サブスク住居が二地域居住の担い手に|支援法人51件と計画28件の現在地

国の資料に、住まいのサブスクの社名が並んだ

国土交通省が令和8年2月にまとめた資料「二地域居住等の促進について」には、市町村が指定した法人の一覧が載っている。秋田県大館市の欄に「(株)アドレス」、新潟県佐渡市の欄にも同じ社名がある。指定日は佐渡市が令和7年10月7日、大館市が同年10月15日。静岡市はさらに進んで、令和8年5月26日にアドレスと静岡銀行の2社を指定し、6月4日に市としての計画を策定した。月額を払えば全国の家を使い回せるサービスが、法律に基づく指定を受ける側に回ったことになる。

静岡市の計画は「越境学習」と「地域共創」を組み合わせた枠で、首都圏に本社や支社を置く企業の社員、とくに働く場所と時間を選べるテレワーク勤務者を主な相手に置いている。対象の区域は用宗エリアと蒲原エリアの2か所。計画期間は令和8年度から令和10年度までの3年間で、短期の滞在やテレワークから二地域居住へ、さらに定住へと段階を踏ませる筋書きになっている。宿を貸す事業者が、その段階を支える側の役として名前を書き込まれた形だ。

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指定の根拠になった法律は、2年前に動き出していた

根拠は広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律の改正で、令和6年5月15日に成立し、同年11月1日に施行された。改正で新しく入ったのは三つ。都道府県が広域の計画に二地域居住を書き込めば、市町村が「特定居住促進計画」を作れること。市町村長がNPOや民間企業を支援法人として指定できること。そして市町村・都道府県・支援法人・地域住民らで協議会を組めることである。通称は二地域居住等支援法人だが、法律の条文では特定居住支援法人と書かれている。

支援法人に期待されている役割は、国の整理では「住まい」「なりわい」「コミュニティ」の三つに分かれる。泊まる場所を用意するだけでは足りず、仕事の口と地域の人付き合いまで含めて面倒を見る想定だ。指定された法人は市町村長に対して計画の作成や変更を提案できる立場も持つ。制度の輪郭は特定居住促進計画とは|二地域居住を市町村が進める3つの新しい仕組みで先に扱っているので、ここでは指定を受けた側の顔ぶれに目を向ける。

計画28件、法人51件。目標は600と600

施行から1年あまりが経った令和7年12月31日時点で、国土交通省が把握している数は次のとおりである。都道府県の計画が20、市町村の特定居住促進計画が28、支援法人の指定が51法人。一方で国が置いた目標は、施行後5年間で計画600件・法人600法人の累計だ。1年目で2割に届いていないが、制度の立ち上がりとしては妥当な速度とも読める。計画を作った市町村には北海道北見市、宮城県気仙沼市、新潟県佐渡市、鳥取県北栄町、広島県庄原市などが並ぶ。

区分 令和7年12月31日時点 施行後5年の目標 到達度
都道府県の計画(広域的地域活性化基盤整備計画) 20計画 ― ―
市町村の計画(特定居住促進計画) 28計画 累計600件 約4.7%
二地域居住等支援法人の指定 51法人 累計600法人 約8.5%

到達度の欄は、国の公表値から割り算して出した参考の数字である。計画より法人の指定が先に伸びているのは、計画を作った市町村が一度に複数の法人を指定する例があるためだ。鳥取県北栄町は6法人、北海道厚真町は3法人、長野県塩尻市も3法人を指定している。

51法人の顔ぶれは、宿の会社だけではない

一覧を業種で眺めると、宿泊や不動産に寄った想像とはかなり違う。日本航空は北海道上士幌町、和歌山県田辺市、和歌山県白浜町、香川県三豊市の4か所で指定を受けている。信用金庫も入っていて、静岡県三島市と長泉町が三島信用金庫、広島県庄原市が広島みどり信用金庫を指定した。静岡市の静岡銀行も同じ系統だ。人材の側では副業マッチングのJOINS、パソナJOB HUB、お手伝いと旅を組み合わせるおてつたびの名前がある。

地元側の受け皿も混じる。鳥取県北栄町は北栄町商工会を指定し、新潟県佐渡市は一般社団法人佐渡共生推進機構を選んだ。福島県磐梯町は一般社団法人ばんだい振興公社と、雨風太陽の2者を並べている。住まいを貸す会社、仕事を紹介する会社、地域の付き合いを仲立ちする団体が、同じ名簿に並んでいるのは制度の設計どおりである。定額の住居サービスはその三つのうち一つを担う部品として位置づけられている、と見るのが近い。

使う側の値段と、自治体側に流れる金

アドレスの公式サイトは、全国数百か所の家を1か月から使えると案内し、料金は1泊3,327円からと表示している。1泊あたりで見れば安宿並みだが、月単位の契約が前提なので、二つ目の生活拠点を持つための固定費として考える必要がある。借りるのか買うのか都度借りるのかという比べ方は二地域居住の住まいの選び方|借りる・買う・都度借りるの分かれ目に譲る。

受け入れる自治体の側には、別の金が流れる。二地域居住や関係人口の取組には特別交付税の措置があり、措置率は0.5。コーディネーターを置く場合は専任で1人あたり500万円、兼任で40万円が目安として示されている。令和8年度の当初予算案では、空き家対策総合支援事業に59億円、地方移住促進テレワーク拠点施設整備支援に4,500万円、第2のふるさとづくりプロジェクトに3億円、官民連携基盤整備推進調査費に3億3,200万円が計上された。学生や若手が関わる入口づくりまで含めて、FLASPOのような地域側の受け皿と組み合わせて設計する余地がある。

指定の日付を並べると、動き方の違いも見える。北海道厚真町の3社は令和7年2月25日に同日で指定され、長野県塩尻市の3者も4月14日にそろっている。計画を作る前後に一括で指定する自治体と、鳥取県北栄町のように7月1日の4者から8月8日まで段階的に増やす自治体がある。後者は受け皿の役割を分けて積み上げる形で、宿、仕事、交流のどこが足りないかが指定の並びに表れる。

よくある質問

二地域居住に関心を持っている人はどのくらいいるのか。国土交通省の資料は、二地域居住等への関心が約3割、地方移住への関心は20歳代で約半数と示している。若い層の関心と実際に動く人の数には段差があり、その内訳は二地域居住と若者|20歳代の関心44.9%と実施6.7%の段差を読むで扱っている。

支援法人に指定されると何が変わるのか。指定を受けた法人は、住まい・なりわい・コミュニティに関する活動を市町村の計画の中で担う立場になり、計画の作成や変更を市町村長に提案できる。国の予算でも、コワーキングスペースの整備支援などで支援法人の取組であることが要件の一つに置かれている。民間のサービスが自治体の計画に組み込まれ、公的な補助の対象として扱われる点が大きい。

自分の住む市町村が計画を作っているか調べる方法はあるか。国土交通省が公表する一覧に、計画を策定した都道府県と市町村の名前と策定日が載っている。指定された法人の名簿も同じ資料に付いているので、地元で誰が受け皿になっているかはそこで確認できる。一覧は年に数回更新されるため、最新版の日付を見てから読むのが安全だ。

サブスク型の住居は学生でも使えるのか。料金体系そのものは年齢で分かれていないが、月単位の固定費が発生するため、学生が長期休暇だけ使う形には向きにくい。静岡市の計画のように、短期の滞在から段階を踏む設計をしている自治体では、お試し滞在の枠が別に用意されていることがある。まず地域側の募集を探し、滞在費の負担がどこまで公費で見られるかを確かめるのが先になる。

協議会を組むと何ができるのか。市町村は計画の作成などに必要な協議を行うため、市町村・都道府県・支援法人・地域住民らを構成員とする協議会を組織できる。住まいや交通、仕事の受け皿は別々の事業者が持っているため、一つの机に着かせる仕組みがないと計画が絵に留まりやすい。国が住民の意見を取り入れて公表する手順を定めているのも、同じ理由からだと読める。

出典

国土交通省国土政策局「二地域居住等の促進について」(令和8年2月)/静岡市「二地域居住の推進(特定居住促進計画)」/株式会社アドレス「ADDress」


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