都道府県別の移住先ランキング|希望と実数のずれを読む | FLASPO MAGAZINE

都道府県別の移住先ランキング|希望と実数のずれを読む

移住先の人気ランキングを見て「この県は人が集まっているのだな」と受け取ると、実態を読み損ねる。上位に並ぶ県の多くは、同じ時期に人口を減らしている。ランキングが数えているのは希望であって、移動した人の数ではないからだ。二つの数字を並べると、どこで関心が実際の移住につながっているのかが見えてくる。

2025年の希望地1位は群馬県、相談は7万3千件

移住希望地ランキングとして最も広く参照されているのは、認定NPO法人ふるさと回帰支援センターが毎年発表しているものである。東京の窓口を訪れた相談者とセミナー参加者へのアンケートを集計したもので、2025年の集計では窓口相談部門の1位が群馬県、2位が栃木県、3位が長野県だった。

群馬県は2年連続の首位、栃木県は前年の3位から、長野県は前年の4位から順位を上げた。セミナー部門では群馬県が3年連続の1位で、2位に長野県、3位に和歌山県が入っている。

2025年の移住相談件数は7万3,003件だった。前年の6万1,720件から18.3パーセント増え、5年連続で過去最多を更新している。セミナーは658回開催され、アンケートの回答は窓口1万3,202件とセミナー1万7,481件を合わせて2万7,242件だった。群馬県への相談は30代の子育て世帯が中心で、都内への通勤を前提にした物件探しや、都市部の家賃高騰を背景にした相談が目立つという。関心の量そのものは確実に増えている。

ランキング上位の県も、人口では減っている

同じ県を国勢調査で見ると、印象は反転する。総務省統計局の令和7年国勢調査 人口速報集計結果では、2020年から2025年の5年間で人口が増えたのは東京都と沖縄県の2都県だけだった。

希望地の上位3県はいずれも減少側にある。群馬県は3.7パーセント減、栃木県は3.5パーセント減、長野県は4.5パーセント減である。和歌山県は6.3パーセント減で、減少率では上位に食い込む。

県 2025年の希望地順位 2020年からの人口増減率 協力隊の受入隊員数
群馬県 1位 -3.7% 138人
栃木県 2位 -3.5% 94人
長野県 3位 -4.5% 477人
和歌山県 セミナー3位 -6.3% 105人
北海道 ― -4.6% 1,374人
島根県 ― -6.2% 386人

矛盾しているわけではない。ランキングは東京の窓口に来た人が挙げた希望地の集計であり、転出する人の数や自然減は勘定に入らない。群馬県が首位なのは首都圏からの距離という条件が効いているからで、県全体の人口動態とは別の話になる。ランキングを見るときは、母集団が「移住を考えて東京の窓口に相談した人」に限られている点を押さえておく必要がある。

実際に地方へ動いた人の数は、協力隊の分布に出る

希望ではなく行動を数えた都道府県別のデータとして使えるのが、地域おこし協力隊の受入隊員数である。総務省が2026年4月24日に公表した令和7年度の活動状況によると、隊員数は前年度から286人増の8,196人となり、6年連続の増加で初めて8,000人台に入った。

取組自治体は11団体増の1,187団体で、受入可能な1,461自治体の約81パーセントにあたる。制度が始まった平成21年度の隊員数は89人、自治体は31団体だったので、17年で規模はまったく変わった。

都道府県別では北海道が1,374人で最も多く、長野県477人、島根県386人、福島県351人、岩手県348人、新潟県323人、熊本県297人、宮城県264人、岡山県224人が続く。希望地ランキングで首位の群馬県は138人、2位の栃木県は94人である。関心の量と受け入れの量は、必ずしも同じ県で高くならない。短期の体験では、おためし地域おこし協力隊の参加者が1,450人、インターンが1,414人と、いずれも前年度から増えた。

島根県の386人が示す、自治体あたりの密度

総数の順位だけを追うと見落とすものがある。受け入れている自治体の数で割ると、県ごとの性格がはっきり分かれる。

島根県は386人を19自治体で受け入れている。1自治体あたり20人を超える計算だ。うち隠岐諸島の海士町だけで163人を抱えており、これは単独の自治体としては全国で際立った数字である。一方の長野県は477人を74自治体で分け合っており、1自治体あたりは6人台になる。北海道は1,374人を167自治体で受け入れ、8人台である。

少数の自治体が集中的に受け入れる形と、広い範囲に薄く配置する形は、支援の設計が違う。前者では受け入れ側にノウハウが蓄積しやすく、後者では地域の網の目が広く覆われる。隊員の側の内訳を見ると、20代が33.6パーセント、30代が30.1パーセントで、あわせて6割を超える。40代が20.1パーセント、50代が11.5パーセント、60歳以上が4.4パーセントと続く。男女比は男性59.7パーセント、女性40.3パーセントである。制度の仕組みそのものは地域おこし協力隊とは?給料・応募方法・任期後キャリアを徹底解説で整理している。

定住率7割という数字の中身を開く

移住先を選ぶ材料として意味を持つのは、任期を終えた人がその地域に残ったかどうかである。総務省の定住状況等に係る調査結果では、令和2年4月1日から令和7年3月31日までの5年間に任期を終えた隊員8,762人のうち、6,163人が同じ地域に定住していた。割合は70.3パーセントである。

内訳は、活動地と同一の市町村内に定住した人が5,038人で57.5パーセント、近隣市町村内が1,125人で12.8パーセント、他の地域へ転出した人が2,013人で23.0パーセントだった。転出した人のうち228人は、活動地と関わりのある地域協力活動などに従事している。令和7年3月31日までに任期を終えた隊員は累計で1万5,045人、前回比で2,363人増えた。

同一市町村に残った5,038人の生計の立て方も集計されている。起業が2,296人で45.6パーセント、就業が1,753人で34.8パーセント、就農・就林が583人で11.6パーセント、事業承継が70人で1.4パーセントである。起業の内容では飲食サービス業308人、美術家やデザイナーなど217人、宿泊業181人、小売業174人が多い。就業先では行政関係が480人で最も多く、観光業176人、農林漁業138人が続く。半分近くが起業という分布は、移住後の働き方を考える材料になる。支援金の制度は地方移住の補助金はいくら?国・自治体の支援制度を完全まとめ、住まいの探し方は二地域居住とは?費用・メリット・デメリット・始め方を解説が参考になる。

よくある質問

移住先ランキングは何を根拠に順位を付けているのか。ふるさと回帰支援センターのものは、東京の窓口に来た相談者とセミナー参加者に希望地を尋ねたアンケートの集計である。国の統計ではなく、母集団は首都圏の相談者に寄る。民間の雑誌などが出す別の順位表は、自治体への調査項目を採点して作られており、集計方法が異なるので数字を並べて比較することはできない。

公的な統計で移住の多い県を知る方法はあるか。総務省統計局の住民基本台帳人口移動報告が都道府県別の転入超過数を出しており、これは実際の届出に基づく。ただし通勤圏内での引っ越しも含まれるため、地方移住だけを抜き出すことはできない。地域おこし協力隊の受入隊員数は制度を通った人数に限られるが、都道府県別に公表されている点で比較しやすい。

相談件数が増えているのに人口が減り続けるのはなぜか。相談の件数は関心の量で、人口の増減は転入と転出と出生と死亡の差し引きである。地方の多くの県では、若い世代の転出と高齢化による自然減の規模が、移住による転入を上回っている。関心が増えても人口の向きが変わるまでには距離がある。

県を選ぶときは何を先に見ればよいか。希望地の順位より、その県が実際に何人を受け入れ、何人が残っているかを確認したほうが実用的だ。協力隊の受入自治体数と隊員数が公表されているので、狙っている市町村が何人抱えているかまで降りられる。FLASPOのように学生が短期で地域に関わる形から入り、定住を決める前に土地を見ておく手もある。まずは一次データで規模を掴むところからである。


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