自己分析の目的は3つ|企業が新卒に見ている79.3%の中身 | FLASPO MAGAZINE

自己分析の目的は3つ|企業が新卒に見ている79.3%の中身

職務経験がないことを前提に採用しているのに、企業はなぜ学生に何度も面接を重ねるのか。厚生労働省の令和5年若年者雇用実態調査を開くと、その理由が数字で見えてくる。新規学卒者の採用選考で「業務に役立つ職業経験・訓練経験」を重視したと答えた事業所は14.7%にとどまる。七つの事業所のうち六つは、学生の経験そのものを評価の軸に置いていない。では残りの時間で何を見ているのか。自己分析が何のための作業なのかは、この問いの裏側から考えると輪郭がはっきりする。

企業が新卒の選考で見ている三つの軸

同じ調査の事業所調査には、若年正社員の採用選考にあたり重視した点が採用区分別に並んでいる。新規学卒者では「職業意識・勤労意欲・チャレンジ精神」が79.3%で最も高く、次に「コミュニケーション能力」が74.8%、「マナー・社会常識」が58.6%と続く。いずれも持ち物として示せるものではない。資格証や成績証明書を出しても、仕事への向き合い方や人との関わり方は証明できない。だから面接という形式が残り、学生の側には自分の出来事を言葉にする準備が求められる。

中途採用者と並べると、この偏りはもっと鮮明になる。中途でも上位三項目の並びは変わらないが、「業務に役立つ職業経験・訓練経験」は42.3%に跳ね上がる。経験のある人には経験を見て、経験のない人には意識と姿勢を見る。評価軸が入口で切り替わっているということは、新卒の側が用意すべき材料も当然違ってくる。

採用選考で重視した点 新規学卒者 中途採用者
職業意識・勤労意欲・チャレンジ精神 79.3% 72.7%
コミュニケーション能力 74.8% 66.9%
マナー・社会常識 58.6% 58.1%
業務に役立つ職業経験・訓練経験 14.7% 42.3%
出典:厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況」(複数回答、採用選考をした事業所を100とした割合)

数字の読み方として大事なのは、上位の項目がどれも過去の出来事を介してしか伝わらないという点だ。熱意を直接申告しても評価は動かない。何をどう選び、どこで粘ったかという具体の中に、はじめて意識や姿勢が立ち上がる。厚生労働省の若年者雇用実態調査が示しているのは、採用側が見たいものと、学生側が用意できる材料の接点がどこにあるかである。

一つ目の目的は、問われたときに答えを持っていること

面接で詰まる場面は、だいたい決まっている。「なぜその活動を続けたのか」「なぜ辞めなかったのか」「その判断はどこから出てきたのか」。事実は覚えているのに、理由の部分で言葉が止まる。記憶の不足ではなく、説明を一度も与えていないからだ。

自己分析の目的の一つ目は、この説明をあらかじめ用意しておくことにある。やったことの一覧をつくる作業ではない。ひとつの出来事について、選んだ理由、途中で変えた判断、やめなかった根拠を書き出し、他人が読んでも筋が通る形にする。これが済んでいれば、質問の形が変わっても同じ材料から組み立て直せる。逆にここが空白のまま想定問答を暗記すると、角度を変えた一問で崩れる。

材料は多くなくてよい。深く説明できる経験が三つあれば、エントリーシートから最終面接まで回る。注意したいのは、強い実績を選びたくなる誘惑だ。評価されているのは成果の大きさではなく意識と姿勢なのだから、規模の小さい出来事でも説明の密度があれば届く。経験の棚卸しの進め方はガクチカとは?就活で問われる理由と企業が見ている3つのポイントで扱っている観点と重ねると整理しやすい。

二つ目の目的は、受ける企業を減らすこと

エントリー数を増やせば確率が上がる、という発想は途中で行き詰まる。一社あたりに割ける準備の時間が削られ、どの会社にも同じ話をする状態に落ちていく。先に必要なのは、落としてよい条件と落とせない条件の線引きだ。

線引きの手がかりは、働いている人の満足度の内訳にある。令和5年若年者雇用実態調査の個人調査では、若年正社員の満足度を項目別に見ると「雇用の安定性」が66.4ポイントで最も高く、「職場の人間関係、コミュニケーション」が57.3ポイント、「仕事の内容・やりがい」が55.2ポイントと続く。一方で「賃金」はマイナス5.9ポイントと全項目中で最も低い。満足と不満は会社単位でまとまって現れるのではなく、項目ごとにばらばらに出る。

つまり全部がそろった職場を探すのではなく、どの項目なら我慢できてどの項目は無理なのかを自分で決める作業になる。給与が低くても内容で満たされる人もいれば、内容が地味でも安定が効く人もいる。ここが決まると、求人票の読み方が変わる。自分の判断軸を外部のフレームに乗せて点検したいときは、SWOT分析を就活に使う方法|自己分析から面接回答まで完全ガイドのような枠組みを借りると抜けが見つかる。

三つ目の目的は、入社後に自分で修正できる形を残すこと

内定が出た時点で就活中の書きものを捨ててしまう人は少なくない。これは惜しい。配属先の希望を出すとき、異動の打診を受けたとき、数年後に転職を考えたとき、同じ問いがまた返ってくる。何を大事にして、何を手放せるのか。そのとき手元に当時の記録があるかどうかで、判断の速さがまるで違う。

三つ目の目的は、選考を越えて使える形を残すことにある。日付を入れて書き、半年後に読み返して変わった部分に線を引く。この積み重ねが、キャリアを他人に委ねずに決める土台になる。就活のためだけに消費される作業だと思うと、どうしても提出物の体裁を整える方向に流れる。残す前提で書けば、粗くても自分に通じる言葉で書けばよいと分かる。

働く場所の選択肢を地方まで広げて考えるなら、暮らしの条件と仕事の条件を同じ紙の上で比べる視点も要る。地域で働くという選び方についてはFLASPOが扱っている領域と重なる部分が多い。都市か地方かという二択ではなく、自分が落とせない項目がどちらで満たされやすいかという問いに置き換えると、検討が前に進む。

目的を取り違えたときに起きること

三つの目的から外れると、作業は形を変えて膨らみ続ける。よくあるのは、終わりのない自分探しになる型だ。本当の自分はどれかを問い始めると、どこまで掘っても確信は来ない。選考で必要なのは真の自己の発見ではなく、他人に伝わる説明である。到達点を「説明が書けた」に置けば、作業は数日で区切れる。

次に多いのが、診断結果を集めて満足する型である。性格タイプや適性の分類は入口を絞るには役立つが、結果の名前をそのまま面接で言っても材料にはならない。診断は仮説を出す装置であり、裏づけは自分の出来事から取ってくるしかない。三つ目の型は、先輩や指南書の言葉をそのまま借りてしまうものだ。借り物は一問の掘り下げで分解される。

どの型も、目的を「自分を知ること」と置いた結果として生まれる。知ることは手段で、目的は選考で使える材料と企業を絞る軸と入社後に使える記録の三つだと決めてしまえば、作業量は自然に収まる。手順の全体像を先に押さえておきたい場合は自己分析のやり方完全ガイド|就活生が今すぐ使える5つの方法が足場になる。

自己分析の目的についてよくある質問

目的を一つに絞ったほうが進めやすいのではないか。絞るなら選考で使う材料づくりを先に置くのがよい。締め切りがあるのはここだけで、企業を絞る軸は材料を書いている途中で自然に見えてくる。入社後に残す形は、書いたものを捨てずに保管するだけで満たせる。

経験が少ないと目的を果たせないのではないか。採用側が経験を重視した割合は新規学卒者で14.7%であり、経験の量は入口の条件になっていない。アルバイトでも授業でも、選んだ理由と途中の判断を説明できれば評価の対象に乗る。

どれくらいの量を書けば足りるのか。分量よりも、ひとつの出来事を他人が読んで筋を追えるかどうかで判断したい。経験三つについて、きっかけ・迷った点・変えた判断・結果が埋まっていれば、選考で使う材料としては足りる。

性格診断だけで済ませてよいか。診断は職業や働き方の候補を絞る目的には有効だが、面接で問われる理由の部分は埋められない。厚生労働省の調査で上位に並んでいた項目は、いずれも本人の具体的な行動を通してしか伝わらない。診断で仮説を立て、出来事で裏づける順序にすると両方が生きる。

いつ始めるのがよいか。選考が始まってからでは、材料づくりと企業研究と日程管理が同時に走る。先に材料を三つ用意しておけば、以降はそれを質問に合わせて組み替える作業になり、手が空く。


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