住民の当事者意識は43.7%が課題に挙げる|頼むのは15.7%

「住民が動かなかった」はどこに残るのか

地域の取り組みがうまくいかなかった理由として、現場でいちばん多く口にされるのは人手の話である。その次に来るのが「住民が他人事だった」という言い方で、報告書には書きにくい。補助金の実績報告には事業費と参加人数が並ぶが、住民の気持ちを記入する欄は用意されていないからだ。失敗の記録が残らない項目は、次の計画で手が打たれないまま繰り返される。

ところが、その気持ちの側を選択肢として並べた全国調査がある。総務省が令和7年3月に公表した地域運営組織の形成及び持続的な運営に関する調査研究事業の報告書で、回答したのは地域運営組織8,193団体、市区町村1,741団体である。地域運営組織は住民が自分たちで地域の暮らしを支える組織で、令和6年度に全国で8,193団体が確認された。平成28年度の3,071団体から約2.7倍に増えており、形成されている市区町村も609から893へ広がっている。

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8,193団体が挙げた課題の並び

継続的に活動していく上での課題として最も多く選ばれたのは、活動の担い手となる人材の不足で79.2パーセント。団体の役員・スタッフの高齢化が62.1パーセント、次のリーダーとなる人材の不足が61.8パーセントと続く。人に関する項目が上位を占める点は想像しやすいが、注目したいのはその下に置かれた二つである。地域住民の当事者意識の不足が43.7パーセント、地域のために活動している組織として認知されていないという理解不足が32.1パーセントで、活動資金の不足の40.2パーセントと肩を並べている。

同じ調査では、課題の解決に当たって支援を期待するものも聞いている。二つの数字を同じ行に置くと、現場の見立てが浮かび上がる。

項目 課題として挙げた割合 支援を期待する割合 差
活動の担い手となる人材の不足 79.2% 34.5% 44.7ポイント
団体の役員・スタッフの高齢化 62.1% 20.9% 41.2ポイント
次のリーダーとなる人材の不足 61.8% 25.3% 36.5ポイント
地域住民の当事者意識の不足 43.7% 15.7% 28.0ポイント
活動資金の不足 40.2% 34.1% 6.1ポイント
住民の活動への理解不足 32.1% 12.7% 19.4ポイント

差が小さい項目と大きい項目

資金の行だけ差が6.1ポイントしかない。困っている団体のほぼ全部が、外から入れてもらえば済むと考えているという意味である。助成金や交付金は制度として用意されており、申請の窓口も見える。だから課題に挙げた団体の大半が、そのまま支援先として資金を指名する。

一方で当事者意識の行は28.0ポイントも開く。43.7パーセントが課題だと言いながら、支援を頼む相手としては15.7パーセントしか挙げない。住民の気持ちは外部から供給できないものだという判断が、この差に出ている。担い手不足の44.7ポイントも似た構図だが、こちらは人材派遣や協力隊のような制度が実在するぶん、34.5パーセントという受け皿が残る。意識の項目には、その受け皿が制度として存在しない。

ここが「失敗の原因は住民の無関心だった」という総括が記録に残らない理由である。支援メニューに対応する項目がなければ、報告書の改善欄にも書かれない。数字としては4割が抱えている課題なのに、施策の言葉に翻訳されないまま現場に置かれている。

支援を期待する項目の並びも見ておきたい。最も多いのが活動の担い手となる人材の不足で34.5パーセント、次が活動資金の不足の34.1パーセント、三番目が次のリーダーとなる人材の不足の25.3パーセントである。事務局運営を担う人材の不足は課題として48.7パーセントが挙げ、支援期待では23.2パーセント。デジタル技術の活用が困難という項目は課題24.5パーセントに対して支援期待17.7パーセントで、差は7ポイント弱と小さい。道具や技能のように外から持ち込める性質のものは、やはり頼まれる側に回っている。

組織の形と財源を見れば差の理由が分かる

この見立ては、組織の足元の数字と合わせると納得がいく。法人格を持たない任意団体が90.9パーセントで、NPO法人は3.4パーセント、認可地縁団体は2.0パーセントにとどまる。収入源を第1位から第5位まで挙げてもらうと、市区町村からの助成金・交付金等が85.2パーセントで最も多い。自主事業による収入の確保に取り組んでいる団体は45.9パーセントで、半分に届いていない。

活動拠点を持つ団体は97.1パーセントあり、そのうち64.2パーセントが公共施設を使っている。つまり多くの地域運営組織は、法人でもなく自前の収入源も薄く、場所も行政から借りている。行政に依頼できることは具体的に言えるが、住民の意識については依頼先が思い浮かばない。制度との距離が近い項目ほど支援先として名前が挙がり、遠い項目ほど自分たちの問題として抱え込まれる。

自治会・町内会との関係や役割分担を課題に挙げた団体は22.9パーセントで、支援を期待するのは8.7パーセント。会計や税務、労務のノウハウ不足は19.2パーセントと12.0パーセント。既存の組織との関係という内向きの課題ほど、外に頼む発想から離れていく。逆にノウハウのように講習や専門家派遣で埋まる課題は、差が7ポイント程度に収まっている。頼める課題と頼めない課題の線は、制度の有無とほぼ重なっている。

意識を測る代わりに見られる数字

住民の気持ちは直接測れないが、周辺の数字は公表されている。構成団体として参加している組織は自治会・町内会が78.5パーセント、地域の福祉活動に関わる団体と民生委員・児童委員が57.8パーセント、消防団などの防犯・防災・交通安全に関わる団体が47.9パーセント。構成団体ではないが協力している組織では、行政関係機関が48.5パーセント、小学校・中学校・高等学校が29.5パーセント、専門学校・大学は8.4パーセントである。

地域差も大きい。回答した市区町村のうち地域運営組織が「ある」のは893団体で51.3パーセント、「ない」が848団体で48.7パーセント。ブロック別では中国地方が80.4パーセントで最も高く、北海道地方は22.3パーセントで最も低い。活動内容は祭り・運動会・音楽会などの運営が70.6パーセント、交流事業が69.6パーセントと続き、農地の利活用は8.4パーセントにとどまる。学生が関わる余地があるのは、大学が8.4パーセントしか顔を出していないこの隙間である。FLASPOのように外から人を連れてくる立場では、受け入れ側がどの課題を外部に頼めると考えているかを先に把握しておくと、提案の宛先を間違えずに済む。

失敗の記録そのものの扱いは地方創生の失敗はどこに記録されるか、自治体側の判定の線引きは自治体の運営はどこで失敗と判定されるかで整理している。参加の受け皿という観点からは住民不在の地方創生はどこで起きるのかが近い。

よくある質問

43.7パーセントという数字は住民に聞いた結果ですか。回答者は地域運営組織8,193団体で、住民個人ではありません。活動している側から見た手応えの集計であって、住民側の意識を直接測った値ではない点に注意が必要です。

支援を期待する割合が低いのは制度が足りないからですか。報告書は理由まで示していません。読み取れるのは、資金のように窓口が明確な項目では課題と支援期待の差が6.1ポイントに収まり、意識のように窓口が見えない項目では28.0ポイント開くという対応関係です。

地域運営組織が増えているのに課題が減らないのはなぜですか。団体数は平成28年度の3,071から令和6年度の8,193へ約2.7倍に増えました。新しく立ち上がった組織も同じ人材の壁に当たるため、団体数の伸びと課題の割合は別に動きます。

学生が関われる組織はどう探せばよいですか。協力団体に専門学校・大学が入っている組織は8.4パーセントです。市区町村の地域振興担当に地域運営組織の一覧があるので、活動内容と拠点の有無から当たるのが早い順番になります。

この調査はどこで読めますか。総務省の地域運営組織(RMO)のページに報告書が置かれており、実態把握調査結果の概要は令和7年3月公表の資料にまとまっています。


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