「買ってから応募」にした瞬間、別の決まりが動き出す
地域の魅力を学生から募る企画を立て、拡散を狙ってSNSの投稿を応募の入口にする。ここで賞品の金額を自由に決められると思っていると、告知を出したあとで直せない問題に当たる。賞品の額に天井が付くかどうかは、応募の条件に商品やサービスの購入が入っているかで切り替わるからだ。
消費者庁の景品規制の概要は、景品表示法上の景品類を三つの要素で定義している。顧客を誘引するための手段であること、事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供するものであること、物品・金銭その他の経済上の利益であることだ。三つに当たると、最高額や総額の規制がそのまま働く。
規制の理由も書かれている。過大な景品に惑わされて質の良くないものや割高なものを買わされることは消費者の不利益になり、景品の競争がエスカレートすると、事業者が商品やサービスそのものでの競争に力を入れなくなるという循環が起きる。限度額を超える提供を行った場合などは、消費者庁長官が景品類の提供を制限し、または禁止することができる。
コンテストという言葉が、告示の例示にそのまま入っている
自分たちの企画が懸賞に当たるのかは、運用基準を読むと判断が付く。平成24年6月28日の消費者庁長官通達第1号は、「特定の行為の優劣又は正誤によって定める方法」の例示として、キャッチフレーズや写真、商品の改良の工夫等を募集してその優劣で定める方法を挙げる。パズルやクイズの解答の正誤で定める方法も同じ列に並ぶ。
さらに踏み込んだ一文がある。ボーリング、魚釣り、○○コンテストその他の競技、演技又は遊技等の優劣によって定める方法も、懸賞の例として示されている。ただし、セールスコンテストや陳列コンテストのように、相手方事業者の取引高その他取引の状況に関する優劣で定めるものは含まれない。アイデアや作品を審査して賞を出す企画は、取引に付随していれば懸賞の側に入ると読める。
来店や申込みの先着順で決めることは、懸賞には該当しない。もっともこの場合は、懸賞によらずに提供される景品の規制を受けることがある。抽せん、じゃんけん、商品の一部にだけ景品を付けて外から判別できないようにする方法も、それぞれ偶然性を利用した懸賞に数えられる。
天井は三つの型で別々に置かれている
限度額は、一般懸賞、共同懸賞、総付景品の三つに分かれる。共同懸賞は、一定の地域の小売業者またはサービス業者の相当多数が共同で実施する場合、商店街が中元や歳末のセールとして実施する場合、一定の地域の同業者の相当多数が共同で実施する場合などに使える枠で、一般懸賞より高く設定されている。
| 型 | 最高額 | 総額 |
|---|---|---|
| 一般懸賞(取引価額5,000円未満) | 取引価額の20倍 | 懸賞に係る売上予定総額の2% |
| 一般懸賞(取引価額5,000円以上) | 10万円 | 懸賞に係る売上予定総額の2% |
| 共同懸賞 | 取引価額にかかわらず30万円 | 懸賞に係る売上予定総額の3% |
| 総付景品(取引価額1,000円未満) | 200円 | 定めなし |
| 総付景品(取引価額1,000円以上) | 取引価額の10分の2 | 定めなし |
このほか、業界の実情にかんがみて業種別の景品告示が置かれている分野もある。現在は新聞業、雑誌業、不動産業、医療用医薬品業・医療機器業・衛生検査所業の各業種に告示があり、一般的な規制とは異なる制限が設けられている。出版物小売業等では、公正競争規約という業界の自主ルールが別に働く。
取引価額の数え方を間違えると、計算全体がずれる
最高額の多くが取引価額に比例するので、この値をどう置くかで結果が変わる。運用基準は三つの場合を分けている。購入者を対象として購入額に応じて提供するときは、その購入額が取引価額になる。購入者を対象とするが購入額の多少を問わないときは、原則として100円とする。購入を条件とせず店舗への入店者に提供するときも、原則として100円である。
ただし後の二つには例外が付く。通常行われる取引の価額のうち最低のものが100円を超えると認められるときは、その最低額を取引価額とすることができる。逆に最低のものが明らかに100円を下回るときは、その額を使うことになる。小売業者やサービス業者が提供者なら実際の取引価格を、製造業者や卸売業者なら実施地域における通常の取引価格を基準にする。
合算の決まりも見落としやすい。同一の取引に付随して二つ以上の景品提供を行う場合、同じ事業者が別々の企画として行っても、合算した額を提供したことになる。一つの抽せん券で抽せんを行い、同じ券でさらに抽せんを行う形も、合算額が制限額を超えてはならない。総額の基礎になる予定総額は、懸賞販売実施期間中における対象商品の売上予定総額を指す。
賞品そのものの価額は、昭和53年11月30日の景品類の価額の算定基準に従う。同じものが市販されていれば、提供を受ける人が通常購入するときの価格を使う。市販されていなければ、提供者が入手した価格や類似品の市価を勘案して、受け取る人が通常購入することとしたときの価格を算定する。旅行を賞品にする場合は、同一内容のセット旅行があればその価格による。
購入を条件にしない企画には、上限の定めがない
ここまでの天井をすべて外す道もある。新聞、テレビ、雑誌、ウェブサイト等で企画内容を広く告知し、商品やサービスの購入や来店を条件とせず、郵便はがき、ファクシミリ、ウェブサイト、電子メール等で申し込める抽選企画は、取引に付随しないためオープン懸賞と呼ばれ、景品規制が適用されない。
提供できる金品等の最高額は、かつて1,000万円とされていた。この規制は平成18年4月に撤廃され、現在は具体的な上限額の定めが置かれていない。誰でも応募できる形で告知し、応募の受付をウェブやメールで完結させるなら、賞金の設計は企画側の裁量に戻る。
分かれ目は拡散の仕掛けそのものではなく、購入や来店を条件に入れたかどうかだ。商品を買ってレシートを投稿してもらう、店に来てハッシュタグを付けてもらうという形にすると、取引に付随する懸賞として一般懸賞の枠に戻る。応募条件を一行書き換えるだけで、賞品の上限が20倍の世界と定めのない世界のあいだを行き来することになる。協賛を集める段取りは地域のコンテストに企業の金はどう入るかに、受け取る側の税の扱いはコンテストの賞金を事業に変えるにまとめてある。
よくある疑問
応募に参加費を取る企画はどちらに入るのか。景品類の定義は、事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供するかどうかで切れている。参加費が自分たちの提供するサービスの対価として位置づくなら、取引に付随する形に近づく。企画書を書く段階で、何の対価として受け取る金なのかを言葉にしておきたい。
賞品を体験や宿泊にした場合の額はどう置くか。市販されていないものは、提供者が入手した価格や類似品の市価を勘案して算定することになる。旅行については、あらかじめ旅行地や日数、宿泊施設が決まっていて一般に販売されているセット旅行と同一内容なら、その価格を使う。
カード合わせという言葉を聞いたが何が禁じられるのか。運用基準は、インターネット上のゲームで有料のアイテム等を偶然性で提供し、特定の二以上の異なる種類を揃えた人に経済上の利益を提供する場合が告示第五項のカード合わせに当たるとしている。一方、点数の合計で提供する形や、同じ種類の符票を一定個数集める形は、カード合わせには当たらないと整理されている。
審査の過程や受賞作をSNSで紹介するときに気を付ける点はあるか。景品規制とは別に、事業者の表示であることが隠れた発信には別の線が引かれている。届く相手の数と合わせて、地域のSNS発信は誰に届くかで確かめておくとよい。応募先の全体像を見てから企画を組みたいときは、FLASPOに集まっている募集の形を一覧で見ておくのが早い。
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