副業の始め方|就業規則の確認から確定申告までの手順と期限

副業の始め方|就業規則の確認から確定申告までの手順と期限

求人を開く前に、済ませておく確認がある

二つ目の仕事を持とうと決めたとき、多くの人はまず募集を探し始める。ところが先に手を付けるべきなのは自分の勤め先の書類で、ここを飛ばすと、せっかく決まった仕事を断ることになりかねない。

厚生労働省の副業・兼業の促進に関するガイドラインは、労働者の対応としてこの順番をはっきり書いている。副業・兼業を希望する場合にもまず自身が勤めている企業の副業・兼業に関するルールを確認し、そのルールに照らして業務内容や就業時間等が適切な副業・兼業を選択する必要がある、という言い方だ。

確認すべき先は四つの層に分かれる。勤め先の決まり、働き方の形、保険と年金の手続き、そして税の届出である。前の二つは始める前に、後ろの二つは始めた直後と年明けに効いてくる。

この記事では、その四層を着手の順に並べ、それぞれの期限を数字で示す。手続きの名前と日数を先に知っておくと、動き出してから迷う場面がかなり減る。

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勤め先の決まりは、どこをどう読むか

就業規則を開いたら、まず兼業や副業という言葉を探す。許可制なのか届出制なのか、禁止と書いてあるのか、条件付きで認めているのか。この四つのどれにあたるかで、次の一歩が変わる。

手がかりになるのが厚生労働省のモデル就業規則である。労働者の遵守事項から許可なく他の会社等の業務に従事しないことという規定が削除され、代わりに、勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができる、という条文が置かれている。自社の規則がこの形に追い付いていない場合、古い版をそのまま使い続けている可能性がある。

禁止と書かれていても、それだけで終わりではない。指針は裁判例を踏まえ、労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的には労働者の自由だとしたうえで、企業が制限できるのは次の四つの場合にあたるときだと整理している。

制限が許される場合 自分で確かめること
労務提供上の支障がある場合 深夜や早朝に重ならないか、休息が取れる時間割か
業務上の秘密が漏洩する場合 本業の顧客情報や設計情報に触れる仕事でないか
競業により自社の利益が害される場合 本業と同じ市場で同じ客を取り合わないか
自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合 社名を出す形の仕事になっていないか

指針は企業の対応についても、原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当だと書いている。令和4年7月の改定では、許容しているかどうかと条件付きの場合はその条件を自社のホームページ等において公表することが望ましい、という項目が加わった。自社の採用ページに記載があれば、口頭で確認するより先にそこを読むほうが早い。

申し出るときは、週に何時間どの曜日に働くつもりか、相手先の業種は何か、本業の情報に触れる作業があるかどうかを先にそろえておきたい。会社の懸念は時間と健康と情報に集中しているため、この三点の答えを持って行くと判断が早く返ってくる。

雇われる形か、雇われない形か

働き方の形は、労働契約を結んで雇われるか、請負や委託で仕事を受けるかの二つに大きく分かれる。見た目は似ていても、適用される法律が違う。

雇われる形を選ぶと、労働時間が通算される。指針が引く労働基準法第38条第1項は、労働時間は事業場を異にする場合においても労働時間に関する規定の適用については通算する、と定めている。本業で一日8時間働いたあとに別の勤め先で2時間働けば、その2時間は法定時間を超えた分として扱われ、割増賃金の対象になる。

通算の管理は、互いの会社が相手の実労働時間を把握し続けるのが本来の形で、手間が大きい。そこで指針は簡便な方法として管理モデルを示している。先に労働契約を結んでいた使用者の法定外労働時間と、後から契約した使用者の労働時間を合計した時間数が単月100時間未満、複数月平均80時間以内となる範囲で、それぞれが上限を設定して働かせるという枠組みだ。

この枠が入ると、両方の会社はあらかじめ決めた上限の内側で働かせる限り、相手先の実労働時間を調べなくても法律を守れる。副業の面接で働ける時間を聞かれたら、この上限の考え方を前提に答えると話がかみ合いやすい。

雇われない形には時間の通算がない。その代わり、仕事の受け方しだいで法律上の扱いが変わる点に注意が必要だ。指針は、違法な偽装請負の場合や、請負であるかのような契約としているが実態は雇用契約だと認められる場合には、就労の実態に応じて使用者責任が問われると書いている。指示を細かく受け、時間と場所を指定され、断る自由がないなら、契約書の表題がどうであれ雇用に近い。

保険と年金は、始めた直後に動く

働き始めると、保険と年金の扱いが本業だけのときと変わる。三つの制度で向きが違うため、それぞれ別に押さえたい。

制度 複数の勤め先があるときの扱い 手続き
労災保険 災害が起きていない勤め先の賃金額も合算して給付額を算定する。業務上の負荷も総合的に評価する 本人の届出は不要。加入手続は事業主が行う
雇用保険 一つの勤め先で週20時間未満なら被保険者にならない。合計では判定しない 65歳以上は二つの事業所を合算する特例をハローワークに申し出る
厚生年金保険・健康保険 両方で要件を満たす場合、報酬月額を合算して標準報酬月額を決める 事実発生から10日以内に本人が所属選択の届出を出す

労災保険は令和2年法律第14号による改正で合算の形になった。勤め先から勤め先へ移動する間に起きた事故も通勤災害として給付の対象になり、保険関係の処理は移動の終点となる事業場で行うとされている。

雇用保険は逆に、合算されないのが原則である。短い時間の仕事を二つ三つ重ねても、それぞれの勤め先で週20時間に届かなければ被保険者にならない。令和4年1月から65歳以上の人に限って特例が始まり、二つの事業所それぞれが週5時間以上20時間未満で、合計して週20時間以上、どちらも31日以上の雇用見込みがあるときに、本人の申出で被保険者になれる。

社会保険は本人が動く必要がある。日本年金機構の案内によると、同時に二か所以上の適用事業所に勤務することになった場合、被保険者本人の届出により主たる事業所を選択し、管轄する年金事務所または保険者等を決定する。提出するのは健康保険・厚生年金保険の被保険者所属選択・二以上事業所勤務届で、期限は事実発生から10日以内である。

保険料の決まり方も覚えておきたい。それぞれの事業所で受ける報酬月額を合算した月額で標準報酬月額を決め、その保険料額を各事業所の報酬月額に基づいて按分する。二つ目の勤め先ができた月から、本業側の控除額も動くということになる。

税の届出と、年明けまでの期限

税の手続きは、収入の形と金額で枝分かれする。国税庁の給与所得者で確定申告が必要な人は、一か所から給与を受けている人について、給与所得と退職所得以外の所得金額の合計額が20万円を超える場合に確定申告が必要だとしている。給与の年間収入金額が2,000万円を超える人や、二か所以上から給与を受けて年末調整されなかった給与と他の所得の合計が20万円を超える人も申告が必要だ。

どの所得に当たるかで記録の義務も変わる。雑所得の説明は、副業に係る所得として原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得を雑所得の例に挙げ、営利を目的とした継続的なものを業務に係る雑所得と呼んでいる。金額は総収入金額から必要経費を引いて求める。

手続き・義務 条件 期限など
確定申告 給与以外の所得の合計が20万円超 翌年の確定申告期限まで
個人事業の開廃業等届出書 個人で事業を始めたとき 開始の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで
所得税の青色申告承認申請書 青色申告をしたいとき 原則3月15日まで。1月16日以後に開業した場合は開始の日から2か月以内
現金預金取引等関係書類の保存 前々年分の業務に係る雑所得の収入が300万円超 令和4年分以後の所得税で必要
収支内訳書などの添付 前々年分の業務に係る雑所得の収入が1,000万円超 確定申告書に添付

表の期限は国税庁の新たに事業を始めたときの届出等と雑所得の説明に沿っている。開業の届出が1か月以内だと覚えている人もいるが、案内に示されているのは開始の事実があった年分の確定申告期限までという書き方だ。給与支払事務所等の開設届のように1か月以内のものもあるため、届出ごとに確かめたい。

記録の負担が軽くなる仕組みもある。前々年分の収入金額が300万円以下であれば、業務に係る雑所得の計算でその年に収入した金額と支出した費用の額を使う現金主義の特例が選べる。ただし確定申告書にこの特例を受ける旨を記載しなければ適用されない。

職種によって必要な道具や初期の費用は大きく変わる。書く仕事から入るならライティングで副業収入を得る方法を扱った記事、作る仕事ならデザインと副業を扱った記事が具体的だ。自分で店を持つ形を考えるなら、届出と表示の義務をまとめたネットショップの始め方の記事が近い。地域で新しい働き方を試す場づくりはFLASPOでも手がけている。

よくある質問

何から手を付ければよいのか。勤め先の就業規則である。許可制か届出制か禁止かを確かめ、禁止の文言があっても制限が許される四つの場合に自分が触れるかを突き合わせてから、募集を探す段階に進みたい。

会社に伝えないまま始めてよいのか。届出や許可の定めがあるなら、伝えずに進めると規則違反になる。指針も、企業と労働者の双方が納得感を持って進められるよう十分にコミュニケーションをとることが重要だとしている。

本業で8時間働いた日に、別の勤め先で働くと残業になるのか。雇われる形ならそうなる。労働基準法第38条第1項で労働時間は事業場を異にする場合においても通算されるため、法定時間を超えた部分は割増賃金の対象になる。

働ける時間の上限はどのくらいか。管理モデルを使う場合、先に契約していた勤め先の法定外労働時間と後から契約した勤め先の労働時間の合計が、単月100時間未満かつ複数月平均80時間以内に収まる範囲で上限が設定される。

社会保険の手続きは会社がやってくれるのか。所属選択の届出は被保険者本人が出す。期限は事実発生から10日以内で、選択した事業所の所在地を管轄する事務センターまたは年金事務所に提出する。

20万円を超えなければ、何もしなくてよいのか。所得税の確定申告は不要になる場合があるが、住民税の扱いは別に残る。住んでいる自治体の案内で申告が必要かどうかを確かめておきたい。

開業届は出したほうがよいのか。継続して仕事を受ける形なら出しておくほうが後の手続きが整う。青色申告を選ぶなら承認申請の期限が先に来るため、開業の時期と合わせて二つの期限を同時に見ておく必要がある。

請負の契約なら労働時間の心配はないのか。契約の表題だけでは決まらない。細かい指示を受け、時間と場所を指定され、仕事を断る自由がない状態なら、実態は雇用契約だと認められて使用者責任が問われることがある。


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