全国の有効求人倍率が1.18倍と聞いても、自分の住む県の話とは限らない。ハローワークに届いた求人の数を仕事を探す人の数で割った比率は、都道府県ごとに1.7倍以上の開きがある。厚生労働省は毎月この数字を47都道府県分そろえて公表しており、2026年8月28日に出た最新の集計を開くと、求人が余っている県と足りない県の並びが前の年からさらに動いていた。就職先を県で選ぶときに最初に見るべき数字がここにある。
全国は1.18倍、正社員だけなら1.00倍
まず全体の水準を押さえておきたい。厚生労働省の一般職業紹介状況(令和8年7月分)によると、有効求人倍率(季節調整値)は1.18倍で前月と同じだった。新規求人倍率は2.10倍、正社員に限った有効求人倍率は1.00倍である。
パートを含む全体が1.18倍なのに、正社員だけを数えると1.00倍まで落ちる。この0.18ポイントの差が、求人が多いという感覚と就職活動の実感がずれる理由の一つだ。求人票の数は足りていても、無期の雇用で探すと選択肢はほぼ求職者と同数になる。
年度単位で見ると下がる方向にある。令和7年度分の集計では年度平均が1.20倍で、前年度から0.05ポイント低い。内訳は有効求人が229万8,017人で前年度比4.1パーセント減、有効求職者が190万7,138人で0.7パーセント減だった。求職者がほとんど変わらないまま求人が減ったため倍率が落ちた、という形である。景気が良くなって倍率が下がったのではない点に注意がいる。
最高は福井県と山梨県の1.69倍、最低は大阪府の0.95倍
県別の並びに入る。厚生労働省の報道発表資料には第6表として47都道府県の倍率が載っている。求人を出した事業所の所在地で数える就業地別でみると、令和8年7月の最高は福井県と山梨県の1.69倍で、最低は大阪府の0.95倍だった。上と下で1.78倍ひらいている。
| 都道府県 | 就業地別 | 受理地別 | 差 |
|---|---|---|---|
| 全国計 | 1.18倍 | 1.18倍 | 0.00 |
| 福井県 | 1.69倍 | 1.55倍 | -0.14 |
| 山梨県 | 1.69倍 | 1.47倍 | -0.22 |
| 富山県 | 1.67倍 | 1.46倍 | -0.21 |
| 島根県 | 1.64倍 | 1.44倍 | -0.20 |
| 東京都 | 1.06倍 | 1.69倍 | +0.63 |
| 神奈川県 | 1.04倍 | 0.84倍 | -0.20 |
| 北海道 | 0.98倍 | 0.91倍 | -0.07 |
| 福岡県 | 0.97倍 | 1.06倍 | +0.09 |
| 大阪府 | 0.95倍 | 1.12倍 | +0.17 |
上位に並ぶのは福井、山梨、富山、島根といった人口の少ない県である。下位は大阪府、福岡県、北海道、神奈川県、東京都と、人口規模の大きい地域が占める。働く人の数が多い場所ほど求人倍率は低い。求人の絶対数ではなく、求職者との比で見るとこうなる。
福井県は水準の高さが続いている県だ。労働政策研究・研修機構の都道府県別にみた有効求人倍率によれば、2025年平均の就業地別では福井県が1.84倍で全国一位、富山県1.65倍、香川県1.62倍が続いた。その福井県も2026年7月には1.69倍まで下がっており、高倍率の県でも求人は細り始めている。
東京都は数え方で0.63ポイント動く
同じ県の倍率が二つ出てくるのは集計の単位が違うからだ。就業地別は求人を出した事業所がある場所で数え、受理地別は求人を受け付けたハローワークがある場所で数える。本社が東京都にあって勤務地が地方という求人は、受理地別では東京都に、就業地別では勤務地の県に入る。
東京都はこの差が最も大きい。令和8年7月は受理地別1.69倍に対し就業地別1.06倍で、0.63ポイント離れている。都内のハローワークが受け付ける求人の多くが、実際には都外の勤務地を抱えているということだ。大阪府も受理地別1.12倍に対し就業地別0.95倍で、0.17ポイント高く出る。
逆の向きに動く県もある。山梨県は受理地別1.47倍に対し就業地別1.69倍、富山県は1.46倍に対し1.67倍で、いずれも就業地別のほうが高い。県外で受け付けられた求人の勤務地がその県にある、という構図である。求人情報を県名で検索するとき、その県で働ける求人なのか、その県の窓口を通った求人なのかで意味が変わる。移住を前提に探すなら就業地別のほうが実態に近い。地域を越える就職の進め方はIターン就職とは?仕事の探し方・求人サイト・面接対策を解説に整理がある。
ブロックでは北陸1.49倍、北海道0.98倍
県単位では小さな県の数字が振れやすいので、10のブロックに束ねた数字も用意されている。就業地別の令和8年7月は、北陸が1.49倍で最も高く、四国1.39倍、中国1.37倍、北関東・甲信1.36倍が続く。低いほうは北海道0.98倍、近畿1.05倍、南関東1.09倍の順だ。
北陸と近畿の差は0.44ポイントある。北陸は新潟県1.41倍、富山県1.67倍、石川県1.39倍、福井県1.69倍の4県で、どの県も全国平均を上回る。近畿は滋賀県1.35倍、京都府1.19倍、大阪府0.95倍、兵庫県1.07倍、奈良県1.21倍、和歌山県1.03倍で、大阪府と兵庫県が平均を押し下げている。
九州は1.12倍だが、県ごとの振れ幅が大きい。佐賀県1.34倍、熊本県1.33倍に対し、福岡県0.97倍、沖縄県1.07倍、鹿児島県1.08倍である。福岡市に人が集まるぶん県全体の倍率は下がり、周囲の県では求人のほうが余る。ブロックの平均だけを見ると、この内側の落差が消えてしまう。
倍率の高さは職種で決まっている
では倍率1.69倍の県なら仕事が選べるのか。そうとは言い切れない。同じ厚生労働省の集計を職業別に開くと、求人が余っている職種と足りない職種がはっきり分かれる。令和8年7月の常用(パートを含む)の有効求人倍率は職業計1.05倍だが、建設躯体工事従事者は7.94倍、保安職業従事者は6.54倍、土木作業従事者は6.49倍に達する。
一方で一般事務従事者は0.29倍、事務用機器操作員は0.28倍、美術家やデザイナーなどの職種は0.15倍である。事務従事者全体でも0.36倍にとどまる。県の倍率が高くても、その中身が建設や介護や保安の求人であれば、事務職を探す人の選択肢は増えない。介護サービス職業従事者は3.82倍、社会福祉専門職業従事者は2.43倍、看護師などの職種は1.94倍で、高倍率の職種は人手不足の職種とほぼ重なる。
この構造を踏まえると、県を選ぶ順番が変わってくる。先に職種を決めてから県を見ると、全国平均を下回る県でも自分の分野の求人が厚い場合がある。逆に倍率の高い県へ移っても、希望職種の求人が薄ければ競争の条件は変わらない。地方で働く選択肢の広さは倍率だけでは測れない。働き方の種類から整理した記事として地方で働くとは?移住なし含む5つの働き方とメリット・仕事の探し方が参考になる。
住む場所を決める前に地域と関わってみる道もある。FLASPOのように学生や若手と地域をつなぐ仕組みを使えば、求人票からは見えない仕事の中身を先に確かめられる。Uターンを考える人向けの手順は地方就職とUターンとは何か?成功のポイントを丁寧に徹底解説するにまとまっている。
よくある質問
都道府県別の有効求人倍率はどこで確認できるか。厚生労働省が毎月末に公表する一般職業紹介状況の報道発表資料に、第6表として就業地別と受理地別の両方が47都道府県分載っている。直近13か月の推移も同じ表に入っているため、単月の振れか傾向かを見分けられる。年度平均と暦年平均はそれぞれ4月末と1月末の公表分にまとまる。
季節調整値と実数はどちらを見ればよいか。県どうしを比べたり前月と比べたりするときは季節調整値を使う。新卒の求人が3月に集中するなど月ごとの偏りを取り除いた数字だからだ。求人や求職者の人数そのものを知りたいときは実数を見る。報道発表資料には両方が並んでいる。
倍率が1倍を超えていれば就職できるという意味か。そうではない。有効求人倍率は求人の件数と求職者の人数の比にすぎず、職種や地域や条件が合うかどうかは反映されない。全体で1.18倍の月に一般事務従事者が0.29倍であることが、その限界を示している。倍率は市場の広さを測る目安であり、個人の就職可能性を示す数字ではない。
ハローワークを通さない求人は含まれるのか。含まれない。この統計は公共職業安定所が扱った求人と求職の集計であり、民間の求人サイトや人材紹介会社を通した募集は入っていない。専門職や都市部の求人は民間経路の比重が高いため、実際の募集量は統計より多い。地方の中小企業はハローワークに出す割合が高く、県による網羅性の差も残る。
新卒の就職活動にもこの数字は使えるか。直接は使いにくい。第6表の倍率は新規学卒者を除いて集計されているため、新卒採用の需給とは別の数字だからである。ただし地域の労働市場がどれだけ締まっているかという背景は共通しており、卒業後の転職や地元での再就職を考えるときの土台にはなる。新卒者向けの求人状況は文部科学省と厚生労働省が別に公表している。
アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。
FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。
賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。


