芸術祭を支えた841名|のべ1,115人が通った地域との関わり方

同じ地域に4回以上通っている人が、3割を占めていた

美術館のある都市に出かけるのではなく、田んぼと集落のあいだに置かれた作品を目当てに、同じ場所へ何度も足を運ぶ人がいる。新潟県十日町市と津南町にまたがる越後妻有で3年ごとに開かれている芸術祭は、そういう人の層をはっきり数えている。

十日町市が公表した大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024 総括報告書によれば、来訪者に会期中の来訪回数をたずねた結果は、今回が初めてが45.6パーセント、2回目が11.3パーセント、3回目が9.4パーセント、4回以上が32.1パーセントだった。初参加が半分弱で、残りの半分は再訪である。4回以上に限っても3割を超える。

芸術祭そのものの規模は、会期が2024年7月13日から11月10日までの全89日、開催地は760平方キロメートル、作品は312点で、うち86点が新作か新展開である。参加したアーティストは42の国と地域から278組、作品が置かれたり制作に関わったりした集落は91にのぼる。延べ入込者数は545,931人で、1日あたりの来場者は6,091人、前回展から54.8パーセント増えた。外国人の入込は94,907人である。

国土交通省が令和7年6月に公表した地域との関わりについてのアンケートは、居住地以外の特定の地域と関わる人を全国で約2,263万人と推計している。年に数日の訪問を繰り返す層がその中心で、芸術祭の再訪者はこの推計とちょうど重なる位置にいる。

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受付に立ち、作品をつくり、案内をする人たちの名簿

来場者を数えるだけなら観光の統計と変わらない。この芸術祭が関わりの度合いまで追えるのは、運営を手伝う人に「こへび隊」という名前と登録制度を与えているからである。作品の制作、作品の受付、ツアーの案内まで業務の幅は広く、募集は国内に限らず海外にも出している。

報告書には登録人数と、第9回展に関する延べ活動人数が並記されている。

区分 登録人数 延べ活動人数
こへび隊 全体 841名 1,115名(会期中854名)
うち新潟県内に住む人 339名 274名
うち十日町市・津南町に住む人 151名 47名

登録は2024年12月28日時点の841名、延べ活動人数は2024年5月5日から11月28日までに募集して参加した人数で、地元の住民や行政職員、企業からのサポーターは含まない。注目したいのは内訳の形である。登録のうち新潟県内は339名、地元の二市町に住む人は151名にとどまる。つまり登録の8割強は県外か、少なくとも地元の外から来ている。

延べ活動人数で見ると差はさらに開く。全体1,115名に対して地元は47名である。作品の受付に立っている人の多くは、その集落の住民ではない。過疎と高齢化が進んだ地域で芸術祭を成り立たせているのは、外から通う人の手だということが、この2列から読める。

20代と30代で半分、初めての参加が3割

手伝う側の顔ぶれも変わってきている。報告書の成果欄は、参加者の年代割合で20代と30代が約50パーセントを占め、前回展より増えたと書いている。活動そのものが初参加という人も30パーセント以上にのぼった。募集の幅を広げたことが、新しい担い手の獲得につながったという評価である。

もうひとつの変化は国籍である。参加者のうち国外からの人が全体の20パーセントに達し、主に台湾、中国、香港からだった。海外から来たこへび隊と地域住民が共同で作品の運営にあたる機会が増え、日本語が話せない観光客に対して、外国人のこへび隊が相手の言語で応対する場面も生まれている。報告書はこれを、芸術祭におけるインバウンド対応の有効な手段のひとつと位置づけた。

時間の層も現れはじめた。初期にこへび隊として携わった世代が親になり、子どもと一緒に参加する状況が見られたという記述がある。1回目が開かれたのは2000年で、20年を超えると関わりが世代をまたぐ。短期の来訪者と長期の担い手が、同じ名簿のうえに並んでいる状態である。

続けられるかどうかは、交通費と宿で決まっていた

一方で課題の欄は率直である。前回展に続いて、会期全体を通してサポーターの人手不足が見られた、と書かれている。運営体制の見直しと、企業サポーターのような新しい協力団体の発掘が必要だという認識である。

不足の理由として挙がっているのが移動の条件だった。芸術祭の長期化にともない従来の短期集中的な募集ではなくなったことから、費用対効果を考えて首都圏からのバス運行を行わなかった。その結果サポーターの交通手段の選択肢が狭まり、活動に対するハードルを上げてしまったと総括している。今後は活動参加者の交通費に対する補助などが求められる、という書き方である。

宿泊についても同じ構図がある。宿泊を伴う参加者には三省ハウスでの宿泊を活動参加前日は無料で提供したが、三省ハウスは公共交通機関でのアクセスに課題があり、別の宿泊場所の検討が課題として残った。外国人サポーターの参加が今後も見込まれるため、マニュアルの多言語化などの受入体制の構築も挙がっている。

穴を埋めたのは企業と行政である。企業サポーターにはJR東日本、東京電力新潟本社、新潟県の4地域振興局が入り、会期中の作品受付、各種案内、パスポートなど関連商品の販売を担った。十日町市の行政職員も延べ548人が作品受付に従事している。こちらは過疎化と高齢化で作品受付を引き受けられない集落が出てきたことと、サポーターが想定より不足したことへの補填で、同時に職員の現場研修として位置づけられていた。

無償の手伝いだけでなく、有償の口も開いている

関わり方は無償のボランティアに限らない。会期中の雇用実績として、常勤39人、パート127人、有償ボランティア71人、人材派遣0人、合計237人という数字が報告書に載っている。この237人にこへび隊と地元サポーターは含まれていない。

この枠の募集は、芸術祭の公式サイトとハローワークで行われた。報告書は、今回は県外からの採用が全体的に少なく十日町市・津南町在住の採用が中心だったとしつつ、高校生や大学生の応募もあり、十日町市や津南町に祖父母が住んでいたり、大学で地元を離れている人の勤務もあって、新たなかかわりと雇用創出につながったと書いている。進学で一度出た人が、会期のあいだだけ戻って働くという経路がすでにある。

作品の側から入る道もある。参加作品の一覧には、鞍掛純一と日本大学藝術学部彫刻コース有志による作品や、立命館大学産業社会学部のゼミと組んだプロジェクトが並ぶ。研究室やゼミの単位で地域に入り、作品の制作や運営の実務まで引き受ける形である。各大学や企業、新潟県、他の芸術祭との連携により、こへび隊の募集を兼ねた広報活動も行われている。

報告書の最後には、大地の芸術祭は文化観光のみならず、市民協働、移住定住、関係人口、産業振興、教育、健康、福祉にまで効果が表れていると書かれている。アートの現場は、作品を見る場所としてよりも、人手が足りない受付と案内の現場として若い世代に開かれている。地域と若者の接点をつくる取り組みを各地で進めるFLASPOの実感とも重なるところで、交通費と宿という条件を自分の側で整えられる人から順に、入口は広い。

関わり方の型を先に押さえたい場合は関係人口の地域事例とは、手伝いがどこから関係人口に数えられるのかはボランティアが関係人口に数えられる条件、大学の単位で地域に入る形は大学のゼミが地域に入る450件、この地域の若者自身の意識は十日町市が若者652人に聞いたが対応している。

よくある質問

こへび隊には誰でも登録できますか。報告書は国内だけでなく海外からも募集したと記しており、参加者の20パーセントが国外からの人でした。年代は20代と30代で約半数、活動が初めてという人も3割以上なので、経験や居住地を理由に外されるという構造ではありません。募集の時期と条件は開催年ごとに公式サイトで案内されます。

交通費や宿泊費は出ますか。2024年の実績では、首都圏からのバス運行は費用対効果の判断で行われず、交通費の補助は今後の課題として挙げられています。宿泊については三省ハウスが活動参加の前日を無料で提供しました。つまり現状は自己負担が前提で、そこが参加のハードルになっていると運営自身が認めている段階です。

芸術祭のない年は関わる場がないのでしょうか。会期外にも拠点施設が動いています。報告書はMonETや奴奈川キャンパス、ナカゴグリーンパーク、アケヤマなどの主要施設の入込が前回展の倍以上になったことを挙げ、通年誘客の拠点として期待しています。作品の維持管理には人手が足りていないという記述もあり、会期外の仕事は確かに存在します。

大学のゼミや研究室として参加できますか。実例があります。作品の制作に日本大学藝術学部彫刻コースの有志や立命館大学産業社会学部のゼミが関わっており、大学との連携でこへび隊の募集を兼ねた広報も行われています。個人で登録する道と、所属する組織ごと入る道の両方が開いています。

有償で働く枠はどれくらいありますか。2024年の会期中は常勤39人、パート127人、有償ボランティア71人の合計237人でした。募集は公式サイトとハローワークで行われ、高校生や大学生の応募もあったと記録されています。ただし採用は十日町市と津南町の在住者が中心で、県外からの採用は少なかったとされています。


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