教室が減る前に、学校そのものが消えている
自分が通った小学校がいまも同じ場所にあるか、確かめたことはあるだろうか。文部科学省の令和7年度学校基本統計(令和7年5月1日現在の確定値)を開くと、全国の小学校は18,607校で、1年のあいだに215校減っていた。中学校は9,827校で55校減っている。公立だけに絞れば小学校18,291校、中学校8,982校である。
減っているのは建物の数だけではない。小学校の児童数は581万2,375人で、前年度より12万9,358人少なく、過去最少を更新した。中学校の生徒数も310万5,297人となり、3万5,835人減ってやはり過去最少である。1年で13万人近い児童がいなくなれば、1学年の在籍が数人という学校が各地に生まれる。
いっぽうで増えている種類もある。義務教育学校は261校で前年度より23校多く、在学者は8万6,924人と7,113人増えた。小学校と中学校を別々に残すのではなく、ひとつの学校に組み直す形が選ばれている。つまり統廃合は、学校が消えるという一方向の話ではなく、別の形の学校に置き換わる動きを含んでいる。地域から関わろうとするとき、この区別は最初に押さえておきたい。
国が「速やかに検討」と書く線はどこにあるか
何学級になったら統合が検討されるのか。出発点は学校教育法施行規則第41条で、小学校の学級数を12学級以上18学級以下と定め、第79条が中学校にも準用している。ただし条文には「地域の実態その他により特別の事情のあるときは、この限りでない」と但し書きがあり、機械的な線ではない。
段階ごとの目安を示したのが、平成27年1月27日に文部科学省が出した公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引である。昭和31年と昭和48年の古い通知は、この手引の策定をもって廃止された。小学校の1〜5学級は複式学級が存在する規模とされ、教育上の課題が極めて大きいため統合の適否を速やかに検討する必要があるとされる。6学級は複式学級こそないがクラス替えができない規模で、やはり速やかな検討が求められる。7〜8学級でも、将来に複式学級が生じる可能性が高ければ6学級に準じた扱いになる。
中学校では1〜2学級と3学級が同じ位置づけに置かれる。ただし手引は、地理的条件などで統合が難しい場合には、小規模校の利点を最大限生かす方策と、不利な点を解消・緩和する策を積極的に検討すべきだとも書いている。統合か存続かの二択ではない。
判断するのは設置者である市町村である。手引は参考として示されたもので、都市部にあるのか過疎地にあるのかを含めた地域の分析に基づいて決めるべきだとされる。実際、検討を始める独自の基準を置く自治体も多い。全児童数が200人を下回ったとき、100人を下回ったとき、各学年が単学級になったとき、といった例が手引に挙げられている。
通学の条件が、統合できる範囲を決める
学級数より先に現実を縛るのは、子どもがどこまで通えるかという条件である。国は統合に伴う施設整備を国庫負担の対象とする条件として、通学距離を小学校でおおむね4キロメートル以内、中学校でおおむね6キロメートル以内と定めてきた。手引は平成20年の調査研究を引き、この範囲では通学距離とストレスのあいだに明確な関係が認められなかったとして、目安として引き続き妥当と整理している。
ただし徒歩と自転車を前提にした距離だけでは、実態に合わない例が増えた。スクールバスに加えて路線バスやコミュニティバスが通学に使われるようになったためである。そこで手引は通学時間という尺度を持ち込み、「おおむね1時間以内」を一応の目安とした。統合事例を分析すると、統合後の最も遠い地点からの通学時間は10分未満から75分まで幅があったものの、9割以上は1時間以内に収まっていた。
時間が延びれば別の問題が出る。毎日の徒歩が減ることである。手引が挙げる工夫は具体的で、校門から一定の距離でバスを乗り降りさせて歩数を確保する、車内で音声教材を使った学習を行う、到着時刻と授業開始のあいだに余裕を持たせる、といったものが並ぶ。統合の条件を読むときは、距離の数字より、こうした運用まで決まっているかを見たほうが実態に近い。
20年で8,850校、発生のピークは平成21年度だった
では実際にどれだけの学校が閉じたのか。文部科学省の廃校施設活用状況実態調査(令和6年5月1日現在)によれば、平成16年度から令和5年度までの20年間に発生した廃校は延べ8,850校だった。年平均にすると約450校になる。前回調査の令和3年5月1日時点以降、令和3年度から令和5年度までの3年間だけでも1,025校が加わっている。
学校種別の内訳は、小学校5,799校、中学校1,835校、高等学校等1,216校である。小学校だけで全体の65.5パーセントを占める計算になる(延べ数から筆者が算出した)。年度別に見ると平成21年度の597校が最も多く、令和5年度は298校だった。市町村合併が一段落した時期に発生が集中し、その後は水準が下がっている。
都道府県別に並べると、地域の偏りがはっきりする。
| 都道府県 | 廃校数 | 小学校 | 中学校 | 高等学校等 |
|---|---|---|---|---|
| 北海道 | 859校 | 558校 | 210校 | 91校 |
| 岩手県 | 331校 | 227校 | 77校 | 27校 |
| 福島県 | 330校 | 235校 | 59校 | 36校 |
| 東京都 | 300校 | 150校 | 89校 | 61校 |
| 熊本県 | 282校 | 207校 | 54校 | 21校 |
| 滋賀県(最少) | 36校 | 25校 | 5校 | 6校 |
北海道の859校は2位の岩手県の2.6倍にあたる。見落としやすいのは4番目に東京都が入っている点で、300校のうち中学校が89校、高等学校等が61校を占める。閉じた学校が出るのは人口の少ない地域に限った現象ではなく、都心部でも学区の再編や高校の再編統合が同じ数字に積み上がっている。地域の人口そのものについては過疎地域指定の基準とは?人口要件・財政力要件と3つの区分を整理にまとめている。
残った校舎の74.4パーセントは、すでに使われている
閉じた学校がそのまま朽ちていくわけではない。8,850校のうち施設が現存するのは7,612校で86.0パーセント、残る1,238校の14.0パーセントはすでに建物がない。現存する7,612校のうち活用されているのは5,661校にあたる74.4パーセントで、前回調査の74.1パーセントからわずかに上がった。
使われていない1,951校の25.6パーセントは、さらに三つに分かれる。用途が決まっているものが235校で3.1パーセント、決まっていないものが1,503校で19.7パーセント、取り壊しを予定しているものが213校で2.8パーセントである。手つかずのまま残っているのは、全体の2割弱と見ておくのが正確だ。
何に使われているかの内訳は次のとおりで、校舎と屋内運動場を合計した複数回答である。
| 活用用途 | 件数 | 用途別割合 |
|---|---|---|
| 学校(大学を除く) | 4,191件 | 40.5% |
| 社会体育施設 | 1,693件 | 16.4% |
| 企業等の施設・創業支援施設 | 1,207件 | 11.7% |
| 社会教育施設・文化施設 | 1,206件 | 11.7% |
| 福祉施設・医療施設等 | 735件 | 7.1% |
| 体験交流施設等 | 535件 | 5.2% |
| 庁舎等 | 449件 | 4.3% |
用途が決まらない理由も調査されている。校舎について回答した2,177件のうち、地域等からの要望がないが903件で41.5パーセント、建物が老朽化しているが902件で41.4パーセントと、ほぼ並んだ。以下は立地条件が悪いが387件の17.8パーセント、財源が確保できないが327件の15.0パーセントと続く。建物の傷みと同じ重さで、使いたいという声が届いていないことが挙がっている点は、外から関わる側にとって入り口になりうる。
もう一つ気になる数字がある。地域住民からの意向聴取について、校舎の7,211件のうち実施していないが3,580件で49.6パーセントにのぼった。説明会等によるヒアリングは2,782件の38.6パーセント、アンケート調査は479件の6.6パーセントにとどまる。活用の段階で住民に聞く手続きを踏んでいない例が半数ある。文部科学省はみんなの廃校プロジェクトとして用途を募集中の施設情報を公開しており、令和7年10月1日時点で全国418件が掲載されている。学校という場に外から入る道筋は、地域の大人が学校に入る仕組み|公立18,135校が置いた協議会を読むでも扱った。地域と関わる入り口を探すならFLASPOも使える。
よくある質問
何学級になったら統合は自動的に決まりますか。自動で決まる仕組みはない。手引が示すのはあくまで検討を始める目安で、決定するのは設置者である市町村である。全児童数200人や各学年の単学級化といった独自の要検討基準を置く自治体もあり、同じ学級数でも判断は分かれる。
廃校になった校舎はすぐに取り壊されますか。20年間の廃校8,850校のうち、調査時点で建物がないのは14.0パーセントにあたる1,238校だった。取り壊しを予定しているものも213校の2.8パーセントにとどまる。多くは建物として残り、その7割超が何らかの形で使われている。
廃校を借りて事業をしたいとき、どこを見ればよいですか。文部科学省が用途を募集中の施設を一覧にしており、令和7年10月1日時点で418件が載っている。所在地、構造と竣工年、耐震性、主要な交通機関による移動時間、募集にあたっての条件が施設ごとに整理されている。
統合や活用のとき、住民の意見は聞かれますか。活用段階に限って言えば、校舎7,211件のうち49.6パーセントで意向聴取が行われていなかった。説明会等によるヒアリングが38.6パーセント、アンケートが6.6パーセントである。聞かれる前提ではなく、こちらから問い合わせる前提で動くほうが現実的だ。
通学距離が延びることへの対策はありますか。手引は、校門から一定の距離でスクールバスを乗り降りさせて歩数を確保する、車内で音声教材を使う、到着時刻と授業開始のあいだに余裕を持たせる、といった工夫を挙げている。障害のある児童生徒については、乗車時間が短くなるよう経路を工夫する例も示されている。
アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。
FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。
賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。
