落ちる原因は内容の地味さではなく、読み手が判定できないこと
提出した原稿が通らなかったとき、まず疑われるのは題材の弱さである。だが厚生労働省の令和5年若年者雇用実態調査では、新規学卒者の選考で重視した点として「学歴・経歴」を挙げた事業所は22.4%、「業務に役立つ職業経験・訓練経験」は14.7%にとどまっていた。経験の珍しさや肩書きは、そもそも上位の判定材料になっていない。
では何が落ちる原因になるのか。読み手の側に立つと、評価を付けようとしても材料が揃わない原稿、という一点に収束する。以下の六つは、どれも書き手の努力不足ではなく、材料の置き場所を間違えた結果として起きる。
この区別は実務上の意味を持つ。題材が弱いと診断すれば、新しい経験を取りに行くしかなくなる。材料の置き場所の問題だと分かれば、手元の原稿のままで直せる。提出まで二週間しかない時期に、どちらの診断を下すかで打てる手が変わる。
| 型 | 読み手の側に起きること | 直す向き |
|---|---|---|
| 成果の数字だけを書く | 何をした人か分からない | 数字の前に打った手を一文入れる |
| 役職や所属だけを書く | 肩書きの中身が空白になる | その立場で下した判断を書く |
| 主語がチームのまま | 本人の寄与が切り出せない | 私がで始まる文に置き換える |
| 感想で終わる | 行動の記述が一つもない | 動詞で働きかけを並べる |
| 選考で使えない情報を書く | 評価材料として扱えない | 自分の行動の記述に替える |
| 学業に一切触れない | 質問の半分に答えが用意されない | 授業や研究の場面を一つ混ぜる |
数字と肩書きだけが残っている原稿
「売上を前年比120%にしました」「副代表を二年務めました」という書き出しは、一見すると強い。しかし読み手は次の行で、誰が何をして120%になったのかを探しに行く。そこが空白だと、数字は店の実績として処理され、本人の評価には使われない。
直し方は、数字を消すことではなく順番を入れ替えることである。品切れの時間帯を記録して発注の単位を変えた、という手を先に置き、その結果として数字を添える。肩書きも同じで、副代表という語の後に、新入生の定着が悪いと分かって面談の頻度を変えた、といった判断を続ける。立場そのものは評価されないが、立場で下した判断は評価される。
構成の順番から整えたい場合はガクチカの構成の考え方に戻ると、どの行に数字を置くかの見当が付く。
なお、数字そのものを警戒する必要はない。前年比という比較の軸があるおかげで、読み手は変化の幅を自分で測れる。問題なのは数字が独立していることで、手と並べて置けば最も強い材料になる。削る順番を決めるときは、形容詞から先に落とし、内訳の数字と動詞は最後まで残すのが安全である。
主語がチームのままで、行動の記述が消えている原稿
「チーム全員で話し合い、協力して目標を達成しました」という一文は、書いた本人の輪郭を消す。二十人の団体で同じ文を書いた応募者が五人いたとき、読み手はその五人を区別できない。
合わせて起きやすいのが、行動がすべて感想に置き換わる型である。「大変でしたが、やりがいを感じました」「人と関わることの大切さを学びました」で段落が終わると、残るのは感情の記述だけになる。調査で最も重かった「職業意識・勤労意欲・チャレンジ精神」79.3%は意欲の有無を聞く欄だが、意欲を言葉で主張しても印は付かない。印が付くのは、意欲があったから実際に何を始めたかという行動の側である。
点検の手は単純で、各文の主語を声に出して確認する。私以外が主語の文が半分を超えていたら、書き直す段に入っている。動詞を数えるのも有効で、聞いた、変えた、提案した、引き継いだといった働きかけの動詞が三つ未満なら薄い。
ここで一つ注意がある。主語を私に揃えると、手柄を独り占めする文に見えると心配する学生が多い。実際には逆で、誰に何を頼んだかを書くほど、周囲との関わりが具体的に見える。「コミュニケーション能力」74.8%という欄に当たるのは、協調を自称する文ではなく、相手の反応が書かれている文である。
そもそも選考で使えない情報を書いてしまう型
見落とされやすいのがこれである。厚生労働省は公正な採用選考の基本として、就職差別につながるおそれがあるため把握を避けるべき事項を示している。本籍や出生地、家族の職業や学歴や収入、住宅状況、宗教、支持政党、人生観や生活信条、尊敬する人物、購読新聞や愛読書などが並ぶ。根拠は職業安定法第5条の5と平成11年告示第141号である。
ここに挙がっている項目を自分から書くと、企業は評価材料として扱えない。尊敬する人物や愛読書は設問として見かけることがあるが、国の整理では避けるべき側に入っている。親の仕事を継ぐ覚悟を語る、信条の強さで熱意を示す、といった書き方も同じ扱いになる。
置き換えの方向は明確で、価値観の宣言を自分の行動の記述に替える。家業の話をしたいなら、手伝いの場面で自分が決めたことを書く。信条を語りたいなら、その信条に沿って続けた行動と、そこで起きた変化を書く。扱える材料に変換すれば、内容を捨てずに済む。
学業の話をまるごと避けてしまう型
課外活動だけで埋めた原稿も、一つの型として落ちやすい。内閣府の学生の就職・採用活動開始時期等に関する調査は、2025年12月12日に公表された報告書で、大学4年生3,157件と大学院2年生1,258件の計4,415件の回答を集めている。そこでは、面接で研究やゼミなどの学業への取組や成績について質問を受け、その内容が評価に関係していると感じた学生が、全体で約5割に達していた。
同じ調査では、説明会や面接に参加するため授業やゼミを欠席したことが「しばしばあった」か「まれにあった」と答えた割合が全体で58.0%だった。就職活動そのものが授業を削る構造になっているため、学業に触れない原稿が量産される。しかし質問される側面の半分がそこに残っているなら、書類の段で一つも用意していないのは不利である。
混ぜ方は難しくない。主題は課外活動のままでよく、用いた手の出どころとして授業や研究の場面を一行入れる。統計の授業で習った集計の仕方を出店者の聞き取りに使った、という形でつながれば、学業と活動が別々の話にならない。
成績が良くない場合も、この一行は書ける。評価されているのは点数ではなく、何に時間を使ってどう考えたかだからである。苦手な科目で詰まった箇所を特定し、通い方を変えて切り抜けた経過があるなら、それは原因の特定と手当ての記述として機能する。学業を避ける判断は、材料を一つ丸ごと捨てていることになる。
よくある質問
六つの型のうち、どれから直すべきか。主語がチームのままの型が最優先である。これが残っていると他の五つを直しても本人の評価に結び付かない。
嘘を書かずに盛るのはどこまで許されるか。起きた事実の範囲を広げるのは避けたい。面接では同じ場面の前後を聞かれるため、作った部分は追加の質問で崩れる。字数が足りないときは、事実を増やすのではなく、原因の記述を一段細かくする方向で埋める。
一度落ちた原稿を使い回してよいか。構いはしないが、落ちた理由を六つの型に当てて確かめる手順は挟みたい。同じ型を残したまま別の企業へ送ると、同じ箇所で止まる。
短い字数の設問でも六つを全部避けられるか。二百字程度なら、主語と行動と結果の三点に絞れば足りる。字数ごとの詰め方はガクチカの文字数の目安が参考になる。
自分で判定できないときはどうするか。読み手を一人置くのが早い。他人の原稿を直す経験は自分の原稿の点検にも効くため、添削の進め方を一度通して読んでおくと基準が固まる。FLASPOのように学生が地域で活動する場では、同じ現場を知る相手に読んでもらえるぶん、原因の記述の甘さを突いてもらいやすい。
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