築何十年の家を借りて直しながら住む、という選択は、ひと世代前なら経済的な妥協として受け取られていた。いまは20代や30代が積極的に選ぶ形になっている。理由を聞けば「広い」「安い」「好きに手を入れられる」と返ってくるが、それだけでは、なぜこの十数年で急に増えたのかが説明できない。公的な調査の数字を並べると、個人の趣味の話ではなく、住宅の余り方と支援制度の設計が重なった結果だと分かってくる。
担い手の年齢構成は、すでに偏っている
地方に入って古い建物に関わる若い人はどれくらいいるのか。近い形で数えられるのが地域おこし協力隊である。総務省の集計では、令和6年度の隊員数は7,910人で、前年度から710名増えた。受け入れている自治体は1,176団体あり、受入可能な1,461団体の約8割に達している。
注目したいのは年齢の内訳だ。20歳から29歳が33.2パーセント、30歳から39歳が31.0パーセントで、合わせて隊員の6割強を20代と30代が占める。40代は20.5パーセント、50代は10.9パーセント、60歳以上は4.2パーセントにとどまる。男女比は男性61.0パーセント、女性39.0パーセントだった。
入り口も広がっている。任用の前に短期間現地で活動するインターンの参加者は、令和3年度の106人から令和6年度は1,047人へ増え、そのうち150人が隊員として任用される見込みとなっている。まず数日から数週間その土地で過ごし、それから住むかどうかを決めるという順番が、制度の側に用意されたわけだ。
| 年代 | 隊員の構成比(令和6年度) |
|---|---|
| 19歳以下 | 0.2パーセント |
| 20〜29歳 | 33.2パーセント |
| 30〜39歳 | 31.0パーセント |
| 40〜49歳 | 20.5パーセント |
| 50〜59歳 | 10.9パーセント |
| 60歳以上 | 4.2パーセント |
住宅が世帯より多い国で家を探すということ
若い世代が古い家に手が届く背景には、住宅が余っているという構造がある。令和5年住宅・土地統計調査によると、2023年10月1日現在の総住宅数は6504万7千戸に対し、総世帯数は5621万5千世帯だった。1世帯あたりの住宅数は1.16戸である。1968年に総住宅数が総世帯数を追い越して以来、この差は開いたままだ。
空き家の数も一貫して増えている。1993年から2023年までの30年間で約2倍になった。増え方が緩まないので、地方の集落では、貸せる状態の家が借り手より先に並んでいる状況が生まれる。家賃の交渉が成り立ち、内装に手を入れる許可も出やすい。都市部の賃貸では想像しにくい条件が、ここでは普通になる。
つまり「若者が古民家を好むようになった」という語り方は、順番を取り違えている。好みが変わったのではなく、安く広い家に手を入れて住むという選択肢が、供給の側から先に開いた。そのうえで、改装の過程そのものを面白がる人が入ってきた。順番を押さえておくと、ブームが終われば戻るという見方が的を外していることも見えてくる。
任期のあとに残る人、離れる人
定着しているのかどうかは、任期終了後を追った調査に出ている。総務省が令和7年5月時点で実施した調査では、直近5年間に任期を終えた隊員は8,762人で、そのうち6,163人、70.3パーセントが同じ地域に定住していた。内訳は、活動地と同一市町村内が5,038人で57.5パーセント、近隣市町村内が1,125人で12.8パーセントである。
一方、他の地域へ転出した人は2,013人、23.0パーセントいた。ただしこのうち228人は、離れたあとも活動地と関わりのある地域協力活動などに従事しているとされる。住み続けることだけを成功の定義に置くと、この228人の形が視界から落ちる。距離を取りながら関わり続ける道筋は、関係人口という言葉で整理されてきた領域と重なる。
累計で見ると、令和7年3月31日までに任期を終えた隊員は15,045人に達している。前回の集計から2,363人増えた。7割という定住率は、この規模でならされた数字である。だから個別の集落について、同じ確率が当てはまると考えるのは危うい。制度の全体像として堅いという話と、自分の着任先が続くかという話は別に扱う必要がある。
建物の性格が、仕事の形を決めてしまう
定住した人たちが何で生計を立てているかを見ると、古い建物との関係がはっきりする。活動地と同一市町村内に定住した5,038人のうち、起業が2,296人で45.6パーセント、就業が1,753人で34.8パーセント、就農・就林が583人で11.6パーセント、事業承継が70人で1.4パーセントだった。半分近くが自分で始めている。
起業の中身で最も多いのは飲食サービス業の480名で、総務省の資料にも古民家カフェと農家レストランが例示されている。美術家やデザイナー、写真家が176名、ゲストハウスや農家民泊を含む宿泊業が138名。事業承継の70名には、伝統工芸の承継や民宿の承継が並ぶ。いずれも、広い土間や続き間、天井の高さが使える業種である。
逆に言えば、古い家を手に入れた時点で、選べる仕事は狭まっている。断熱も配線も現代の事務作業には向かないし、面積あたりの効率で勝負する業態とは噛み合わない。物件を決めてから何をするか考えると、この制約に後から気づくことになる。何をやりたいかと、どの建物なら成り立つかは、同時に決めるほうが安全だ。
つまずくのは資金より前の段階
失敗の話は、改修費が足りなかったという形で語られることが多い。だが実際には、その手前で決まっている部分が大きい。着任してから物件を探し始めると、任期3年のうち1年は探索と交渉に消える。残り2年で改修と開業の準備を進めることになり、任期が切れる時点で収入が立ち上がっていないという事態が起きる。
もうひとつは、建物の所有関係である。相続人が複数いる家は、貸す側の意思決定に時間がかかる。売買でも賃貸でも、誰の同意が必要なのかを最初に確かめておかないと、改修の計画が固まったところで止まる。市町村の空き家担当や指定された支援法人に、所有関係の整理まで相談できるかを聞いておくと早い。
協力隊という入り口を検討しているなら、制度の全体像と、向かない場合の見極め方を先に読んでおくと判断が速くなる。若い世代と地域を企画でつなぐFLASPOの現場でも、建物から始める人ほど、着任前の下調べの厚さが後の差になっている。
よくある質問
20代でも古い家を借りられますか
年齢そのものが障害になることは少ない。むしろ問われるのは、改修の見込みと、続ける根拠をどう示せるかである。所有者にとっては、傷んだ家を放置して管理不全空家等と判断されるより、手を入れてくれる借り手がいるほうが得になる。協力隊や移住支援の枠組みに乗っていると、市町村が間に入れるため話が進みやすい。
改修は自分でやったほうが安く済みますか
内装の仕上げや塗装は自力の余地があるが、構造と設備は分けて考えたほうがいい。柱や梁の補強、電気配線、給排水は資格や確認が絡み、後から直すと二重の費用になる。自分で手を入れる範囲を先に線引きし、残りを施工者に見積もらせる順番にすると、総額の見通しが立つ。
任期が終わったあと、収入はどうなりますか
調査では定住者の45.6パーセントが起業を選んでいるが、これは裏を返せば、勤め先に入るだけでは収入が足りない地域もあるという意味でもある。着任中から複数の収入源を並行して立てておく人が多い。任期の2年目には、任期後の柱を一つ決めて準備に入る、という時間配分が現実的だ。
家族や子どもがいても始められますか
隊員の3割強は30代で、家庭を持って着任する人も含まれる。判断の分かれ目は建物の性能で、断熱と水まわり、それに冬の暖房費が生活の質を左右する。改修の優先順位を、見た目より先に温熱環境と安全に置けるかどうかで、続くかどうかが変わってくる。
出典
総務省「令和6年度 地域おこし協力隊の隊員数等について」/総務省「令和7年度 地域おこし協力隊の定住状況等に係る調査結果」/総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」/国土交通省「空家法と2023改正空家法」
アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。
FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。
賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。


