「若者会議」という名前の制度は、国の側には置かれていない
市の広報で「若者会議の委員を募集します」と見かけて応募を考えたとき、まず引っかかるのは、その会議に何ができるのかがわからない点だろう。名前は似ていても、中身は自治体ごとに別物である。条例を根拠に置いて市長へ答申する形のものもあれば、担当課が年に数回開く意見交換の場に同じ名前がついていることもある。国が全国一律の「若者会議」を制度として定めているわけではないので、募集要項の言葉づかいだけでは射程が読めない。
共通の土台になっているのは、2023年4月に施行されたこども基本法である。同法第11条は、国と地方公共団体がこども施策を策定し、実施し、評価するにあたって、対象となるこどもや養育者などの意見を反映させるために必要な措置を講ずると定めた。第3条第3号と第4号は、年齢や発達の程度に応じて意見を表明する機会が確保され、その意見が尊重されることを基本理念に据えている。ここでいう「こども」は心身の発達の過程にある者を指し、若者を含む(こども家庭庁「こども基本法に基づくこども施策の策定等へのこどもの意見の反映について」)。つまり自治体の若者会議は、善意の企画ではなく義務を果たす手段として置かれている。募集要項を読むときは、その会議がどの計画や施策に紐づいているかを探すと、関われる範囲が見えてくる。
自治体はどの年代に声をかけているのか
大学生の立場で気になるのは、そもそも自分の年代が想定されているのかという点である。こども家庭庁が令和5年度に都道府県・市区町村へ行ったアンケート(複数回答、n=1,143)は、意見反映の取組や事業の対象年齢を次のように示している。
| 対象年齢 | そう答えた自治体の割合 |
|---|---|
| 乳幼児 | 6.7% |
| 小学校1〜3年生 | 20.1% |
| 小学校4〜6年生 | 42.3% |
| 中学生 | 58.8% |
| 高校生 | 50.6% |
| 19〜22歳 | 32.1% |
| 23〜25歳 | 22.8% |
| 26〜29歳 | 21.2% |
中学生と高校生が半数を超える一方、19〜22歳を挙げた自治体は3割ほど、20代後半では2割まで落ちる。進学で地元を離れる年代がちょうど谷になっているわけで、「若者」と銘打った会議でも、実際に想定されているのは中高生という可能性がある。応募前に確認したいのは年齢要件そのものよりも、その自治体が過去にどの年代から意見を聴いてきたかである。議事録や答申が公開されていれば、そこに委員の構成が出ている。
谷になっている年代を自治体の側から見ると、理由はおおむね学校という経路の有無で説明がつく。小中高であれば教育委員会を通じて学級単位で声をかけられるが、大学生は居住地と通学先が分かれ、まとめて届ける窓口がない。そのぶん、自分から手を挙げた一人の存在が効きやすい層でもある。募集が出ていない時期でも、担当課に在学者として関わりたいと伝えておくと、次の企画で対象者を考える段になったときに名前が残ることがある。
意見が施策に届くまでには五つの段階がある
会議で発言したのに何も変わらなかった、という感想は珍しくない。ただ、国のガイドラインが描く手順を知っていると、どこで止まったのかを言葉にできる。こども家庭庁のガイドラインは、意見反映のプロセスを「企画する」「事前に準備する」「意見を聴く」「意見を反映する」「フィードバックをする」の五段階に分け、これを一連のサイクルとして回すものと整理している。
同じアンケート(複数回答、n=811)では、直接意見を聴く取組のうち企画・計画段階に関わるものが61.5%、実施段階が61.7%に対し、評価段階は18.7%にとどまる。計画をつくるときには呼ばれるが、できたものを検証する場には呼ばれにくい、という偏りが数字に出ている。発言が反映されたかどうかを確かめたいなら、最後のフィードバックが文書で返ってくる設計になっているかを先に聞いておくとよい。ガイドラインは、反映できなかった意見についても、その理由を含めて返すことを求めている。
国の側にも、同じ考え方で動く場が用意されている
住んでいる自治体に該当する会議がない場合でも、入り口は地元だけではない。こども家庭庁は2023年度から「こども若者★いけんぷらす」を運営しており、小学1年生から20代までが登録できる。令和7年版こども白書によれば登録人数は令和7年3月時点で約4,500人、令和6年度の実績は22テーマ・延べ約1,900人からの意見聴取(アンケート回答件数を含む)である(令和7年版こども白書)。
テーマは省庁側から出るものと、登録メンバー側から出るものの両方がある。地域の課題をそのまま持ち込める場ではないが、意見を聴かれる場がどう設計されているかを内側から見る経験にはなる。自治体の会議と並行して登録しておき、進め方の違いを比べるという使い方もできる。地域での関わり方を広く眺めたい人は、大学生が地域活性化でできることや、政策を提案する形に絞った大学生の政策コンテストも合わせて見ておくと、自分の時間の使い方を決めやすい。
学生が入れるのは、発言する側だけではない
見落とされがちなのが、意見を聴く側の人手が足りていないことである。先のアンケートで、こどもや若者から意見を聴く際のファシリテーターとして「大学生等、こどもと年齢が近い一般の方に依頼する」と答えたのは、都道府県で20.3%(n=64)、政令指定都市で11.1%(n=27)、市区町村では5.7%(n=720)だった。市区町村では20団体に1つほどしかない一方、都道府県では5つに1つが実際に依頼している。
中高生から見れば、大学生は行政職員よりも話しやすい相手である。ワークショップの進行、記録、資料のつくり直しといった役回りは、委員の枠が埋まっていても頼まれる余地が残る。こども家庭庁は令和5年度に「こども意見ファシリテーター」の養成モデルプログラムをつくる調査研究を実施しており、人を育てる側の整備も進んでいる。地元の担当課に問い合わせるときは、委員として参加したいのか、進行役として手を貸したいのかを分けて伝えると話が早い。FLASPOのように学生の活動を扱う場でも、この二つは別の経験として扱われる。
よくある質問
聴かれた意見は、全部が施策に入るのか。ガイドラインはそうは言っていない。出された意見を正当に考慮することを求めつつ、反映できないものがあることを前提に、理由を添えて返すよう促している。採否そのものより、返ってくる形が用意されているかを見るほうが実際的である。
報酬は出るのか。これは自治体ごとに違う。附属機関の委員として委嘱される形であれば、条例や規則に基づいて報酬や旅費が支払われることが多い。要綱に基づく任意の会議では無償の場合もある。募集要項に書かれていないときは、委嘱の根拠が条例か要綱かを尋ねると判断しやすい。
地元を離れていても参加できるのか。住民票のある自治体を要件にする会議は多いが、下宿先の自治体が在学者を対象に含めている例もある。オンライン参加を認めるかどうかも自治体の判断で、ここは問い合わせないとわからない。
予算や体制はどうなっているのか。ガイドラインは第2章で予算と体制づくり、評価を独立した項目として扱っており、会場費や謝礼、ファシリテーターの確保を事前に見込むよう促している。裏を返せば、そこに手当てのない会議は単発で終わりやすい。参加を決める前に、前年度も同じ会議が開かれていたかどうかを確かめておくと、使う時間の見通しが立つ。
任期が終わったあとはどうなるのか。答申を出して解散する形と、年度ごとに委員を入れ替えて続く形がある。続く形であれば、前年度の提案がその後どう扱われたかが次の資料に出てくる。そこまで追いかけると、自分が関わった時間の結果を確かめられる。
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