関係人口という言葉が施策に入ってから、そろそろ十年が見えてきた。最初は概念の紹介ばかりだった資料に、いまは推計人数と数値目標と登録制度の設計が並ぶ。どこまで進み、どこで止まっているのか。公表されている数字を時系列に置き直すと、伸びている部分と動いていない部分がかなりはっきり分かれて見えてくる。
規模は2割強で、伸びは緩やか
もっとも新しい推計から押さえたい。国土交通省の「地域との関わりについてのアンケート」によれば、2023年時点で全国の18歳以上の居住者およそ1億275万人のうち、関係人口はおよそ2,263万人。割合にして約22パーセント、つまり5人に1人強という水準にある。
内訳は、現地に足を運ぶ訪問系がおよそ1,884万人で約18パーセント、現地には行かず寄付や購入などで関わる非訪問系がおよそ379万人で約4パーセント。訪問系が主体で、非訪問系はまだ小さい。
この調査は数年おきに実施されてきた。以前の回では、全国の18歳以上およそ1億615万人のうち訪問系がおよそ1,827万人と推計され、2割弱という表現が使われていた。三大都市圏だけを見た回では、18歳以上およそ4,678万人のうち訪問系がおよそ1,080万人で2割強だった。
| 調査の回 | 対象 | 18歳以上人口 | 訪問系 | 非訪問系 |
|---|---|---|---|---|
| 前の回 | 三大都市圏 | 約4,678万人 | 約1,080万人(2割強) | 集計対象外 |
| 前の回 | 全国 | 約1億615万人 | 約1,827万人(2割弱) | 集計対象外 |
| 2023年時点 | 全国 | 約1億275万人 | 約1,884万人(約18%) | 約379万人(約4%) |
訪問系だけを取り出すと1,827万人から1,884万人で、伸びは6万人単位ではなく57万人ほど。数字としては増えているが、母数の取り方が回ごとに違うため、割合で見るとほぼ横ばいに近い。関係人口の裾野が急拡大している、という言い方には慎重であったほうがよい。むしろ非訪問系を集計に加えたことで、合計値が2割強まで見えるようになった、と読むのが実態に近い。公表資料は国土交通省の報道発表にある。
国は10年で1,000万人という約束をした
横ばいに近い実績に対し、政策側の目標はここ数年で一気に具体化した。令和7年6月13日に閣議決定された地方創生2.0基本構想は、今後10年を対象期間としたうえで、関係人口を1,000万人創出するという数値目標を掲げている。
創出という言い方に注意したい。現在の推計2,263万人を3,263万人にするという意味なのか、新たに関わり始める人を10年で累計1,000万人積み上げるという意味なのかで、難易度はまったく違う。基本構想は5年後の中間年度に見直しを行うとしており、測り方の整理はその過程で詰められていく見込みだ。
数値目標が置かれたこと自体は、この分野にとって転換点になる。関係人口は定住人口や交流人口と違って数え方が確立していない概念であり、目標を約束すれば、数えられる形に定義を寄せる必要が生じる。だからこそ国は登録という手段に踏み込んだ。
地方創生の枠組み全体の変化を先に押さえたい人は、地方創生2.0までの流れを追った記事のほうが見通しがよい。基本構想の本文は内閣官房のサイトで公開されている。
ふるさと住民登録制度が動き始めた
目標を数えられるようにする仕組みが、ふるさと住民登録制度である。住民票のある場所以外の地域と継続的に関わる人を登録し、関係人口を量として広げると同時に、関わりの質も上げることを狙う。総務省はガイドラインのバージョン1.0を2026年3月27日に公表した。
登録は専用のスマートフォンアプリで行い、二段構えになっている。基本登録は地域のイベント情報などを受け取る立場で、入口としての敷居は低い。指定された活動に年3回以上参加した人はプレミアム登録に進み、交通費や宿泊費の補助といった支援を受けられる。関わりの回数を条件に置いた設計で、登録者数がそのまま活動実績に近づくようにしてある。
制度開始に向けたモデル事業には全国から161件の応募があり、7道県と21市町村の計28団体が選ばれた。7道県は北海道、宮城県、富山県、長野県、和歌山県、鳥取県、高知県で、複数の市町村と組む連携モデルとして動く。21市町村は単独で進める個別モデルにあたり、岩手県陸前高田市のように大学生など若い世代に企画づくりから加わってもらう例もある。
全国でのサービス開始は令和8年度中が目標とされている。政府は10年で実登録1,000万人、のべ1億人という水準を見込んでおり、基本構想の数値目標とこの制度が対応していることが分かる。制度の最新情報は総務省のふるさと住民登録制度のページに集約されている。
自治体側は試行から実装の段へ
国の側の動きだけを並べると順調に見えるが、現場の蓄積はもっと長い。総務省は平成30年度から関係人口創出・拡大事業のモデル事業を始め、初年度に30団体、令和元年度に44団体を採択して、二年でのべ74件を支援した。令和2年度は25団体だった。
この時期の事業は、関わりの入口をどう作るかに重心があった。都市部でのセミナー、短期の現地プログラム、移住相談の前段としての体験機会。集客まではできても、翌年に同じ人が戻ってくるかどうかで結果が分かれた自治体が多い。
登録制度が入ると、この課題の性質が変わる。名簿を持てるようになるため、一度来た人に再び声をかける手段が制度として用意される。裏返すと、声をかけた後に渡す役割を準備できているかが問われる段階になる。担当者の実務としてどう組むかは地方公務員と関係人口づくりの記事が具体的だ。
学生を巻き込む設計では、単年度で終わらせないことが鍵になる。FLASPOが地域と組んだプログラムでも、初年度に参加した学生が翌年は企画側に回る形を取ったところで継続率が変わった。モデル地域が若い世代に企画から関わらせているのは、同じ経験則に沿った判断だろう。
数字を引くときに気を付けること
関係人口の統計はすべて推計値であり、住民基本台帳のような全数の把握ではない。アンケートの回答から母集団に引き延ばして算出しているため、質問の仕方が変われば数字も動く。訪問系と非訪問系という区分を設けるかどうかだけで、合計値は数百万人単位で変わる。
また、調査の回によって18歳以上人口の前提が違う。前の回は約1億615万人、2023年時点は約1億275万人が母数として使われている。人数の差だけを比べて増減を語ると、母数の差を伸びと読み違える。割合を併記するのが安全だ。
登録者数が公表され始めたときも、同じ注意が要る。登録は制度への申し込みであって、地域との関わりが続いていることの証明ではない。実登録とのべ登録が分けて語られているのは、この差を織り込んでいるからだと考えられる。
現状を一言でまとめれば、規模は2割強で足踏み、政策の器は急速に整った、という段階にある。器に見合う中身が入るかどうかは、ここから数年の登録制度の運用で見えてくる。
よくある質問
関係人口はいま何人いますか。国土交通省の2023年時点の推計では約2,263万人で、18歳以上人口の約22パーセントにあたる。訪問系が約1,884万人、非訪問系が約379万人という内訳になる。
ふるさと住民登録はいつから使えますか。全国向けの提供は令和8年度中の開始が目標に置かれている。それに先立って、選定された28団体がモデル事業として先行して動いており、地域によっては制度の完成を待たずに登録の機会が出てくる。
登録すると住民票や税金はどうなりますか。この制度は住民票を移すものではなく、課税関係が変わる仕組みでもない。あくまで地域と関わる人を地域側が把握し、情報や支援を届けるための登録である。
自分の住む自治体がモデル地域でない場合はどうすればよいですか。モデル事業は制度設計のための先行実施であり、全国展開後は対象が広がる見込みだ。それを待たずに関わりたいなら、二地域居住やふるさと納税など既存の入口から始める手もある。関わり方の全体像は関係人口と交流人口の違いを整理した記事から確かめられる。
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