地域に関わる人を増やしたい、と自治体の担当者が言うとき、頭の中には具体的な誰かがいる。農繁期に手伝いに来る人なのか、返礼品を毎年頼んでくれる人なのか、テレワークで半月だけ滞在する人なのか。この三者に同じ施策をぶつけても噛み合わない。だから関係人口は分類されてきた。国が使っている分け方には型があり、そこを押さえると自分の関わりも他人の施策も読み解きやすくなる。
なぜ分類が要るのか
関係人口という言葉は、定住でも観光でもない関わりをまとめて指すために生まれた。まとめる力が強い言葉は、そのままでは施策の設計に使えない。誰に何を差し出せば関わりが続くのかを決めるには、いったんばらす作業が必要になる。
もうひとつの理由は計測にある。国土交通省は「ライフスタイルの多様化と関係人口に関する懇談会」の最終とりまとめを令和3年3月に出し、その後もアンケート調査で人数の推計を続けている。推計するには、どういう行動をした人を数に入れるかを先に決めなければならない。分類はその定義作業の副産物でもある。
実務の側から見ると、分類は予算の配分表に近い。交通費の補助が効く層と、オンラインでの接点づくりが効く層は別だ。混ぜたまま事業を組むと、参加者は集まったが翌年につながらない、という結果になりやすい。
以下では国土交通省の分け方と総務省の分け方を順に見る。前者は行動で切り、後者は当人の背景と気持ちで切る。用途が違うので、どちらが正しいという話ではない。
訪問するかしないかで大きく二つ
国土交通省の推計がまず立てる線は、その地域に足を運んでいるかどうかだ。運んでいれば訪問系、運んでいなければ非訪問系になる。
2023年時点の推計では、全国の18歳以上の居住者およそ1億275万人のうち、訪問系がおよそ1,884万人で全体の約18パーセント、非訪問系がおよそ379万人で約4パーセント。合わせて約2,263万人、つまり18歳以上の2割強が何らかの形で特定の地域と関わっていることになる。
非訪問系という枠が置かれているところが、この分類の要点だ。ふるさと納税で寄付を続ける、産直の品を定期的に取る、オンラインの地域会議に顔を出す。現地に行かないままでも成り立つ関わりを最初から数に含めている。寄付を入口にした関わりの仕組みはふるさと納税の仕組みの記事で扱っている。
二つに割る線の引き方には理由がある。現地に行く関わりは交通費と時間という壁を越えており、そこを越えた人は地域側から見て役割を渡しやすい相手になる。行かない関わりは壁が低いぶん人数が増えにくいわけではないが、顔と名前が結び付かないまま続くことも多い。壁の有無で層を分けておくと、次に何を用意すべきかが変わることが見えてくる。
訪問系の中身も一様ではない。年間の訪問日数を見ると、1日以下がおよそ2割、2日から7日がおよそ5割、8日以上がおよそ3割という分布になる。年に一度だけ顔を出す人と、月に一度通う人が同じ枠に同居している。
訪問系は5つのタイプに割れる
訪問系をさらに割ると、行動の目的で五つに分かれる。地域の課題解決に直接手を貸す直接寄与型、現地で働く就労型、テレワークで滞在しながら働く就労型、祭りや会合に参加する参加・交流型、趣味や買い物を目的とする趣味・消費型である。
| タイプ | 推計人数 | 訪問系に占める割合 | 典型的な行動 |
|---|---|---|---|
| 趣味・消費型 | 約711万人 | 約38% | 登山や釣り、店や生産者を目当てに通う |
| 参加・交流型 | 約485万人 | 約26% | 祭りやイベント、地域の会合に加わる |
| 直接寄与型 | 約437万人 | 約23% | 農作業の手伝い、災害復旧、課題解決の支援 |
| 就労型(テレワーク) | 約145万人 | 約8% | 滞在しながら本業をこなす |
| 就労型(現地就労) | 約105万人 | 約6% | 季節労働や短期の現地勤務 |
数字を並べると印象が変わる。もっとも多いのは趣味・消費型で、訪問系の四割近い。地域づくりの文脈で語られやすい直接寄与型は二割強にとどまる。施策の議論は課題解決に貢献する層に集まりがちだが、実際のボリュームは自分の楽しみのために通う層にある。
就労型の二つが合わせて一割強という水準も見どころだ。テレワークによる関わりが独立した類型として立っていること自体が、この10年の働き方の変化を映している。滞在しながら働く形の実際はワーケーションの定義と始め方を扱った記事のほうが詳しい。
推計の元になった調査結果は国土交通省の報道発表で公表されている。なお同じ調査の以前の回では、全国の訪問系がおよそ1,827万人と推計されていた。
背景と想いで切る総務省の4類型
行動で切る国土交通省に対し、総務省は別の軸を使う。地域との関わりの強さと、地域への想いという二つを取り、四つの型に整理している。
一つ目は近居で、その地域にルーツがあり、比較的近くに住んでいる層。二つ目は遠居で、ルーツはあるが遠方に住んでいる層。三つ目は仕事や観光などを通じて過去に関わったことがある層。四つ目は居住地とその地域を行き来する層で、風の人と呼ばれることもある。
この分け方が有効なのは、声のかけ方を考えるときだ。遠居の層には同窓会や帰省の機会が接点になり、過去に一度関わっただけの層には思い出せるきっかけを作るところから始まる。行き来する層は既に習慣ができているので、役割を渡す段階に進める。
自治体の現場でこの整理がどう使われているかは、地方公務員と関係人口づくりの記事に具体例がある。制度の枠組みそのものは総務省の関係人口のページにまとまっている。
分類を使うときに外しやすい点
型に当てはめる作業には落とし穴がある。まず、一人が複数の型に同時に入る。祖父母の家に帰りながら祭りの準備を手伝い、帰りに直売所で買い込む人は、遠居であり参加・交流型であり趣味・消費型でもある。推計上はどこかに寄せて数えるが、実際の人間は割り切れない。
次に、型は移動する。趣味で通っていた人が声をかけられて運営側に回れば、消費する側から寄与する側へ動く。分類を固定した名簿として持つと、この移動を見落とす。時点を区切った断面として扱うほうが実態に合う。
三つめは、割合の大きさと施策の優先順位を混同しないことだ。趣味・消費型が最多だからそこに予算を集めるべき、とは限らない。数が多い層は放っておいても来る層でもある。逆に人数の少ない就労型は、一人あたりが地域に落とす時間と金額が大きい。どの層を厚くしたいのかは、地域の課題から逆算するしかない。
若い世代の場合、入口は趣味や学びで、そこから寄与する側に移る道筋が現実的だ。FLASPOが扱ってきた学生のプロジェクトも、最初の訪問は課題解決を名目にしていなくても、二年目に役割が変わっていく例が多かった。
よくある質問
自分がどのタイプか分からないときはどうすればよいですか。直近1年でその地域に行ったかどうかを最初に確かめると早い。行っていれば訪問系の五つの中から目的が近いものを選び、行っていなければ非訪問系になる。厳密に一つへ寄せる必要はない。
推計の人数は毎年更新されるのですか。毎年ではない。国土交通省が数年おきにアンケート調査を行い、そのたびに推計値を出している。数字を引用するときは何年時点の調査かを併記したほうが安全だ。
非訪問系は関係人口として弱いのでしょうか。関わりの濃さと価値は別の話になる。返礼品を毎年頼み続ける人は、地域の生産者にとって収入の土台であり、現地に来ないことが欠点になるわけではない。ただし課題解決の担い手を探している自治体にとっては、訪問につながる設計が課題として残る。
分類は自治体ごとに独自に作ってもよいですか。実務では珍しくない。国の類型は全国を横断して数えるための枠であり、個別の地域では産業構造に合わせた切り方のほうが使える。ただし国の事業に応募する段階では、国の類型との対応を示せるようにしておくと説明が通りやすい。
若い人はどのタイプに入りやすいのですか。学生の場合、授業や課外活動を起点にした参加・交流型と、旅先の延長で通い始める趣味・消費型が入口になりやすい。就労型は社会人になってから増える。年代で入口が違うため、自治体が学生に向ける事業と社会人に向ける事業は分けて設計されることが多い。
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