京阪神で2,472,900円、それ以外の地域で2,125,000円。東京圏とその他では年682,500円の差がつく。
この差は我慢の量ではなく、同じ金額で借りられる部屋の広さや立地に置き換わる。地方の大学に進んだ学生が、東京圏と同じ家賃で一部屋多い物件に住むのは珍しくない。学生のうちに土地との関わりを作っておくと、卒業後の進路にも別の選択肢が増える。
進学で初めてその土地に住む場合は、生活の形を先に知っておきたい。田舎暮らしの始め方で挙げた確認事項は学生にも当てはまり、FLASPOのような地域と人をつなぐ場で現地の話を聞けば、物件の条件を決めやすくなる。
よくある質問
一人暮らしのほうが安くなることは本当にあるのですか
設置者を変えて比べた場合にはある。国立でアパート等に住むと年1,800,700円で、私立に自宅から通う1,905,400円より10万円ほど低い。同じ大学で自宅と下宿を比べれば下宿のほうが高く、安くなるのは学費の差が住居費の差を上回るときだけである。
通学時間が短くなると成績は上がりますか
この調査は通学時間と成績の関係を調べていないので、因果は言えない。わかっているのは、授業以外の学習を0時間と答えた学生が49.0パーセントいることと、アパート等なら片道20分以内が7割を超えることの二つである。使える枠が増えるかどうかまでが数字の範囲だ。
生活の技能は一人暮らしでなければ身につかないのでしょうか
自宅にいても家事を分担すれば身につく。違いは逃げ道があるかどうかで、部屋を借りれば食費や光熱費の管理は本人の手に残る。年32万円ほどの食費をどう使うかを自分で決める経験は、自宅にいるあいだは意識して作らないと得にくい。
仕送りが少なくても始められますか
家庭からの支援だけでは修学がやや困難または非常に困難、あるいは支援が無いと答えた学生は35.1パーセントで、前回調査から3.6ポイント増えている。奨学金の受給者が51.1パーセントいることも含め、支援以外の原資を組む学生は少数派ではない。先に奨学金の申込時期を確かめるのが順序として早い。
学寮ではなくアパートを選ぶ利点はありますか
学寮の生活費は年1,038,200円でアパート等より22万円低く、通学時間も0〜10分が61.5パーセントと近い。金額と距離では学寮が有利だが、入れる人数が国立で6.3パーセント、私立で6.0パーセントと限られる。希望しても確保できるとは限らないため、アパートは代替ではなく併行して探す対象になる。
出典
独立行政法人日本学生支援機構「令和6年度学生生活調査結果」(令和8年3月公表)。令和6年11月に実施し、有効回答は12,659人、回収率は15.3パーセント。本文の金額と割合は大学学部(昼間部)の推計値である。
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