継ぐ相手を外から探す窓口は48か所|新規相談24,030者の内側

商店街の一角で店を閉める理由を尋ねると、売れないからではなく、継ぐ人がいないからという答えが返ってくることがある。その「継ぐ人がいない」をどこに持ち込めばよいのかは、地域では意外と知られていない。国が47都道府県に48か所置いている窓口の実績を見ると、相談の中身が親族から第三者へ移ってきた流れがはっきりと出ている。

48か所の窓口に何が持ち込まれているか

窓口の名前は事業承継・引継ぎ支援センターで、中小企業基盤整備機構(中小機構)が全国本部を担っている。平成23年度に事業引継ぎ支援センターの設置が始まり、令和3年度に事業承継ネットワークと統合されて現在の形になった。令和7年度の新規相談者数は、センターの開設以来初めて24,000者を超え、24,030者となった。相談は一回で終わるものではなく、同じ年度に全国で92,509回の相談に応じている。

累計で見ると規模が分かりやすい。新規相談者の累計は174,685者、相談回数の累計は549,677回に達している。1件の相談に対して平均で複数回の面談が重ねられてきた計算になり、名簿を渡して終わる仲介とは性質が違う。後継者不在や事業の継続に関する悩み、親族や従業員への承継の方法、M&Aの実行に関するセカンドオピニオンまで、相談の幅も広く取られている。中小機構は、経営者年齢の高齢化に加えて人手不足やエネルギー・原材料の価格高騰といった環境変化を背景に、相談も成約もさらに増えると見込んでいる。

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相談の中心は第三者への引継ぎに移った

親族に継がせる、という前提が崩れた後の選択肢が、第三者承継である。令和7年度に第三者承継に関する新規相談者数は16,322者となり、新規相談者全体の7割に近い水準になった。累計では135,616者が第三者承継の相談で窓口を訪れている。相談が伸びた結果として、令和7年度の第三者承継の成約件数は2,265件と過去最多を更新した。累計の成約は14,571件である。

この成約件数には内訳の注記が付いている。令和7年度の2,265件には、中小機構の地域本部と各センターが連携した支援による37件が含まれる。センターだけで完結しているのではなく、地域本部の支援機関向けの事業が後ろから支える構えになっている。なお、第三者承継は会社そのものを売り買いする話に見えやすいが、センターの位置づけは公的な相談窓口であり、後継者のいない経営者に対してマッチングと成約に向けたサポートを行う役回りである。副業として引き受ける形があるかどうかは事業承継を副業で引き受けられるかで別に整理している。

親族内承継は計画づくりとして支援される

親族に候補がいる場合は、別の支援の枠に入る。親族内承継支援は令和3年度からセンターの事業として実施されており、現経営者と後継者の対話から課題を整理して、事業承継計画の策定を支援する形をとる。計画を策定した件数が支援完了件数として数えられるため、相談の数ではなく紙にまとまった数が実績になる。推移は次のとおりである。

年度 親族内承継の支援完了件数 うち中小機構地域本部との連携
令和3年度 1,043件 —
令和4年度 1,270件 —
令和5年度 1,558件 —
令和6年度 1,695件 160件
令和7年度 1,903件 377件

4年で約1.8倍になっており、合計は7,469件である。連携件数は令和6年度から数えられていて、同年度の160件に対し令和7年度は377件と2倍を超えた。計画の中身として挙げられているのは、株式や事業用資産の集約、取引先や金融機関との調整、事業承継税制の活用、後継者の育成といった項目で、いずれも一年では片付かない。親族に継ぐ場合でも、書き出して可視化する工程が必要になるという前提が、この数字の背後にある。

後継者人材バンクは創業したい側の入口でもある

継ぐ相手を探す側だけでなく、継ぎたい側からも扉が開いている。後継者人材バンクは、創業を目指す個人と後継者不在の会社などを引き合わせ、創業と事業の引継ぎを同時に支援する事業で、全国48か所のセンターで運営されている。令和2年度から全センターに設置され、それまでは任意の設置だった。令和7年度の成約件数は114件で、こちらも過去最多となった。累計の成約は549件である。

登録する側の数も伸びている。創業を希望する新規登録者数は令和7年度に1,472者、累計登録者数は11,547者に達した。累計の登録1万人超に対して成約が549件という比率を見ると、登録すれば店が手に入るという話ではないことが分かる。一方で、ゼロから店を立ち上げる場合と比べれば、設備や取引先、常連客がすでにある状態から始められる。開業と廃業がほぼ同じ水準で並ぶ状況は廃業率が開業率に並んだ年で見たとおりで、閉じようとしている側と始めたい側を突き合わせる仕組みが要る、という話につながる。

学生や若手が関わるなら、どこから見るか

学生の立場からは、事業承継は遠い話に聞こえる。それでも、地域の店や工場に関わる企画を考えるとき、相手の経営者が後継者の有無という問題を抱えている確率は低くない。第三者承継の相談が16,322者ある現実は、その一端である。インタビューや商品開発の相談をする前に、相手がどの段階にいるのかを把握しておくと、提案の軸がずれにくくなる。

窓口の調べ方は単純で、事業承継・引継ぎポータルサイトから各都道府県のセンターをたどれる。センターは47都道府県に48か所あるため、自分の地域の担当はすぐ特定できる。実際に若手が店を引き受ける場面の順序は後継ぎのいない店を若者が継ぐときで扱った。地域に入る企画をどう設計するかという段階の話はFLASPOでも取り上げていて、承継という論点は地元の事業者と話す前に押さえておく材料になる。

よくある質問

センターの相談は有料なのか。事業承継・引継ぎ支援センターは国が設置した公的な相談窓口と位置づけられている。費用の扱いは個別の支援内容で変わるため、最初の相談の段階で確認しておきたい。

センターは何か所あるのか。国が47都道府県に設置しており、箇所数は48と案内されている。後継者人材バンクの事業も、この48か所すべてで運営されていると説明されている。

第三者承継の成約が2,265件というのは多いのか。累計14,571件に対して令和7年度だけで2,265件なので、近年に集中していることが読み取れる。前年度を上回って過去最多を更新した、という発表の仕方からも伸びの傾向が分かる。

親族内承継の支援はどこまでやってくれるのか。現経営者と後継者の対話から課題を整理し、事業承継計画の策定を支援するところまでが支援完了件数として数えられている。計画には株式や事業用資産の集約、取引先や金融機関との調整などが並ぶ。

創業したい人が後継者人材バンクに登録すれば引き継げるのか。累計の新規登録者11,547者に対して成約の累計は549件で、登録が成約を約束するわけではない。希望する業種や地域の条件が合うかどうかで結果は変わる。

出典

独立行政法人中小企業基盤整備機構「令和7年度 事業承継・引継ぎ支援センターの実績について「新規相談者数・M&A成約件数が過去最多」」2026年5月29日(新規相談者24,030者、相談回数92,509回、累計相談者174,685者、累計相談回数549,677回、第三者承継の新規相談者16,322者と累計135,616者、成約2,265件と累計14,571件、地域本部との連携37件、親族内承継の支援完了件数の推移と合計7,469件、後継者人材バンクの成約114件・累計549件・新規登録1,472者・累計11,547者、センターの設置と沿革)。各センターの一覧は事業承継・引継ぎポータルサイトから確認できる。


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