任期の終わりに決めるのは、仕事の中身と器の形
三年目の秋になると、隊員の相談は「何をするか」から「どの形でやるか」に移る。総務省が令和8年4月24日に公表した調査では、令和2年度から令和6年度に任期終了した8,762人のうち6,163人が同じ地域に定住した。活動地と同一市町村内に定住した5,038人の内訳は、起業2,296人、就業1,753人、就農・就林583人、事業承継70人である。
規模も押さえておきたい。同じ資料には、令和7年3月31日までに任期を終えた隊員が累計で15,045人に達し、前回調査から2,363人増えたと記されている。毎年数千人が任期の出口に立つ計算で、器をどう選ぶかという問いはそのたびに繰り返されている。
この区分は「なりわい」で切られていて、法人格の種類は出てこない。株式会社なのか、合同会社なのか、それとも社団なのか。全国集計では確かめられないため、器の選び方は制度の条文と、各地で実際に使われている形から読むことになる。前者の条文はあとで追うとして、手がかりになるのは後者だ。
同じ資料の参考資料には、都道府県ごとの協力隊ネットワーク一覧が載っている。隊員と卒業生を支える中間の組織で、合計43団体。名称を見ると、どの器が選ばれてきたかが分かる。NPO法人という選択との比較は任期後にNPO法人をつくるかにまとめた。
43団体の名称を数えると、18が一般社団法人だった
一覧を形態別に数えてみる。名称に「一般社団法人」を冠しているのは北海道、岩手県、富山県、福井県、長野県、岐阜県、三重県、滋賀県、兵庫県、島根県、岡山県、徳島県、香川県、愛媛県、佐賀県、長崎県、熊本県、宮崎県の18団体。NPO法人は群馬県の1団体で、残る24団体はネットワーク、サポーターズ、連絡会議といった名称のみで法人格の表示がない。
| 名称に現れる形態 | 団体数 | 例 |
|---|---|---|
| 一般社団法人 | 18 | しまね協力隊ネットワーク(平成29年11月)、岡山県地域おこし協力隊ネットワーク(平成28年7月) |
| NPO法人 | 1 | ぐんま地域おこし協力隊ネットワーク(令和4年6月) |
| 表示なし(任意の団体名のみ) | 24 | 秋田県地域おこし協力隊ネットワーク(令和2年2月)など |
| 合計 | 43 | – |
設立時期にも傾向がある。最も早いのは岡山県の平成28年7月、次が島根県の平成29年11月で、残りはほぼ令和に入ってからだ。令和7年から令和8年にかけて山形県、栃木県、鳥取県、山口県、静岡県、山梨県が加わっている。一覧に名前がないのは東京都、神奈川県、愛知県、大阪府の4都府県で、隊員を送り出す側に寄った地域が抜けている形になる(出典:総務省 令和7年度 地域おこし協力隊の隊員数等について)。
社員は2人から、剰余金の分配は定款に書けない
器の中身を条文で確かめる。一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の第10条は、設立するには「その社員になろうとする者」が共同して定款を作成し、その全員が署名または記名押印すると定めている。共同という語があるため、設立時社員は2人以上が必要になる。資本金に相当する出資は要らず、基金を募る制度は別に用意されている。
定款に必ず書く項目は第11条第1項に七つ並ぶ。目的、名称、主たる事務所の所在地、設立時社員の氏名または名称及び住所、社員の資格の得喪に関する規定、公告方法、事業年度である。続く第2項は重い。社員に剰余金または残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定めは、書いても効力を生じないとされている。もうけを社員で分ける構えは、この器では取れない。
手続の面では第13条が公証人の認証を求め、機関としては第60条が理事を1人以上置くよう定める。理事会、監事、会計監査人は定款で任意に設置する扱いだ。隊員2人で立ち上げて理事1人から始める形が、条文の上では成り立つ(出典:e-Gov法令検索 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律)。
税の軽さは「非営利型」に当てはまるかで決まる
社団という名前だけで税が軽くなるわけではない。国税庁の整理では、公益認定を受けていない一般社団法人は二つに分かれる。法人税法上の非営利型法人の要件を満たすものは公益法人等として扱われ、収益事業から生じた所得だけが課税対象になる。要件を満たさないものは普通法人として扱われ、すべての所得が課税対象になる。
非営利型にも2種類ある。剰余金の分配を行わない旨などを定款に定める「非営利性が徹底された法人」と、会員に共通する利益を図る「共益的活動を目的とする法人」で、後者には主たる事業として収益事業を行っていないことという要件が入る。そして国税庁は、要件のうち一つでも該当しなくなったときは特段の手続を踏むことなく普通法人になると書いている。設立時に整えた状態を毎年維持する話だということである。
課税対象になる収益事業は、法人税法施行令が定める34業種で判断される。物品販売業や請負業、料理店業その他の飲食店業などが並ぶため、地域で物を売る活動や受託の仕事を始めれば、その部分は課税の対象に入る。収益事業を始めたときは収益事業開始届出書を出す必要もある(出典:国税庁 一般社団法人・一般財団法人と法人税)。
協力隊の仕事のうち、この形が合うのはどこか
では、任期後のどんな仕事に向くのか。定住した5,038人の動向を見ると、就業の側では行政関係が480名、観光業が176名、農林漁業が138名、地域づくり・まちづくり支援業が99名。起業の側では飲食サービス業308名、美術家やデザイナーなど217名、宿泊業181名が多く、まちづくり支援業で起業した人も80名いる。
このうち、会費と委託と補助金を同時に扱う仕事は、剰余金を分けない器と噛み合いやすい。集落の共同作業の受け皿、移住相談の窓口、学校と地域をつなぐ事業などは、売上だけでは回らず、複数の原資を束ねる必要がある。逆に、自分の手で作ったものを売って利益を手元に残したい場合は、株式会社や合同会社のほうが素直だ。
任期は1年から3年で切れるが、法人は解散しなければ続く。43団体のネットワークが一般社団法人の形を多く選んでいるのは、隊員が入れ替わっても相談の窓口を同じ名前で置いておけるからだろう。地域と関わる仕事の選び方はFLASPOでも紹介している。任期後の進路の全体像は卒業後の進路一覧で確かめられる。
よくある質問
ひとりで設立できるのか。第10条が設立時社員の共同による定款作成を求めているため、立ち上げの時点では2人以上の社員が必要になる。一方で理事は1人でよいので、代表を1人に置いた運営は可能である。
活動で残ったお金を社員で分けてよいのか。分配を受ける権利を与える定款の定めは効力を生じないと法律に書かれている。残った資金は翌年度の事業に充てるか、定款で定めた方法で処理する形になる。
公益社団法人とはどう違うのか。公益社団法人は行政庁の公益認定を受けた法人で、公益目的事業から生じた所得が課税の対象外になる。非営利型は法人税法上の区分であり、認定の手続とは別の話だと国税庁の資料が整理している。
任期中に設立の準備を進めてよいのか。会計年度任用職員として任用されている場合、営利企業への従事等は任命権者の許可が必要で、総務省のQ&Aは勤務形態を踏まえた弾力的な運用が可能だとしている。パートタイムはこの制限の対象外とされるため、任用の形を先に確かめることになる。
県のネットワークに入ると何が得られるのか。公表されているのは団体の名称と設立時期までで、会員資格や支援の内容は団体ごとに決められている。43団体のうち4都府県には一覧に該当がないため、自分の活動地にあるかどうかを先に確かめるほうが早い。
アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。
FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。
賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。
