移住の現状を数字で確かめる|相談7万件と転入超過12万人の読み方

移住の現状を数字で確かめる|相談7万件と転入超過12万人の読み方

移住が増えているのか減っているのかは、どの数字を見るかで答えが変わる。相談窓口の件数を追えば右肩上がりに見えるし、住民票の移動を追えば都市への集中がまだ続いているように見える。どちらも事実で、見ている段階が違うだけである。公的に確かめられる三つの数字を、相談、希望地、実際の移動という順に並べてみる。

窓口に届く相談は5年続けて記録を更新している

国内で最も相談が集まるのは、東京・有楽町にあるふるさと回帰支援センターである。同センターが公表した2025年の集計によると、面談・電話・メール・見学・セミナー参加を合わせた相談件数は7万3,003件だった。前年の6万1,720件に対して18.3パーセントの増加であり、これで5年続けて過去最高を更新したことになる。

月別で見ても勢いが分かる。11月に8,410件、6月に7,480件、7月に6,910件と、年のうち3度も月間の記録が塗り替えられた。年明けの1月も5,788件と前年の121パーセントに達している。特定の月に偏った跳ね上がりではなく、通年で底上げが起きている形だ。

相談者の年代構成も、かつての印象とは違う。20代、30代、40代を合わせるとおよそ7割を占める。定年後の田舎暮らしという枠組みでは説明がつかない層が、働きながら住む場所を選び直そうとしている。制度の側から何が使えるかを確かめたい人には、国と自治体の支援制度を一覧にした記事が出発点になる。

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希望地の上位は、遠い田舎ではなく通える距離にある

同センターが毎年発表している移住希望地ランキングは、相談者がどこを見ているかを映す。2025年の窓口相談では群馬県が2年続けて首位となり、栃木県が前回の3位から2位へ、長野県が前回の4位から3位へ上がった。上位三つのうち二つが北関東で占められている点に、いまの移住相談の性格が出ている。

群馬県への相談の中心は30代の子育て世帯で、都内への通勤を前提にした物件探しが目立つ。背景にあるのは都市部の家賃高騰である。栃木県で特徴的なのは女性相談者の伸びで、2024年に男女比が逆転して以降、2025年はその傾向がさらに広がった。長野県では20代の相談が増えており、結婚前の段階から生活設計を組み立てる姿勢が読み取れる。

順位 都道府県 前回順位 相談で目立った層
1位 群馬県 1位 都内通勤を前提とする30代の子育て世帯
2位 栃木県 3位 女性の相談者が2年続けて増加
3位 長野県 4位 結婚前から生活設計を考える20代

この並びを自治体の立場で読むと、競合相手は同じ県内の隣町ではないことが分かる。東京駅からの所要時間と家賃の組み合わせで比較されているのだから、示すべき情報は自然の豊かさより、通勤の実測時間と住居費の具体額になる。

住民票の移動で見ると、集中はまだ解けていない

相談が増えれば人が動くかというと、そこには距離がある。総務省の住民基本台帳人口移動報告2025年結果によれば、東京圏の転入超過は12万3,534人だった。前年より1万2,309人縮小し4年ぶりの縮小となったものの、10万人を超える規模で人が集まり続けている事実は変わらない。

都道府県別では東京都が6万5,219人で最多、次いで神奈川県が2万8,052人、埼玉県が2万2,427人と並ぶ。圏域単位では大阪圏が8,742人の転入超過で前年より6,063人拡大した一方、名古屋圏は1万2,695人の転出超過だった。人の流れは全国に散っているのではなく、いくつかの受け皿に再編されている。

相談7万3,003件と転入超過12万3,534人は、単純に引き算できる数字ではない。相談は延べ件数であり、一人が何度も窓口を訪れる。転入超過は転入から転出を差し引いた純増である。ただ、関心の高まりが住所の移動として現れるまでに時間と条件がかかることは、この二つの並びから読み取れる。住み替えずに二つの拠点を持つ選び方については、二地域居住の費用と始め方をまとめた記事が参考になる。

関心と行動のあいだに立っているものは何か

その距離の正体は、内閣官房が令和2年9月にまとめた東京圏、地方での暮らしや移住及び地方への関心に関する意識調査に出ている。東京圏に住む人が地方へ移ることを妨げている理由の上位は、求めている業種や職種の働き口が見つからないことが39.4パーセント、買い物や交通といった生活利便性が低いことが35.6パーセント、現在と比べて賃金が安くなることが34.2パーセントだった。

裏返して、どうなれば移ってもよいと思うかを聞いた設問では、希望する仕事があることが48.9パーセント、納得できる給与水準の仕事があることが48.5パーセント、生活利便性が充実することが32.6パーセントと続く。障壁の上位と条件の上位がきれいに重なっており、仕事と収入がほぼ単独の論点であることが分かる。

男女で差が出る項目もある。女性は男性に比べて、買い物や交通の利便性、そして同居する家族や親族の都合で東京圏を離れにくいという回答が、いずれも10ポイントほど高い。栃木県で女性相談者が増えているという先の傾向と併せると、この層に効く情報は移住後の暮らしの具体である。

同じ統計を、送り出す側と受け入れる側でどう使うか

自治体の担当者がこれらの数字から取り出せるのは、まず相談の総量が伸びているという前提である。関心を集める段階に予算を重ねるより、すでに窓口まで来た人が次の一歩へ進めるかどうかに資源を寄せたほうが効率がよい。具体的には、求人情報の鮮度、住居の空き状況、通勤の実測データ。調査が示す障壁の順番と、用意する情報の順番を揃えることになる。

個人の側が読むときの要点は別にある。希望地ランキングの上位は他の人も見ているため、物件と求人の競争率はそこで上がる。順位の低い県が暮らしにくいわけではなく、単に相談件数という物差しに乗っていないだけのことも多い。ランキングは自分の条件を確かめる道具として使い、最後は現地で二泊三日を過ごしてから決めたい。

判断の前に短期で関わってみる方法もある。地域の仕事や暮らしに数日から数週間だけ入ってみると、統計が語らない部分が手触りで分かる。FLASPOが扱う地域体験のような仕組みは、決断を急がずに情報を増やす手段として使える。20代で移住を検討し始めた段階の整理には、費用と手順をまとめた記事が合う。

よくある質問

移住相談の件数が増えているのに、地方の人口が減り続けているのはなぜでしょうか。相談は延べ件数で、一人が複数回カウントされる。加えて、地方では出生数を死亡数が上回る自然減が続いており、転入で埋めきれない規模になっている。社会増減と自然増減は別の話として分けて見る必要がある。

移住希望地ランキングは、どこまで信じてよいのでしょうか。ふるさと回帰支援センターの窓口とセミナーに来た人の集計なので、母集団は首都圏在住の相談者に寄る。関西や中部から動く人の傾向は別の窓口の統計に表れる。自分が住んでいる圏域と母集団が合っているかを最初に確かめたい。

仕事を先に決めるべきか、住む場所を先に決めるべきか迷っています。調査で障壁の一位と二位が仕事と収入である以上、順番としては仕事の見通しが先になる。ただし現地に行かないと求人の実態が見えない地域も多いため、候補地を二つか三つに絞ってから並行して当たるのが現実的である。

統計の原典はどこで確認できますか。相談件数と希望地ランキングはふるさと回帰支援センターの報道発表、転入超過は総務省統計局の住民基本台帳人口移動報告、移住の障壁は内閣官房の意識調査が一次資料にあたる。数字を引用するときは、調査年と母集団の定義まで併せて控えておくと誤読を防げる。


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