SDGsと自治体|未来都市220と、80%という宿題

SDGsと自治体|未来都市220と、80%という宿題

220という数字が示している広がり

役場の封筒や広報紙の隅に、あの17色の輪を見かけるようになって何年になるだろうか。国が自治体を選ぶ枠組みとして始まったSDGs未来都市は、2018年度の29都市から始まり、内閣府の2026年度の選定で新たに4都市が加わって、累計220自治体に達した。

全国の市区町村は1,741、都道府県は47である。8年かけて選ばれた220という数は、その1割強にあたる。全部の自治体が手を挙げたわけではなく、応募して計画を書き、審査を経た団体だけが並んでいる。

選ばれることで何が変わるのか。直接の交付金より、計画を作る過程のほうが効いていると語る担当者は多い。人口、産業、環境、福祉といった縦割りの数字を一枚の計画に載せる作業が、庁内で初めて部署をまたいだ議論を生む。

選定は地域の規模を問わない。政令指定都市も、人口数千人の町村も同じ枠で並んでいる。小さな自治体ほど、選ばれたこと自体が対外的な看板になり、企業や大学から声がかかる材料として使われている。

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制度は「選ぶ」から「支える」へ移りつつある

仕組みそのものが、この数年で静かに組み替えられた。かつては未来都市に選ばれた自治体のうち、とくに先導的な事業を自治体SDGsモデル事業として重ねて選び、補助を付けていた。累計70都市が選ばれたこの枠は、2025年度から新規の選定を行わなくなっている。

代わりに置かれたのが交付金との接続である。未来都市計画に基づく事業は、新しい地方経済・生活環境創生交付金の優先的な支援対象として扱われる。旗を立てた自治体に別枠の補助を出すのではなく、通常の地方創生の財源のなかで優先順位を上げる、という考え方に寄った。

仕組み 内容 現在の扱い
SDGs未来都市 応募した自治体の計画を国が選定する 2026年度も4都市を選定し累計220自治体
自治体SDGsモデル事業 未来都市のうち先導的な事業を追加選定 累計70都市。2025年度から新規選定なし
地方経済・生活環境創生交付金 地方創生の取り組みを支える財源 未来都市計画の事業を優先的に支援
官民連携プラットフォーム 自治体と企業・団体が出会う場 内閣府が運営し登録制で参加
全国アンケート調査 自治体の取組状況を毎年度把握 目標値に対する進捗を測る物差し

この移行には利点と危うさが同居する。財源が本流に統合されれば継続性は増すが、SDGsという看板の輪郭はぼやける。担当課の名前から三文字が消え、通常の計画行政に溶けていく過程が、いま各地で進んでいる。

看板が消えることを心配する声もある。ただ、環境や福祉の分野では、目標番号が語られなくなったあとも事業は続いてきた。名前より、予算と担当が残るかどうかが継続の分かれ目になる。

全体では6割台、目標は80%

選ばれた220の外側はどうなっているのか。内閣府は毎年度SDGsに関する全国アンケート調査を行い、全ての都道府県と市区町村に取組状況を尋ねている。未来都市でなくても回答対象になるため、こちらが全体像に近い。

直近の調査で、地方創生SDGsの達成に向けた取り組みを推進していると答えた自治体はおよそ6割台半ばだった。かつて掲げられていた60%という水準は超えた一方で、令和7年12月に閣議決定された地方創生に関する総合戦略が業績評価指標として置く80%には、まだ距離がある。

残る3割強の内訳は一様ではない。職員数が限られ、目の前の業務で手一杯という団体もあれば、環境基本計画や福祉計画で実質的に同じ内容を進めているものの、SDGsの言葉を使っていないだけという団体もある。数字だけを見て取り組みの有無を断じると、後者を取りこぼす。

指標が80%と置かれた以上、今後は「推進している」と答えられる形を整える動きが強まる。宣言を出す、計画に一文を加える、といった対応で割合は上がる。数字の伸びが実態の伸びと一致するかどうかは、別に確かめる必要がある。

総合計画のどこに置くかが実務の山場

担当者が最初に悩むのは、既にある計画との関係である。自治体には総合計画があり、その下に分野別の計画が何十本と連なっている。そこへ新しい体系を足せば、現場は二重の報告に追われることになる。

実務で選ばれているのは、足すのではなく紐づける方法だ。総合計画の各施策に該当する目標番号を付し、既存の成果指標をそのまま使う。新しい調査を起こさず、既に取っている統計を読み替えるところから始めると、事務量はほとんど増えない。

その際に足りなくなるのが、市町村単位で測れる指標である。国連の指標は国を単位に設計されており、そのままでは町の規模に合わない。内閣府はローカル指標の検討を続けてきたが、水道の普及率や待機児童数のように、自治体が既に持っている数字を選び直す作業は各地に残されている。

地域の強みと弱みを棚卸しする段階では、経営分析の手法が援用されることもある。自治体のSWOT分析の活用法は総合計画への組み込み方を扱っており、目標番号の割り当てを先にやるより、地域の現状把握を先に置くほうが計画は書きやすい。

庁内の体制も、この数年で形が定まってきた。企画部門に旗振り役を置き、各課が既存の事業を持ち寄る方式が多い。専任の職員を新たに配置できる自治体は限られており、兼務で回している現場のほうが一般的である。

住民の側から見ると何が変わるのか

庁内の話が続いたが、住民にとっての変化はどこに出るか。わかりやすいのは、行政と民間が組む回路が増えたことである。内閣府が運営する地方創生SDGs官民連携プラットフォームは、自治体と企業、大学、NPOが課題を持ち寄って相手を探す場として使われている。

こうした枠組みは、従来の入札や補助金とは性格が違う。先に事業を決めて相手を募るのではなく、困りごとの段階から相談する。地域の側に、何に困っているかを言語化する力が要る、ということでもある。

住民の関わり方も、参加の形が広がった。移住や定住を最終目標に据えるのではなく、通いながら関わる層を含めて地域を支える考え方が定着しつつある。関係人口と大学生の関わり方や地方創生の取り組みは、その受け皿がどう作られているかを整理している。

若い世代と地域をつなぐ実践を重ねてきたFLASPOのような取り組みも、この回路の一部として機能している。自治体が計画に書いた言葉が現場で動くかどうかは、結局のところ、誰が手を挙げるかにかかっている。

よくある質問

未来都市に選ばれると交付金がもらえるのか。選定そのものに現金が伴うわけではない。未来都市計画に載せた事業が交付金の優先的な支援対象になる、という関係であり、事業の中身が評価されなければ財源は付かない。

モデル事業がなくなったのは制度の後退なのか。選定の枠は閉じたが、支援の経路は通常の交付金に移った。別枠を用意するより本流に組み込むほうが長く続く、という判断と読める。すでに選ばれた70都市の事業が取り消されたわけではない。

選ばれていない自治体は何もしていないのか。そうとは限らない。全国アンケート調査の対象は全自治体で、推進していると答えた団体は未来都市の数をはるかに上回る。応募には計画づくりの手間がかかるため、必要性を感じていない団体も多い。

住民が関わる入口はどこか。総合計画の策定時に行われる住民意見の募集や審議会の公募委員が、最も直接的な経路である。官民連携プラットフォームは団体単位の登録が基本だが、大学のゼミや地域の団体を通じて参加している学生もいる。

2030年を過ぎたら制度はどうなるのか。国連の目標年次は2030年だが、自治体の総合計画はその先まで期間を設定しているものが多い。看板の掛け替えがあっても、人口減少や環境負荷という課題そのものが消えるわけではない。


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