都道府県別の地方創生|交付金の上限と総合戦略の現在地 | FLASPO MAGAZINE

都道府県別の地方創生|交付金の上限と総合戦略の現在地

「うちの県は地方創生に力を入れている」という言い方は、それだけでは中身がわからない。2025年に国の枠組みが入れ替わり、都道府県には市町村より先に自分たちの戦略を検証する役割が振られた。何が変わり、どこまで進んでいるのか。交付金の上限額と採択の実績、そして通知の文面をたどると、県ごとの立ち位置が具体的な数字で見える。

2025年6月、10年続いた枠組みが入れ替わった

2025年6月13日、政府は地方創生2.0基本構想を閣議決定した。2014年に始まった地方創生の10年を振り返り、次の10年の方向を示す文書である。対象期間は今後10年で、中間年度の5年後に必要な見直しを行うと明記されている。

構想の冒頭には率直な反省が置かれている。各地で好事例が生まれたことは成果だが、それが「普遍化」することはなく、人口減少や東京圏への一極集中の流れを変えるには至らなかった。だから2.0は1.0の延長ではないという立て方をしている。

政策は5本柱に整理された。安心して働き暮らせる地方の生活環境の創生、稼ぐ力を高める付加価値創出型の新しい地方経済の創生、人や企業の地方分散、新時代のインフラ整備とAI・デジタルの徹底活用、そして都道府県域を越える広域リージョン連携である。目指す姿は14個の定量的な目標として示された。就業者1人当たりの労働生産性を東京圏と同水準にすること、関係人口を実人数1,000万人・延べ人数1億人まで創出すること、地方への若者の流れを2倍にすること、買い物環境の維持向上を図る市町村の割合を10割にすること、AIやデジタルで地域課題の解決を図る市町村の割合を10割にすることなどが並ぶ。

都道府県に最初に求められたのは、市町村の可視化だった

閣議決定から3日後の2025年6月16日、内閣官房と内閣府は各都道府県知事あてに通知を出した。閣副第462号・府地創第249号、地方自治法第245条の4に基づく技術的な助言である。

この通知が求めているのは二つだ。地方創生2.0を推進する取組の早期着手と、地方版総合戦略の検証・見直しである。まち・ひと・しごと創生法第9条の都道府県総合戦略と第10条の市町村総合戦略の両方が対象になる。

注目したいのは、広域自治体である都道府県には市町村に先行して評価・検証を進めることが求められている点だ。基本構想でも都道府県の役割として、市町村間の調整や補完に加えて「市町村の状況の可視化」が挙げられている。統計指標やデータを使って各市町村の位置を見えるようにし、市町村自身の動きにつなげる、という順序である。議論の場については、産官学金労言士などの多様な主体を入れることと、若者や女性の参画を確保することが留意事項として書かれている。意見を聞くだけで終わらせず議論を行うことが重要だという但し書きまで付いている。好事例の扱いにも注意書きがあり、先進的な取組をそのまま移植する「コピー」ではなく、地域の特性や資源、課題に応じて柔軟に取り入れることが重要だとされた。

交付金の上限は、自治体の種類と事業の型で決まる

政策の中身を動かす財源が、新しい地方経済・生活環境創生交付金である。令和6年度補正予算で創設され、第2世代交付金、デジタル実装型、地域産業構造転換インフラ整備推進型、地域防災緊急整備型の4つの類型を持つ。

中心にある第2世代交付金は、ソフト事業と拠点整備事業で1自治体あたり年度あたりの国費上限が決まっている。都道府県と中枢中核都市は15億円、市区町村は10億円で、補助率は2分の1である。インフラ整備事業だけは事業計画期間中の総額で管理され、都道府県は50億円が上限になる。

事業の型 都道府県の上限(国費) 市区町村の上限(国費) 補助率
第2世代・ソフト事業 15億円/年度 10億円/年度 1/2
第2世代・拠点整備事業 15億円/年度 10億円/年度 1/2
第2世代・インフラ整備事業 50億円/計画期間 10億円/計画期間 1/2等
地域防災緊急整備型 6,000万円 4,000万円 1/2

計画期間はソフトと拠点整備が原則3か年度以内で最長5か年度、インフラ整備が原則5か年度以内で最長7か年度である。新規事業の申請上限は自治体の規模を問わず10件で、一定の条件を満たす事業は枠外で2件まで追加できる。制度の詳細は内閣府の交付金の概要資料にまとまっている。類型ごとの違いはSWOT分析の未来|AI・DX・地方創生2.0時代のフレームワーク進化論でも触れている論点と重なる。

2025年度の採択は2,334億円、1,580団体

予算規模は数年で大きく動いた。当初予算は令和6年度が1,000億円、令和7年度は2,000億円へ倍になった。補正予算も令和5年度の735億円から令和6年度は1,000億円に積み上がっている。それ以前の地方創生推進交付金は長く600億円前後で推移していたので、桁が変わったと言ってよい。

令和7年9月2日の第2次採択の公表資料によれば、令和7年度にはそれまでに2,214億円が採択され、第2次採択分として296団体・314件・119億円が加わった。年度の採択額の合計は2,334億円、1,580団体となる見込みである。全国の市町村数は1,719なので、都道府県を含めても採択団体の広がりは相当に広い。

採択事例には具体的な指標が付いている。兵庫県洲本市の自動運転バス実証は交付対象事業費0.8億円で、在来路線の1日当たり利用者を16人、新規路線を40人増やし、市街地の飲食消費額を20パーセント伸ばすことを掲げた。静岡県小山町の食を核とした事業は3.0億円で、農業産出額3,570万円増、ふるさと納税寄付額3億3,000万円増を置いている。高知県本山町と高知県が組んだ棚田の事業は2.8億円で、窓口転入届で数える移住者の増加を15人と設定した。数値の置き方に、その地域が何を成果と見なしているかが出る。

動き出している県は、参加している数で見える

都道府県ごとの取り組み具合を一枚の順位表で示す公式データは、今のところ存在しない。代わりに手がかりになるのは、国の施策にどれだけ手を挙げているかという参加数である。

たとえば地域の働き方・職場改革を起点とした社会変革では、公募で選ばれた68自治体が先行実施に入った。内訳は24県と44市町村である。各府省横断のサポートメンバーと組んで「地域働き方・職場改革ネットワーク」を形成し、今後3年から5年で成果を蓄積して全国への波及を目指すという設計になっている。47都道府県のうち半分ほどが名を連ねた形だ。

分野別の当面の目標も具体的だ。2030年までにスマート農業技術を活用した面積を50パーセントにすること、2026年までにスポーツツーリズム関連の消費額を3,800億円にすること、3年後に全国100か所で小規模・地域共生ホーム型のCCRCを展開することなどが挙げられている。中堅企業については付加価値増加率を実質で年4パーセント以上、つまり経済成長目標の4倍を目指すとされた。国の側の支援策としては、地方創生伴走支援制度の拡充、RESASやRAIDAによる情報支援の強化、新地方創生交付金の使い勝手向上が並んでいる。政策の全体像を先に押さえたい場合は地方創生とは?定義・成功事例・大学生ができる関わり方を解説から入るとよい。

よくある質問

地方版総合戦略はいつまでに作り直すのか。期限は示されていない。国は2025年中に総合戦略を策定するとし、地方公共団体はそれを勘案して策定に努めることとされた。通知では、2.0は1.0の単なる延長ではないため策定には一定の準備期間を要すると見込まれ、国の総合戦略ができる前から検証と見直しを進めることが重要だと書かれている。

交付金は県が申請するのか、市町村が申請するのか。どちらも申請できる。上限額が都道府県と中枢中核都市で15億円、市区町村で10億円と分かれているのは、両者が別に申請する前提だからである。高知県本山町の例のように、町と県が共同で計画を立てる形もある。

評価はどう行われるのか。第2世代交付金の評価基準は、目指す将来像および課題の設定、KPI設定の適切性、自立性、地域の多様な主体の参画の4点である。採択後は産官学金労言の参画による進捗状況と効果測定を実施し、効果検証と評価結果、改善方策の公表が義務化されている。事業の検証結果が外から読めるようになっているのは1.0からの変更点だ。

学生が関わる余地はあるのか。基本構想は若者や女性の参画確保を繰り返し求めており、議論の場の体制整備に努めることが留意事項として明記されている。自治体の総合戦略の検討会議や、産官学金労言士で構成する組織体がその窓口になる。FLASPOのように大学生が地域のプロジェクトに入る形も、構想が言う多様な主体の参画に含まれる。制度の予算や補助率を先に確認しておくと、提案の現実味が上がる。


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