内定が出てから部屋を探すと、何に詰まるか
地元の企業から内定をもらい、さて住むところを決めようとして手が止まる人がいます。大学の近くで部屋を借りたときの手順をそのまま持ち込もうとすると、賃貸の物件そのものが少ない、という壁に当たるからです。駅前に不動産屋が何軒も並び、同じ間取りの部屋が何十も比べられる環境は、全国どこにでもあるわけではありません。
この差は感覚の問題ではなく、住宅の在庫の構成として統計に出ています。総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査は、5年ごとに全国の住宅を所有の関係や建て方、家賃で集計しています。ここでは同調査の確報集計をもとに、Uターン先で住まいを決めるときに前提が変わる部分を順に見ていきます。賃料の地域差そのものは都道府県別の家賃相場を扱った記事で別に整理しています。
借家は住宅全体の35.0パーセントしかない
全国の住宅のうち、持ち家は3,387万6千戸で、住宅全体に占める割合は60.9パーセントでした。2018年と比べて0.3ポイントの低下で、この30年はおおむね60パーセント前後で横ばいです。これに対して借家は1,946万2千戸、割合は35.0パーセントで、こちらも0.6ポイント下がっています。全体の3分の1強が借りて住む住宅、という比率です。
借家の内訳を見ると、偏りがはっきりします。最も多いのが民営借家の1,568万4千戸で、住宅全体に対する割合は28.2パーセント。次に公営の借家が176万戸(3.2パーセント)、給与住宅が130万2千戸(2.3パーセント)、都市再生機構(UR)・公社の借家が71万6千戸(1.3パーセント)という並びです。借りる部屋を探すとき、実質的に相手にしているのは民営借家の28.2パーセントの部分だと考えると、選択肢の幅が見積もりやすくなります。
持ち家と借家の分かれ目を費用から考える手順は持ち家率と家賃から考える記事にまとめています。ここで押さえておきたいのは、Uターン先の住宅市場は「売り買いされる持ち家が6割を占める市場」だという点です。
社宅をあてにできるのは100戸に2戸
就職を機に移るなら、勤め先が部屋を用意してくれる可能性も考えたくなります。統計でそれに当たるのが給与住宅、つまり社宅や寮です。130万2千戸という数は住宅全体の2.3パーセントで、100戸のうち2戸という水準にとどまります。会社が住まいを持っている前提で就職先を選ぶのは、確率の上では無理があります。
一方で、入れたときの負担は軽くなります。借家(専用住宅)の1か月当たり家賃は全国で59,656円ですが、種類別に見ると公営の借家が24,961円、給与住宅が37,993円で、民営借家は木造54,409円・非木造68,548円です。給与住宅は民営の非木造の6割弱で住める計算になります。
ただし、上がり方は給与住宅がいちばん急でした。2018年から2023年までの増減率は、借家全体が7.1パーセント増、公営の借家が7.6パーセント増、民営借家(木造)が4.5パーセント増に対し、給与住宅は11.6パーセント増です。1畳当たりで見ると給与住宅は2,071円で、21.9パーセントの増加でした。安い枠として扱われてきた部分が詰められている、という動きが読めます。
一戸建が8割に近い県と、共同住宅が7割の都
住まいの形は都道府県でまったく違います。居住世帯のある住宅に占める一戸建の割合は、全国で52.7パーセント、共同住宅は44.9パーセントです。ところが秋田県は一戸建が79.4パーセント、共同住宅は18.6パーセントで、東京都はちょうど裏返って一戸建26.3パーセント、共同住宅71.6パーセントとなります。
| 都道府県 | 一戸建の割合 | 共同住宅の割合 | 持ち家住宅率 |
|---|---|---|---|
| 全国 | 52.7% | 44.9% | 60.9% |
| 秋田県 | 79.4% | 18.6% | 77.1% |
| 青森県 | 75.3% | 21.0% | 71.4% |
| 新潟県 | 73.9% | 24.3% | 74.0% |
| 大阪府 | 39.8% | 57.4% | 54.5% |
| 東京都 | 26.3% | 71.6% | 44.7% |
| 沖縄県 | 37.4% | 60.9% | 42.6% |
持ち家住宅率も同じ方向に開きます。秋田県77.1パーセント、山形県75.0パーセント、富山県74.9パーセントに対し、東京都は44.7パーセント、沖縄県は42.6パーセントです。持ち家が7割を超える県では、賃貸のアパートは駅前や学校の周りに固まり、少し離れると数が急に減ります。Uターン先の候補が複数あるなら、求人の条件と同じ列に住宅の構成も並べておくと判断の材料が増えます。
構造の面でも在庫の中身は動いています。全国の住宅のうち木造は3,008万3千戸で54.0パーセント、非木造は2,558万2千戸で46.0パーセントでした。1993年には木造が68.1パーセントを占めていたので、30年で14.1ポイント下がったことになります。非木造のうち鉄筋・鉄骨コンクリート造が2,037万9千戸(36.6パーセント)、鉄骨造が507万4千戸(9.1パーセント)で、集合住宅が増えた分がここに乗っています。一戸建が多い県で非木造の比率が低く出るのは、この構成の違いが背景にあります。
部屋の広さは建て方で2.5倍変わる
居住専用に建てられた住宅について、1住宅当たりの延べ面積は全国平均で90.86平方メートルでした。居住室数は4.26室、居住室の畳数は32.49畳、1人当たりの居住室の畳数は14.65畳、1室当たり人員は0.52人です。延べ面積は2013年の92.97平方メートルを頂点にして、2018年の92.06平方メートル、2023年の90.86平方メートルと下がってきました。
この平均値は建て方で割ると意味が変わります。一戸建は126.32平方メートル、共同住宅は50.31平方メートルで、2.5倍の開きがあります。一戸建の割合が8割に近い県の平均面積が大きく出るのは、広い家に住む人が多いというより、住宅の在庫が一戸建に寄っているからです。
借りる側にとって効いてくるのは、共同住宅の面積が2023年に減ったという変化です。1993年の44.17平方メートルから2018年の51.14平方メートルまで増え続けたあと、50.31平方メートルへ転じました。地方で一人暮らし用の部屋を探すと、広さのある共同住宅は多くないという前提で動くほうが外れません。移住にかかる費用の全体像は移住費用と仕事を扱った記事と合わせて見ると組み立てやすく、地域での動き出し方を探している人はFLASPOの企画から入る道もあります。
よくある質問
公営住宅は就職で移るときに使えますか。
公営の借家は全国に176万戸、住宅全体の3.2パーセントあり、家賃も24,961円と低い水準です。ただし入居の資格や収入の基準は条例で自治体ごとに定められており、単身の若年層が対象に入るかどうかは地域差があります。候補地の自治体の募集要件を個別に確かめる必要があります。
社宅がある会社かどうかは、どこで分かりますか。
求人票の福利厚生の欄に住宅の記載があるか、家賃補助と社宅のどちらなのかを見る形になります。全国の給与住宅は130万2千戸で全住宅の2.3パーセントにとどまるため、ある会社に当たったら条件の良い例だと考えて、入居できる期間や退職時の扱いまで確かめておくと安全です。
この調査の数字はどのくらいの頻度で新しくなりますか。
住宅・土地統計調査は5年ごとの実施で、令和5年調査は2023年10月1日が調査時点です。速報集計である住宅数概数集計が先に公表され、そのあとに確報集計の数値が出ます。引用するときは、どちらの集計か、何年の調査かを添えておくと混ざりません。出典は総務省統計局の結果の概要です。
地方では部屋の数そのものが減っていきませんか。
総住宅数は全国で6,504万7千戸あり、2018年から4.2パーセント増えています。減っているのは青森県(0.4パーセント減)、秋田県(1.1パーセント減)、高知県(0.9パーセント減)、長崎県(0.7パーセント減)の4県だけです。戸数の総量より、借りられる状態で市場に出ている部屋がどれだけあるかが実務上の問題になります。
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