関係人口1,000万人は地方創生2.0のどこに置かれたか|10年の工程と可視化

地域と関わる若い人の話を聞いていると、制度の名前より先に「それは国の方針なのか」という確認が入ることがある。2025年6月13日に閣議決定された地方創生2.0基本構想は、その問いに答える文書だ。今後10年を見据えた方向性を示したこの構想の中で、関係人口は10年後に目指す姿の数値目標として名指しされた。実人数1,000万人、延べ人数1億人という数字である。

関係人口は10年後の目標の一つに書き込まれた

基本構想は、人口減少を食い止めるという前提を外したところから始まる。日本の総人口はこの10年で約340万人減り、生産年齢人口は約7,400万人まで約410万人減った一方、65歳以上は約3,600万人へ約320万人増えた。この現実を正面から受け止め、人口規模が縮小しても経済成長し社会を機能させる適応策を講じる、というのが構想の立て方である。

そのうえで「新しい日本・楽しい日本」という章に、10年後に目指す姿が並ぶ。都市と地方が互いに支え合う社会をつくるという項目の下に置かれたのが、関係人口を実人数1,000万人、延べ人数1億人創出するという一文だ。並んでいるほかの目標と見比べると、この数字の位置づけが分かりやすくなる。

10年後に目指す姿(抜粋) 指標の置き方
都市か地方かにかかわらず交流し助け合える 関係人口を実人数1,000万人、延べ人数1億人創出
人材が希少な中で一人一人が活躍できる 希望する職員の副業・兼業が可能な職場環境を整備した事業者数を10割
新技術が活用される地方をつくる 地域課題解決の取組を行う市町村の割合を10割
地域での暮らしに満足感を持っている 生活がこれからよくなっていくと思う人の割合を3倍
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1,000万人という数字は何を数えているのか

ここで引っかかるのは母数である。国土交通省が2025年6月に公表した実態把握調査では、訪問を伴う関係人口がすでに約1,884万人、訪問を伴わない層を含めると約2,263万人と推計されている。目標の1,000万人は、この推計値より小さい。

食い違いの理由は、数え方が違うことにある。基本構想が掲げる1,000万人は、新たに創設する「ふるさと住民登録制度」で可視化された人数を指している。住所地以外の地域に継続的に関わる人が登録することで、関係人口の規模や地域との関係性を把握できるようにする仕組みで、当面の目標として「関係人口を可視化。関係施策と連携し、今後10年間で実人数1,000万人、延べ人数1億人を目指す」と書かれている。

つまりアンケートによる推計と、登録という行為を伴う実数は別物である。誰もがアプリで簡単に登録でき、地方公共団体の既存の取組を緩やかに包含できる柔軟な仕組みにすると明記されており、関係府省庁が連携してプラットフォームとなるシステムの構築を進めるとされている。数字を比べるときは、どちらの定義かを先に確かめたい。関係人口の現状を数字で確かめるでは推計側の内訳を扱っている。

1.0の反省が関係人口に回ってきた理由

なぜ人のつながりが数値目標になったのか。基本構想は過去10年の取組を「地方創生1.0」と呼び、反省すべき点を列挙している。第一に、人口減少に歯止めを掛けるという考え方が前面に出た結果、子育て支援や移住促進が中心となり、地方公共団体間での人口の奪い合いにつながったとの指摘がある、と自ら書いている。

第二に、若者や女性の流出に歯止めが掛からなかった要因として、地域に魅力的な職場がなかったこととアンコンシャス・バイアスへの有効なアプローチを欠いたことを挙げる。地方から首都圏等へ転出した当事者から、地域における画一的な役割期待を息苦しく感じたという声が挙げられていることも記されている。

第三に挙がるのが、国と地方の役割の検討不足と関係機関の連携不足である。人口が減っても持続可能な形で行政サービスを受けられる体制を、過去30年の地方分権改革の延長線上でどう組み直すかという論点だ。一方で、デジタル実装に取り組む地方公共団体数は2027年度までに1,500団体という目標に対し2024年時点で1,757団体と前倒しで達成しており、進んだ分野と進まなかった分野の落差も認めている。

移住という一点に寄せた施策が自治体間の取り合いになるのなら、残る道は同じ人が複数の地域と関わる形を増やすことになる。構想が都市と地方を二項対立で捉えず、相互に補完し合う共生関係として描き、そのつながりの基盤に関係人口を置いたのはこの流れからである。地方創生の歴史と並べて読むと、方針の転換点がはっきりする。

用意された打ち手は五つに分かれている

関係人口の量的拡大・質的向上という項目の下には、具体の施策が五つ並ぶ。一つ目が前述のふるさと住民登録制度の創設。二つ目が環境整備で、二地域居住等を含む関わり方を例示した地方公共団体向けの手引の作成、官民連携プラットフォームの運営、ふるさと納税の活用、関係人口と地域をマッチングする中間支援組織の育成が挙げられている。

三つ目が若者や女性の地域交流の促進、四つ目が二地域居住等の推進である。四つ目には、スモールコンセッションなど空き家を活用した住居の提供、二地域居住者と地域をつなぐコーディネーターの育成・確保、古民家再生に向けた建築基準法の弾力運用が含まれる。五つ目は都市部人材の地方での活用促進で、経営人材やデジタル人材を地域企業で活かす既存事業が位置づけられた。

注意したいのは、関わり方に応じた類型化を行い、類型ごとに施策を展開すると書かれている点である。関係人口に対する行政サービスの在り方など制度面の検討も行うとされており、登録した人が何を受け取れるかは今後の設計に委ねられている。

学生の入口は若者・女性の項目に置かれた

五つのうち、学生が直接使えるのは三つ目の項目である。大学等と地域が連携し、学生のフィールドワークの受入れ等によって地域課題の解決に取り組む「ふるさとミライカレッジ」の推進、小中高生を対象に比較的長期の受入れを行う「地域留学」の推進が明記された。都市部の若者が地域で働きながら暮らしを体験する「ふるさとワーキングホリデー」と、小中高生の短期受入れを行う「子ども農山漁村交流プロジェクト」も併せて進めるとされている。

構想は、地方を都市部の企業や教育機関にとって社員や学生が地域課題に向き合いながら視野を広げ、実践的な課題解決力や主体性を育む「場」と位置づけている。関わる側の成長が政策文書の中で正面から書かれているのは、1.0の時期とは違う扱いだ。地方創生の目的と背景を確かめたうえで、自分が関われる枠を探すのが順序になる。学生向けのプロジェクトを扱うFLASPOのような窓口も、この三つ目の項目にぶら下がる受け皿の一つと考えてよい。

よくある質問

基本構想と総合戦略はどう違いますか。基本構想は方向性を示す文書で、工程表を含む具体化は総合戦略の側で行われる。構想の本文にも、各地方公共団体が自らの地域との関わり方や支援の在り方を検討し、地域住民や関係人口と共に進めるとある。

ふるさと住民登録制度はもう使えますか。基本構想の段階では創設すると書かれているだけで、登録の開始時期や対象は本文に示されていない。関係府省庁が連携してシステム構築を進めるとされているため、運用の詳細は後続の文書を待つことになる。

目標が達成されたかはどう判断されますか。実人数1,000万人と延べ人数1億人という二つの数字が示されているので、登録された実人数と、登録者が関わる地域の延べ数の両方で測られる見込みである。延べ人数が実人数の10倍に置かれていることから、一人が複数の地域と関わる状態が想定されていると読める。

二地域居住は関係人口に含まれますか。基本構想は、関係人口の中でも特に地域への関与が強い類型として二地域居住等を位置づけている。主な生活拠点とは別の特定の地域に生活拠点を設ける形で、社会政策と国土政策の両面から促進するとされている。

原典はどこで読めますか。出典は内閣官房が公表した地方創生2.0基本構想で、掲載ページは新しい地方経済・生活環境創生本部である。推計値の側は国土交通省の関係人口の実態把握調査で確認できる。


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