国の予算はどの順番で並んでいるか
太陽光のパネルが1枚いくらかを調べても、再生可能エネルギーで食べていけるかどうかの答えは出てこない。先に見るのは、国がどの枠にいくら置いたかである。環境省が2026年5月22日の地球温暖化対策計画フォローアップ専門委員会に出した資料には、地域の脱炭素を支える金の出どころが区分ごとに並んでいる。
中心にあるのは令和4年度に創設された地域脱炭素推進交付金で、令和7年度の予算額は385.2億円、令和6年度は425.2億円だった。令和8年度は当初270億円に令和7年度補正335億円が付く。避難施設や防災拠点に再エネと蓄電池を入れる地域レジリエンス事業は当初20億円と補正40億円で、2035年度までに追加3,000箇所という目標が置かれている。2030年度までに2,500施設、2035年度までに4,000施設への導入完了という線も引かれた。
補助金以外の道もある。自治体が公共施設を脱炭素化するための脱炭素化推進事業債は2022年度から2025年度まで900億円、事業費ベースで1,000億円の枠で動き、措置は2026年度から2030年度へ延長された。ペロブスカイト太陽電池の導入補助が一般補助施設整備等事業債の対象に加わり、ハイブリッド車も措置対象に入った。民間の事業に出資や債務保証を行う株式会社脱炭素化支援機構は、令和7年度の600億円から令和8年度は700億円へ増える。令和7年度補正と令和8年度当初を合わせると、地域とくらしを支える脱炭素分野の予算は約3,000億円規模になる。
| 支援の枠 | 令和7年度 | 令和8年度 |
|---|---|---|
| 地域脱炭素推進交付金 | 予算385億円+前年度補正365億円 | 当初270億円+補正335億円 |
| 地域レジリエンス事業 | 予算20億円+前年度補正20億円 | 当初20億円+補正40億円 |
| 脱炭素計画の作成・実装支援 | 計画策定支援として実施 | 当初6.3億円+補正7億円 |
| 脱炭素化支援機構への出資等 | 600億円 | 700億円 |
102提案という実験場の輪郭
選ばれた地域の数を追うと、制度の規模が見えてくる。第1回から第7回までの選定は45道府県133市町村の102提案で、市町村の内訳は85市39町9村である。年度別の選定数は26、20、16、12、9、7、12と並び、令和8年2月13日の第7回で「2025年度までに少なくとも100か所」という目標に届いた。
ただし102という数字は、いま動いている地域の数とは一致しない。奈良県三郷町が令和6年3月18日、兵庫県姫路市が令和6年12月16日、長野県松本市が令和7年9月11日に辞退しており、実際に取組を進めているのは99地域である。計画を出して選ばれたあとで降りる判断が起きる程度には、要件は軽くない。
求められているのは、民生部門の電力消費に伴う二酸化炭素の排出を2030年度までに実質ゼロにすることだ。国全体では2030年度に46パーセント削減を掲げ、その内訳として家庭部門は66パーセント、業務その他部門は51パーセントの削減が必要とされている。先行地域はこれを前倒しで実現する場に位置づけられている。
もう一本、屋根置き太陽光やZEB・ZEH、電動車などを複数年度にわたって組み合わせる重点対策加速化事業がある。こちらは171自治体が選ばれており、38府県104市29町という構成だ。先行地域に入らなかった自治体にとっては、こちらのほうが現実的な入口になる。
促進区域は79市町村で止まっている
場所の話に移ると、数字は急に小さくなる。地球温暖化対策推進法は、市町村が地域の関係者と合意をつくりながら再エネを進める区域を決める仕組みを置いている。国の基準では国立公園特別保護地区、自然環境保全地域、生息地等保護区の管理地区などを外し、都道府県の基準では世界自然遺産やラムサール条約湿地、保護林などを外したうえで区域を描く。
この促進区域の中で認定を受けた事業は、環境影響評価の配慮書を省略でき、森林法などの手続もワンストップになる。段取りが軽くなる仕組みであるにもかかわらず、令和8年3月末現在で設定を終えたのは全国で79市町村にとどまる。そのうち風力を対象にしたものは7である。
国の側も手を打っている。令和7年4月からは都道府県と市町村が共同して区域を定められるようになった。それまでは市町村が単独で決める形しかなく、小さな役所には重すぎた。ゾーニングのための情報収集や自然環境等調査、マップ作成の費用は4分の3が補助され、上限は2,500万円である。陸上風力については令和7年7月に再生可能エネルギー促進区域推進室が置かれ、地域を特定した伴走支援と税制上の優遇が始まった。
環境省が課題に挙げているのは、いわゆるメガソーラーに対する自然環境や安全、景観の面からの懸念である。地域の側が先に区域を描いておくかどうかで、あとの揉め方が変わるという整理になっている。
公表されている金額から事業の形を読む
制度の説明だけでは、どこに売上が立つのかが見えない。選定された地域の計画には、金額の見込みが書かれているものがある。岐阜県高山市は小水力発電を10基、約2.5メガワット導入する計画で、地域エネルギー会社と地元の施工事業者を使うことで少なくとも年6億円の経済効果を見込む。発電設備を置く自治会には共同出資による配当があり、維持管理業務の発注で仕事も生まれる形になっている。
設備の調達先を地域に寄せる例もある。山口県は県産の省エネ・創エネ・蓄エネ関連設備の登録制度をつくり、登録された設備には一般財源を使った上乗せの補助を行っている。これまでに支援した太陽光46件のうち41パーセント、蓄電池11件のうち55パーセント、地中熱9件のうち78パーセントで県内産の設備が入り、事業費約5億円が県内の事業者に回ったと整理されている。
既存の産業の値段を上げる使い方も出てきた。愛媛県今治市は、まず20社でタオルの生産工程を脱炭素化し、販売量が少なくとも1割向上して約8.5億円の売上増につながると見込む。長崎県五島市は市内にある約50メガワットの事業用太陽光のうち約50パーセントをリユースパネルとして活かす目標を立て、先行地域の期間で7メガワット、2030年以降に21メガワットを想定している。北海道上士幌町や山形県米沢市・飯豊町では、畜産ふん尿の処理に年約48億円かかっていた費用のうち年約27億円の削減を見込む。
| 地域 | 取組 | 公表されている金額 |
|---|---|---|
| 岐阜県高山市 | 小水力発電10基・約2.5メガワット | 少なくとも年6億円の経済効果 |
| 山口県 | 県産設備の登録制度と上乗せ補助 | 事業費約5億円が県内事業者に循環 |
| 愛媛県今治市 | タオル生産工程の脱炭素化(20社) | 約8.5億円の売上増を見込む |
| 北海道上士幌町ほか | 畜産ふん尿のバイオガス発電 | 処理費年約48億円のうち年約27億円を削減 |
関わる前に確かめる三つの点
自分が入る余地を探すなら、見る順番を決めたほうが早い。一つ目は補助率である。避難施設や防災拠点への設備導入では、都道府県と指定都市が3分の1、市町村が太陽光またはコージェネレーションシステムを入れる場合は2分の1、それ以外の再エネ設備と離島は3分の2となっている。都道府県と指定都市が公共施設に太陽光を入れる場合はPPAなどに限られる。
二つ目は相手の自治体に計画があるかどうかだ。令和7年10月1日現在の地方公共団体実行計画の策定状況は、1,788団体のうち事務事業編が1,714団体で95.9パーセント、区域施策編が1,117団体で62.5パーセントである。人口1万人未満の533市町村では区域施策編は212団体、39.8パーセントしかない。区域施策編を持たない役所に区域全体の話を持ち込んでも、受け取る担当がいない。
三つ目は人の経路である。環境省の地域脱炭素セミナーは令和4年度から7年度で延べ11,000人以上、地域新電力講座は延べ2,200人以上が参加した。令和7年度は参加した30自治体のうち25団体が112件の協業の可能性を挙げている。地域で事業を立てるときの資金の順番は地域起業の支援制度|補助・融資・税の優遇を一枚に並べるに、環境分野の市場の大きさは環境ビジネスで地域に起業する|136.2兆円の内訳と自然環境保全9.2兆円にまとめてある。学生のうちから地域の現場に入る道はFLASPOのプロジェクトでも開いている。
よくある質問
先行地域に選ばれていない市町村では再エネの事業ができないのか。できる。重点対策加速化事業には171自治体が選ばれており、屋根置き太陽光やZEH・ZEB、電動車などを組み合わせる枠がある。民生部門の電力を実質ゼロにする計画まで求められない点が、先行地域との違いになる。
促進区域に入ると何が変わるのか。認定を受けた事業は環境影響評価の配慮書を省略でき、森林法などの手続がまとまる。手続の特例であって、採算を保証する仕組みではない。区域の外で事業ができないわけでもない。
交付金は会社が直接受け取れるのか。地域脱炭素推進交付金は自治体を対象にした制度で、民間は自治体の事業の中で受注や連携という形で入る。民間の事業に直接資金を入れるのは株式会社脱炭素化支援機構のほうで、出資と債務保証が中心である。令和8年度の規模は700億円となっている。
電源の種類はどう選ぶのか。資料では、日照が太陽光、風況が風力、間伐材や端材と畜産廃棄物がバイオマス、荒廃農地が営農型太陽光、豊富な水資源が小水力、火山と温泉が地熱と、地域の条件と電源が組みで示されている。電源ごとの性質は再生可能エネルギーとは|5つの電源の特徴と日本の導入状況をやさしく整理で確かめられる。
学生の立場で入れる仕事はあるか。セミナーや講座は自治体職員に向けたものだが、ゾーニングの調査やマップづくり、住民に説明する場の設計には人手がいる。区域の設定が79市町村で止まっている理由の多くは合意づくりの手間で、ここは外から来た人が担える部分が残っている。
出典は環境省「地域脱炭素の進捗・課題と施策の方向性」(2026年5月22日、地球温暖化対策計画フォローアップ専門委員会 資料2-5)の公開資料、環境省の脱炭素先行地域および地域脱炭素推進交付金のページである。
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